〈大聖堂の戦い(3)〉
「騒がしいものだ」
近付いてくる数多の足音に、ジャイルズはぽつりと呟いた。
「まさか、そんな人族ごときが我らの仲間を倒すなど……」
大聖堂内にはヴェイロンガードとダークエルフが1人ずつ残りジャイルズの傍にいる。
「だから言っただろう、外を守るかヴェイロン様の守りに入るかしろと。人族の力を侮るとこうなる」
彼らを横目で冷ややかに見据えるジャイルズから、ヴェイロンガードは目を逸らした。
ジャイルズが生粋の魔族ならば、このヴェイロンガードは間違いなく最初から二つ返事で大聖堂を出ていただろう。
だが、ジャイルズが「人族」である事がヴェイロンガードには引っ掛かっているのだ。
(ここに来ようとしている王女はジャイルズ様の妹だ。人族は押し並べて身内に甘い種族と聞く。ジャイルズ様が土壇場で我らを、ヴェイロン様を裏切るという事も……)
口に出せないのは歴然たる力量差ゆえであろう。
(ジャイルズ様が変な気を起こさぬよう、やはり我らが“監視”せねば……)
ヴェイロンガードはダークエルフと目配せをした。