〈大聖堂の戦い(1)〉
アストたち“アカツキ”のメンバーとロザリアは、冒険者たちと共に大聖堂を目指し城内を駆ける。
「皆、大聖堂はすぐそこだ……っ!」
城内を知るロザリアの先導で大聖堂入口まであと少しという所まで来た時、彼女らの前で爆発が起こった。
ロザリアが咄嗟に盾を構え、その後方ではモニカが結界を起動させ皆を守る。
「凌いだか。だがまあ、ここまで来るだけの事はある」
天井近くまで伸びる窓枠の上に、ダークエルフが佇んでいた。
その手には狙撃銃が抱えられており、ダークエルフは人族たちを怜悧に睨み下ろす。
今の爆発は彼の狙撃だったようだ。
イサカ程ではないにせよ、このダークエルフも魔族のマギアシューター特有の方法で冒険者たちを狙撃してきたらしい。
しかも、重厚な柱の陰からはヴェイロンガードがゆっくりと姿を現し剣を抜いた。
「人族ごときに、この先を踏ませはしない」
「突破口は俺とブリギットちゃんが開こうか」
幾嶋 衛司が
ブリギット・ヨハンソンの前に光壁を展開させながら一行の前に進み出る。
「立ち止まってる程俺たちは暇人じゃないだろう?」
軽口を叩いていても、ブリギットの剣に魔神の加護を打ち破る力を授ける衛司の目は本気だ。
だが、彼らだけで遠近巧みに攻撃を仕掛けてくる魔族を止めるのは厳しい。
すると、
「皆の邪魔をさせるわけにはいかないもんね……」
と、
行坂 詩歌が静かにダークエルフを見上げた。
泡沫 アリアと
近衛 アーシーも得物を手に詩歌に並ぶ。
アリアはダークエルフを警戒しつつロザリアに歩み寄り、半ば押し付けるように花飾りを持たせた。
「王女様の覚悟を聞いてはいますが、それでも王子様に伝えてほしいんです。『どうか生きて妹が治める国を見てほしい』……そう願う人もいるって」
壁送りになろうが四肢を欠損しようが生きていてほしい、アリアはジャイルズに対しそう願っていた。
ロザリアの覚悟を知り彼女に殺されたがっている……アリアにはジャイルズの行動がそんな風に思えて、本音を言えば直接「裏切り王子」の元に行って訴えたいところなのだが、ここでロザリアが足止めを食らうのも本意ではない。
「そうか……」
ロザリアはひどく寂しげな頷きと共に花飾りを受け取るが、すぐに元の凜とした表情に戻り、
「君たちに感謝する。それと、どうか無理はしないように」
と言った後冒険者たちの方を振り向いた。
「ここは彼らに任せ、私たちは行くぞ!」