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レヴァナント・クロニクル 王都決戦

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レヴァナント・クロニクル 王都決戦
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忠誠の行方(4)


 ――そう、もはや他に手段はないのだ。
 頭上に渦巻く膨大な量の魔力。それが形を成したなら、全てを――起動すべき結界を含めた、全てを崩壊させることは目に見えている。
「この魔力……自らを犠牲にしてまで、ヴェイロンに尽くしますか!」
「ふふふ、私一人の命で執行官を含むこの場にいる者たちを全て消し去れるなら安いものです。最期が裏切者である死から教わった力というのも皮肉ですね。ですが私は、忠誠を誓った主を裏切ることはしません。決して!!」
「全員突撃! 方法は問いません。今すぐ、なんとしてもシグを――!」
 リアナの檄が飛び、同時に彼女の構える十字の銃から砲撃が放たれる。万全とは言えない彼女の、それでも渾身の神裁術式が幾度も幾度もシグを襲った。
「急げ、もう時間はないぞ!」
 ウォークスの号令に【モデスト・グッド・ピープル】が動く。剣が閃き幾度も切り裂くと同時に、爆炎の術式が展開した。
「信じましょう。私達は勝てます。立場を越え、種をも超えて、力を合わせさえすれば……!」
 優の信念のこもった声が、【月梟】の面々に勇気を与える。彼女の炎を伴う一閃に神裁術式が続き、竜と精霊、輝神の加護、そして人の力が、それぞれ相互に助け合って力を示した。
「さあ、【春風】の力を見せつけちゃってっ!」
 フィアの明るい呼びかけに応え、風と共に鋭い刃が閃いた。
「大丈夫。きっと勝てるはずだよ。私、支え続けるから……!」
 アリシアの放つ神聖術を受けて【マレウス・マレフィカルム】の面々がその力を解き放つ。雷撃が弾け、聖なる光が放たれ、精霊の力の奔流がシグを襲った。


 最後の瞬間まで、彼女は悲鳴をあげなかった。
 息をつめ、歯を食いしばり、けれどどこまでも無防備なまま、祈るようなまなざしで一点を――頭上に広がる黒き魔力の渦だけを見つめていた。
 ただ、冒険者たちがすべての力が撃ちつけ合って大きな光を作り出した、その瞬間だけ、彼女はその唇を開く。
「――ヴェイロン、様……」
 その名を呼ぶことが、彼女にとって何を意味するのか。
 それを誰かが知り得る機会は、もう永久に訪れることはない。


 カラン、と音をたてて杖が倒れた。
「あ……」
 それに最初に気づいた京は、慌てて高度を下げ、地面へと足を落ち着けた。
 シグが振るい続けていたその杖。おそらくは曰くのあるものだろう。人族の世にこれを放置するのは危険ではないかと、彼女はとっさに考える。
「あ、あの、ご相談があるのですが――」
 ゆえに彼女は放蕩の聖者に呼びかける。彼の持つ帯、オータス・ストラならば、その力を封じることができるのではないかと。――だが。
 結論から言えば、帯の力は杖に及ばなかった。
 封印を試みた瞬間、反発するように魔力がはじけ、強い拒絶をしめし――そしてまた、地面にカランと転がったのだ。
「そんな……」
 京の大きな瞳が不安に揺れる。
 しかしやがて、杖は主の死で役目を終えたように、魔力が失われていった。


「――いくよ、みんな!」
 シャロンの声が教会の中に響いたのは、その最中だ。
 彼女が取り出した大宝玉が、祭壇の奥に隠されていた石板へとはめ込まれた。
 途端に明るい光が石板に掘られた紋様の形で浮かび上がる。
 その光は強く、けれど柔らかく広がって、すぐに教会を満たし、越えて、街へと広がっていった。
 シグの杖もこの光によって浄化されたのだろう。
「オータス様……」
 光の中で、リアナは信じる神の名を呼ぶ。
 その声はよろこびに震え、頬には透明な涙が流れていた。


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