〈ルクサス調査(7)〉
「障壁を越え来たる異界の英雄
幾多の勇者を引き連れまた帰らず
屍山血河の末、届きしか?」
市街を観察して歩きながら
古井戸 綱七は歌った。
略奪の限りを尽くされ荒れ果てた街、だが壊滅的な破壊はあまり見られない。
ヴェイロンはどんな志を持ち、ここをどう統治しどう導こうとしていたのか……。
邪悪な存在であるが故に抹殺する事が真に正しい事なのか……綱七はヴェイロンの生き様に思いを馳せる。
* * *
(やはり、人族と魔族では暮らし方も随分違うらしいな……)
九曜 すばるのカメラはそこここで起きた出来事を含めて市街の様子を捉えていた。
市街の建物の破損状況に加え、略奪されもぬけの殻となっている民家、手入れがされず荒れ果てた街並み……そして、魔族が人族と決して相容れないという厳しい現実も、すばるはホバーボードで浮上し、少し高い視線からカメラに収める。
これらの撮影物が、その場では見分けられない侵略前後の違いを見出す事に繋がり、ルクサスの復興そして魔族の分析に役立つであろう事を信じて。