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レヴァナント・クロニクル 王都決戦

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レヴァナント・クロニクル 王都決戦
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開戦




 ルクサス市街。まさかこの地で魔王軍との決戦が行われようとは、誰が思っていただろうか。
 それも人族の街に人族が攻め入る形となってなど、誰も想定していなかったはずだ。
 しかし、人族はここまで来ることができた。一度奪われた故郷を、再びその手に取り返す。そのほんの手前まで。
「俺たちがここに何をしに来たか、皆わかっているな!?」
 グランヴィル騎士団団長、ダニエルが吠える。
 ダニエルの大喝に、騎士団、冒険者たち、そして特異者が吠え返す。
「「「「「王都奪還!!」」」」」
「その通りだ!! 魔族どもから、俺たちの街を、国を取り戻す!! 立ちはだかるヤツらは踏み潰せ!!」
 およそ騎士らしからぬダニエルの過激な言葉は、しかし人族の戦意をこれでもかとばかりに昂揚させる。
「そして内壁を越え、魔王の野郎も潰す! いいな!」
「「「「「オオオオォォォォォ!!」」」」」
 ダニエルの高まり切った士気が伝播した人族は、進軍を開始した。

 士気が高く、疲労もまだない状態でやるべきことは一つしかない。
 まずは当たるべし。法霊崎 花月は、陣を敷いて前進する騎士団の先頭に立って迫りくる魔王軍に相対する。
「押し通るで、魔王軍!! ……死にたくないなら、退いて」
 花月は『騎士の名乗り』を行い、魔王軍の注意を引き付ける。そうなれば当然、花月は敵からの集中攻撃を受けることとなる。
 だが、花月は士気の高さに乗じて、いわば気分で先頭に立ったわけではない。自身に敵の注意を引き付けることで、本命から敵の意識を遠ざけ、守るために一歩前に出ていた。
「後ろは任せろ。キミたちは、俺が支える」
 そんな花月を後方から補助するのは鶴永 真白だ。真白は周囲の味方が傷を負えばすぐに癒せるよう常に『輝臨の教典』を構えている。
 また、『ホーリーブラスト』による牽制や、『錬成【鉄壁】』による行動の阻害で味方の攻撃に繋げるという後方支援にも一役買っている。頭脳明晰である真白の立ち回りは、混沌とした戦場のど真ん中にあっても実に冷静なものだ。
 更に、その隣では佐門 伽傳が支援を行っている。クレリックである伽傳は、回復は勿論のこと、『ブレッシング』による味方の強化を行うことで戦況の優位を作ろうと試みている。手を出す必要がない間も『サルベーション』を展開し、最前線で戦いながらも比較的安心できるスペースを作ることで士気を高く保ち続けている。
(まずはここを突破しなきゃ、この戦いはお話にならないわ……)
 真白の周囲で素早く立ち回り、隙を見せた敵に襲い掛かっているのは九鬼 苺炎だ。
 苺炎は『闇狩りの短刀“鳥葬の刃”』で攻撃することで、継戦能力を高めた状態で戦いに臨んでいた。『ファントムステップ』を駆使した翻弄する動きから繰り出される攻撃は、真正面から向かって来る騎士団の攻撃を受けながらでは捌き切れるものではない。
 それだけではなく、『ジャッジメントレイ』と言った神聖術や、『キルストーム』といった強力な攻撃を繰り出すため、無視できない存在となっている。
 とにかく攻撃し、敵陣を切り崩すこと。前線の戦いにおける苺炎の役割はこれに尽きる。
 そんな苺炎の立ち回りを支えるのは、パートナーのユウキ・ヤゴだ。ユウキは、その役割上やや強引な攻め口に成らざるを得ない苺炎の動きに追随し、彼女を守っている。
 苺炎はユウキを上手く壁として扱うことで、より強引に攻めることができている。これは互いに深い信頼関係がなければとてもできないことだろう。
「九鬼さん! 繋げてください!」
 壁として健気に立ち回るユウキだが、ただ立ちはだかっているだけではない。二人のタイミングが合えば、『シギュラースラッシュ』を構えた上で『カームフロウ』のカウンターを放ち、苺炎による重い一撃でトドメを刺す、と言った連携を取っている。
「危ないですにゃ!」
 二人では対処しきれない敵には、後方からゴルデン マリーが射撃による足止めを行う。
『ライトフィールドマークⅠ“金の鍵銃Ⅰ”』で狙うのは『弱点察知』で見出した、攻撃を防ぐのに最も効果的と思われる箇所だ。より効果的な銃撃にするため、『ホローポイント』で内部に衝撃を伝えるということもしており、マリーの援護射撃はただの足止め以上の効果を得られているようだ。
 また、自身の位置を絞らせないように適宜『タイガーショット』を放つことで威嚇し、立ち位置を変えているため、魔王軍はなかなかマリーを追えていない。
 戦における開幕で最も大事なのは、機先を制すること。初手から奇策に走らず、まともなぶつかり合いで優位であることを示せれば、その後もいいペースで戦線を押し上げられるだろう。今のところ、最前線の人族軍はそれが上手くできている。
 だが、敵もさるもの、押されていることを実感しながら士気が落ちている様子はない。仲間の屍を踏み越えながら、迎撃の手を緩めず次々に向かって来る。防衛戦を展開しているという雰囲気は微塵も感じられない。
(押し込むには、もう少し強烈なヤツが必要だね!)
 これまでパートナーである伽傳の側で、『マーシュダウン』による足止めや『ゲイルブリング』による吹き飛ばしで搦め手に徹していたシャブダ・ボーディが、戦況が思いのほか良くないと感じ、立ち回りを変える。
「人族の街でこんなことするのも気が引けるけど、ここは行かせてもらうよ!」
 直後、シャブダは敵集団に向けて『オメガフレア』を放った。強烈な炎が広範囲に広がり、魔族の軍勢に纏わりつくように焼く。
 容赦なく街に火を放った人族軍の行動は魔王軍にとって計算外だったのか、これまで整然と攻め寄せてきた隊列が大きく乱れる。
 対してこの行動は織り込み済みだった人族の軍勢は、攻勢のギアを一段上げる。
 シャブダの大技が作り出したこの機を逃す手はない。炎の難を逃れた敵を花月が弾き飛ばしたのを合図に、真白は『ジャッジメントレイ』を放つことで人族の進路を切り開くと、苺炎が素早くその道を進みながら敵を斬り裂いていく。
「戦線を押し上げろ!!」
 特異者の連携によってついに優勢に傾いた戦況を察知し、ダニエルは全軍に号令を出す。
 炎とともに攻め寄せる異様に士気の高い人族軍の姿は、敵にとって恐ろしいものとして映っただろう。
 だが、ようやく優勢を掴み取ったとは言え、内壁まではまだまだ距離がある。この勢いをどれだけ維持できるかが、勝敗を大きく左右することになるだろう。



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