■プロローグ■
「よぉ、皇子様。ずいぶん退屈そうな顔してるじゃないか?」
「……何の用だ。警備の者たちは何をしている。それに……余はもう皇子ではない」
「これは失礼いたしました、皇帝陛下」
王宮の中庭にいたレオンハルトは、突如聞き慣れない声を聞いた。
そこに立っていたのは、黒いコートを纏った男だった。
「それは何だ?」
「見ての通り、タバコだ。王室じゃ縁はなかったか」
男はタバコに火を点け、言葉を続けた。
「失せろ、無礼者」
「今の陛下じゃ、俺は倒せねぇよ。いや、この三千界で俺と渡り合えるのは……“特異者では”いねぇな」
殺気。
レオンハルトは生まれて初めて、明確な死を感じた。
この男は、只者ではない。
「特異者、か。“境界”の向こう側から来たのか?」
「話が早ぇ。何、陛下にはある種の“才能”を感じたんでな。こうして声を掛けたんだ」
男が笑う。
「“世界”を手に入れたくはないか?」
「世界を?」
「そうだ。陛下は恵まれている。国にも、自分自身にも力がある。
覇道を征くだけの力がな」
「覇道か。一つ問う。
貴様にとっての王とは何だ? 余は貴様が思う王とやらを目指してやろう」
男は、王とは何かを雄弁に語った。
「なるほど。それは面白い。そうだ、名前を聞いてなかったな」
「そうだな……アグニ。その名で通っている」
* * *
「どうなされました、陛下?」
「なに、思い出していただけだ……古い友をな」
どうして今、あの頃のことが頭を過ったのか。これもアーカーシャの影響だろうか。
レオンハルトはホワイト・タワーを見上げた。
「さあ、行こう。総てを――手に入れるぞ」
■目次■
プロローグ・目次
【3】第三層の安全確保
混乱の三層
人手の不足
導き その一
導き その二
第二区救援戦線・1
第二区救援戦線・2
第二区救援戦線・3
第三区、市街
第三区、大通り
第三区、ニュー・セントラル・シアター1
第三区、ニュー・セントラル・シアター2
第三区、東・市街地
第三区、西・市街地
【4】各国の星霊機関の確保
・パダーニャ王国
パダーニャ王国最終戦・バルメの“意地”
パダーニャ王国最終戦・“意地”をも弾く覚悟
パダーニャ王国最終戦・想いの防壁
パダーニャ王国最終戦・圧し刈る重風を絶つために
パダーニャ王国最終戦・パダーニャ王国星霊機関
・コロンビア合衆国
不屈
猛追
執念と執念
【2】アグニへの対処
魔女の行方
火神と天空神1
“戦争屋”ブレイク・マグノリア1
“戦争屋”ブレイク・マグノリア2
火神と天空神2
【5】帝国の星霊機関の奪取
選択と因縁1
選択と因縁2
アインの力
フュンフとフィーア
アハトとアイン
アインとの決着
一人の女
カイゼル
掌握
【1】アーカーシャの覚醒を阻止する
雪辱
アクセル3rd
切り捨てられた右腕
レオンハルトの左腕
未知の力
失われた鞘
突破
皇帝レオンハルト
猛攻
グラトニー
アーカーシャ
メグ
エピローグ