「みんな、地上は任せたぞ! 俺は空から援護する!」
島津 正紀は子ども達にそう呼びかけると、訓練用IFに乗り空へと飛び立った。
前方からはテュポーンの群れとともに二頭のギガンティックが迫っていた。
「ここから先は通さないのです!」
空挺戦車に乗った
ルドルフ・キューブは巧みに車体を操りながら、小口径艦砲の砲口を敵に向ける。
そして、その足並みを挫くよう味方のための砲撃支援を開始した。
「よし……見てろよ!」
正紀はテュポーンやギガンティックが怯んだところへ、ホライゾンキャリバーを振りかざし、突っ込んでいった。
ファストスラッシュの一撃に、ギガンティックの一頭が卒倒する。
ブランクにはない大型兵器の活躍はやはり、衝撃的だったのだろう。
空を駆って戦う正紀の姿に、子ども達はみんな目を丸くしていた。
「子ども達もテュポーンもみんなびっくりしてるのです! さぁ、ガンガン行くですよ!」
ルドルフの砲撃のお陰で敵の接近が抑制され、正紀の活躍はストロベリーフィールズの子ども達にとって大きな力となった。
しかし、敵味方入り乱れての戦いにはどうしても負傷者が発生する。
「みんな落ち着いて! 味方がちゃんと戦ってくれてるから、ここには敵は来ないよ! いい? 僕が教えた通りにすれば上手くいくから!」
マリアベル・エーテルワイズは安全な建物の中で子ども達に手当の仕方を教えながら負傷者の救護を行った。
共に仲間の手当を行う子ども達の中には既にマリアベルと顔なじみの者も多くいた。
「前にお歌教えてくれたお姉ちゃん? ねぇ、この子足が痛くて動かないんだって! どうしよう!」
「無理に動いたせいで足の裏の筋肉が攣ってるみたいだね。大丈夫、僕の整体術で治してあげるから」
マリアベルが子ども達に治療を施す間、外では
リッタ・マルシアーノがギガンティックや、テュポーン達を誘き寄せていた。
何やら作戦があるようだ。
「よし、ここまでくれば……!」
リッタは敵をギリギリまで引き寄せると、ディメンションリライトで地形を凸凹に変化させた。
走ってきたテュポーン達が次々に転倒する。
そこへ、子ども達が一気に攻撃を仕掛けた。
「いいよみんな! よーし、ボクも!」
攻撃を仕掛ける子ども達にリッタもハイドロボールを放って援護する。
しかし、多くの子どもたちが協力的であった一方、やはり「頑固者」は存在した。
「アンタ達、いつまでそうやっていじけてるつもりなんだよ。ほら、みんな戦ってるぜ?」
ゼ・フォルノは廃墟の中に閉じこもり、出てこなくなってしまった子ども達を前に呆れ顔をしていた。
どうやら、特異者達の到着前に仲間と大喧嘩し、素直に出てこられなくなってしまった子ども達のようだ。
「だってさ、
タクミの作戦を実行したら……」
子どもの一人が言った。
「今までここで頑張って生きてきた意味が無くなるかもしれない。今まで死んだ仲間には、俺達を庇って死んだ奴らもいた。俺……あいつらに何て言ったら良いか分かんない……」
「確かにな」
フォルノは小さくため息をつき、頷いてみせた。
「だけど、このままだとどの道世界は滅んでしまう。それだけじゃなくて、家族の想いも滅んでしまう。それでもいいのか?」
「家族……?」
「過去の世界で、アンタたちを生かそうとしてくれた両親や大人たち。そのおかげで、みんなここにいるんだ」
そう言うと、フォルノはタクティカルナイフを手に外へ出ていった。
テュポーンが近くに迫っていたのだ。
「タクミの賭けがうまく行けば、今よりもっと幸せな未来を送れるはずだ。あたしはそう思う」
そう言い残してフォルノは立ち去った。