2 あおぞらを守る
ハイドホーム「あおぞら」は、辛うじてテュポーンの攻撃を免れていた。
それは、駆けつけた特異者、そして子ども達がその接近に気づき、ハイドホームに近づかれすぎる前に食い止めに入った結果であった。
「ファニー! 皆さんを守ってください!」
シルノ・フェリックスは界霊獣ファニーを召喚し、ホーム付近で戦っている子ども達を庇った。
その様子を、ホームの中にいた子ども達が見にやってきた。
しかし、ここでも今を生きるか、未来を作るのか意見の対立が起きているらしく、子ども達の態度はどこか余所余所しい。
「あー! やっぱりケンカしてる! ダメだよ! 今は対立なんかしてる場合じゃないんだから!」
八上 ひかりは石柱槍を手にテュポーンの群れに対峙しながら子ども達に向かって呼びかけた。
「タクミの計画に賛成の子も反対の子も、『あおぞら』を大切に思う気持ちは変わらないよね!? だったら、今はケンカはお休み! 協力して守らなきゃ! そうでしょ!?」
敵は次から次へとやってくる。
ホームにいる子ども達の協力なしには切り抜けることのできない状況だった。
「わたしも、タクミの考えに心から賛成できるわけじゃないわ。みんなの気持ちは分かるのよ」
川原 亜衣は援護を躊躇している子ども達にそう呼びかけた。
「でも、今は生きなきゃどうしようもないじゃない。争うのは戦いが終わってからよ!」
この世界をどうするか。
しかし、今はその前に生きなければならない。
その言葉に、子ども達はハッと気づいたような顔つきになった。
「そうだよな……俺達は考えが違う。でも、みんなが死ぬのは嫌だ!」
「あんたたち、ケンカはおあずけよ! 私達の『あおぞら』を守らなきゃ!」
ホームの中にいた大勢の子ども達が加勢し、防衛に加わっていく。
内川 紅蘭麻はインスパイアのスキルを発動し、子ども達をさらに鼓舞した。
「そうですよ、みなさん! 全力で戦えば必ず切り抜けられます! 行きますよ……!」
テュポーンの群れが一斉に砂山を駆け下り、迫ってくる。
特異者達は子ども達とともに勇ましく彼らを迎え撃った。
「ひかりさん……! 皆さんもどうか、お怪我のないように!」
シルノは加護の唄を歌い、前線に立つひかりや仲間を援護した。
ひかりは「カモンベイビー」と群れを挑発し、その攻撃の手を自分のほうへと引きつけた。
「あっちには行かせないよ! あたし達が相手だ!」
「みんな、行くわよ! ひかりに援護して!」
亜衣がクールアシストで皆に指示を出し、紅蘭麻も前線へと飛び込んでいく。
アブソリュートアライブの連撃で敵を退けながら、紅蘭麻は子ども達の必死な横顔を目に焼き付けた。
(5年先10年先にこの子達全員が生き残る事の出来る可能性は低い。だとしたら私は……いえ、今はそんな事よりもハイドホーム防衛の方が大事ですよね!)
いつしか、争っていた子ども達もそのことなど忘れたかのように一つになっていた。
特異者達はその事を何よりも頼もしく思うのだった。