■バリア突破■
「新たに歩み始めようとする彼らの邪魔はさせません。
過去に戻ってリスタートするアナタが、ノーコンテニューで一瞬一瞬を生き抜くわたし達に敵う道理無し。
さぁ……最高のエンタメを見せてあげます!
ブランク華撃団……出陣です!」
バリアが破壊されたのを見て、
紅月 真奈美が声を上げる。
そして、紅月は、界霊獣ラブを召喚し、仲間の速度・跳躍力を向上させる。
関魔 恭子もブラシーボケアの話術で皆のやる気を出させ、今の状況をデフラグメンテーションで情報整理しながら、ゆっくりと見やる。
バリアがなくなったというのに、驚きひとつないマリス。その様子を見るだけでも、バリアだけに頼って戦うタイプではないのが解る。
関魔は皆に充分に気をつけるよう、声を掛けた。
「皆様は私がお護り致します」
後衛陣の前に立つのは
モリガン・M・ヘリオトープだ。
アース神族のアバターのモリガンはテュポーンの姿は見えないが、光を導く者の盾【ブリュンヒルデの楯】を持ち守護領域を展開させ、強固な防御を得る。
瞬刻の見切りもあり、堕ちた熾天の槍【ラグナ・ランス】にて視認できる敵の攻撃にも対抗する所存である。
そして、全力の攻撃に出る
ルキナ・クレマティス、紅月、
真毬 雨海にに祈勝のルーン――幸運を引き寄せ、勝利をもたらすといわれるルーンを施す。
秋名 宮古は紅月の傍で武器をバリアアップデートで強度を固めていく。
できれば全員分したいものだが、魔力には限りがある。自分の実力を考えると武器の強化より、回復に専念した方が良いかもしれない。
サバイバルセンスによる思案で、秋名は自分の魔力を保存する事にした。
回復役なら、
カトリーヌ・アーリーがいるので安心といえば安心だが。
彼女のパワーオブラブの歌声が皆の身体能力、筋肉を上げていく。
そして、ラブと共に唄っている為、徐々に怪我を回復させる効果も付与中だ。
(わたしではマリスを倒せない……。けど……わたしはマリスを倒す方々に力を与えることができる。
真奈美さん、華撃団の皆さん……。“今”を生きて“未来”を踏み出すブランクの皆さん……、どうか……ご無事で……!)
「この世界が愛おしい……最高の舞を奉じましょう、参ります!」
まず飛び出したのは
津久見 弥恵だ。
月黄泉【SUファミリア【レベル5】】を連れ、生存本能を烈火のごとく猛らせる。
華麗なる円舞でマリスに近付き、建御名方【ランドクエイク【FA4】】の剣で踊りながら蹴りを混ぜた攻撃をする。
フェイントも混ぜて、ゆっくりと踊り、少しずつペースアップする。
緩やかに静かに剣を地面につき立てる。
出現した多数の巨大で鋭利な地柱がマリスを狙う。
楽しそうに避けるマリス。
火之迦具土【ライグナイト【FA5】】による浄化の炎が津久見を包み込む。
そしてインスパイアで自身を奮い立たせ、津久見の感情を昂ぶらせていき、カルペディエムの力と共に津久見は咆哮する。
津久見の潜在能力を引き出すだけでなく、仲間のブランク華撃団のメンバーにもその力が及ぶ。
心と心が強く結びつき、連携力が高っていく。
マリスはギガンティックを操り、その場を盛り上げるかのように腕を振るい、ブランク華撃団を煽るように舞いを舞わせ、相手を挑発する。
「その程度の踊りならギガンティックでも踊れるわよ? あはは」
炎のごとく熱情を秘めた津久見の瞳に、にっこりと笑うマリスの姿が焼きついた。
* * *
三好 慶火にゲノムリライトで遺伝子情報を書き換えてもらい、物理的攻撃に対し極めて高い耐性がある体質となった
松永 焔子は、フレイムバギーに乗って先に駆けた三好と
ツクモ・オウバージーンの後を追う。
フレイムバギーをバリアアップデートで防御力を高め運転するツクモはバギーに取り付けられた小型火炎放射機をマリスに向かって発射する。
弄ぶかのように剣の雨が降って来るが、癒しの雨で傷を回復して行く。
「姉貴ぃ! あのいけ好かないオバサンにフルスロットルでぶちかますぜ!」
そのツクモの声に、三好はバギーから飛び降りた。松永を想い<誓う>★3心を持っている三好は精神エネルギーのオーラを纏い、反動やダメージを緩和させている。
バギーから転がるように落ちた所で癒しの雨の効果もあり、傷一つない。
ツクモはマリス直前でバギーをスピードを乗せたまま、マリスに向かって乗り捨て、爆薬を搭載したミニカー、デトネーター【FA2】を放ち、爆発を起す。
ばああああんんっっ!!
「神様気取りの若作りか……。気に入らない。ぶちかませ、焔子ぉ!」
爆音と共に、三好の叫びが響く。
三好から放たれるゲシュタルトブレイク。球体化させたプラーナによる波状攻撃がマリスを襲う。
「『このゴミクズどもが!?』とでも思ってます? 貴女はそうして蔑み、踏みにじってきた命に報復されて――消えなさい!」
武神の和魂【レベル5】、武神の荒魂【レベル5】を使い松永は、槌ノ虚【FA4】の力で存在感を希薄にし、マリスに接近する。
爆音と炎と、ゲシュタルトブレイクの攻撃をマリスは受止めながら、嬉しそうに笑う。
傷は負っている。なのに、それが大したことはないとばかりにピンと張った姿勢。
怒りが煽られる。
マリスは松永に気付いていない。
七色の靭翼による翼を背に生やし、宙に浮いたマリスへと松永は近付いた。
練気術でプラーナがオーラ状となり、そのオーラを纏った松永は攻撃の威力を底上げする。
そして、ラストスタンドで強力無比かつ動きを麻痺させる衝撃波をマリスへと、己の拳と共にぶつけた。
「――っ!!」
地面へと飛ばされたマリスに覆うように松永が彼女の身体に乗り上げようとするがマリスはそれを回避。
だが松永も止まらず、腕を岩石を軽く噛み砕けるほどの強靭な顎と刀剣のような牙を持つ恐竜の頭と変化させ、マリスへとその牙を突き立てる。
あと一歩、というところでマリスは具現化された鎖をジャラジャラと松永の身体に巻きつけた。
それは拘束すると同時に、松永の脳内に膨大な情報を無理やりいれていった。
すかさず松永は受けるダメージを万死一生で身体の一部に集め切り落とす。
その途端、鎖が数値を叩き込むのを止め、松永への拘束を激しくしていった。
水野 ミルキーがコンバットファング【FA1】の剣を手に、サバイバルセンスで自分の能力が上がっているのを感じながら、
水野 愛須から聞いた近付いてくるギガンティックへと突っ込んでいく。
「私、どっちかって言うと後衛なのに……」
大丈夫なのかと自問自答しながら、剣を投げ、そのまま走りこんで獣虫の戦魂で衝撃波を放つ。
そして、そのまま鋭利な妖の爪による攻撃をかましていく。
ミルキーと共に走るのは
ニーナ・バニーシャ。
ファミリア【レベル4】を連れ、キングルーパンチャー【マクロプースナックル【FA2】】 でカンガルーの力を宿し、カンガルーの耳と尻尾を生やしたニーナが軽いフットワークと巻き込まれ体質による速さとクリティカル率を上げ、ブレイブロウでの一撃を放つ。
念には念を入れた攻撃が命中する。
そして、イラプションブロウによる猪の力で敵を突き上げて、フィニッシュである。
しかし、テュポーンを相手にしている特異者は少ない。
ミルキーとニーナでは、完全に彼らを足止めできなかった――――。
(別の『未来』を作る、か。私は貴方達も救いたかったのに)
関魔はタクミの言葉を思い出し悲しくなるが、今はそれ所ではない。
元凶のマリスを睨みつける。
「とりあえず、マリスとかいう糞餓鬼にはご退場願いましょうかッ!」
何かの足しにならないかとオリジナルディクショナリィ――ジーニアスたちが好きに解釈して色々書かれている本である。イザという時には、鈍器にもなる。
デフラグメンテーションで情報をまとめ、瞬間記憶で状況を見る。
マリスが操るテュポーンに挑む人が少なかったのは痛い。
とにかく、何かしらで惹き付けるなりして効率よく倒していかねば――関魔も戦場へと足を踏み出した。