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亡界のロストチルドレン~完結編~

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亡界のロストチルドレン~完結編~
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■過去での死闘、決着■


 ここに来る前、そうタクミに、あなたの考えは嫌いじゃないと言ってきた桐ヶ谷 遥は、あの猛攻撃を受けても平気そうなマリスを苦々しい思いで見る。
「なるほどね、緊急時のバックアップが過去の自分とはね、全くよく考えたものだよ。普通なら手出しもできないからね…でも過去に戻れるのはお前だけじゃない、
 未来を選んだ彼らの為にもマリス、ここでお前を討つ」
 飛鳥 玲人も、桐ヶ谷と同じ色を瞳に滲ませて、マリスを見ていた。
「天才気取りのマッドサイエンティストにちょっとばかりお灸を据えてやろうじゃないか」
「並行世界作るのと、この世界の延長上に新しい世界を作るのって、何がちゃうのんっ……? 
 喧嘩は同じ次元でしか起こんないってホントなんだねぇ……ま、いいやぁっ。一緒にあーそぼぉっ」
 レベッカ・ベーレンドルフ星・カグラは全く正反対の雰囲気を纏って様子を伺っていたが、2人の気持ちは同じである。
 ツェアシュテールの参謀役、レベッカと深淵の集いの参謀役、星と飛鳥。3人は勝利を掴むため、冷静に今までの戦いを見つめていた。
 レベッカと星が、コールドリーディングで見ていたマリスの動き。
 そうスピードはなく、使えるはずのテュポーンも他の特異者が惹き付けている為、脅威になっていない。
 ただ、普通ならレインの一撃で沈んでもおかしくないはずで、それ以上ともいえる威力の攻撃を食らってもバリア越しだと無効。
 剣を手にしたが、それがどこまで使えるかは不明。
「シヴァの野郎の力を借りるっていうのはシャクだが、この際関係ねぇ。何せ今回はオレたちの方から、あいつの力を利用してるんだからな」
「世界の答えを、見せ付けてあげるわ!」
 レベッカと星、飛鳥が話し合っている間、アルフレッド・エイガーフィーリアス・ロードアルゼリアは、バリアアップデートで桐ヶ谷の、ジェノの防具や武器を強化していた。
 フールドリーマーによって疑問を浮き出し解決方法を2人は考える。足場が悪い場所にいるのは、それを不利だと知っているのか、何か策があるのか。
 それはマリスの誘いに見えるが、乗るしかない。
 そして、観察眼を持つレベッカと飛鳥が弱点を割り出そうと話し合う。
 弱点――観察眼で見抜く限り、レインの攻撃が通った、他の特異者のは通らなかった。
 何が違う? 捨て身か否かといえば、他の者にしても捨て身で当っていたのだ。
「確実に当てようとすれば、威力が減るのが問題だ」
 威力もある、あの攻撃を当てたレインの攻撃は賞賛にあたる。
「しかし、力押しで行っても、あのバリアに塞がれるだけだ」
「イルファンが、最後の審判使えるが、隙をつけないと駄目かもしれないな」
「あれだけの威力を持つ最後の審判なら、バリアもすべて破壊できるかもしれんが、他の者を巻き添えにするかもしれん」
「そうだな、使わずに済むといいが。あれは最終手段だ」
「ああ、とにかく、攻撃が通じるように隙を作ろう」
 そして、二つのグループの参謀は、仲間達にGOサインを出す。
「おぅ、オレ弱っちいからバックアップぐれぇしか手を貸せねーけどな!」
 界霊獣ラブを召喚したアルフレッドは、仲間達の速度と跳躍力を向上させた。
「ヒビキとイルファン。ジェノも物理攻撃の耐性を上げておこう」
 飛鳥は前に出る3人に声を掛け、ゲノムリライトで遺伝子情報にアクセスし、物理的な攻撃に極めて高い耐性を持つ特殊な体質へ変える。

*  *  *


「貴方の知識欲は認める。でも一人で辿り着けはしないわ」
 言霊のファミリア【レベル2】を連れたフィーリアスが、クールアシストで冷静に状況を見極め、まずはバリアだとカオティックキューブ【FA2】を使い、キューブから出る瘴気を等身大程度の人の手の形状にし、マリスへと飛び掛からせる。
 がっと、マリスに届く前に見えないバリアにぶつかる。
 フィーリアスは、そのまま何度もそのバリアを殴りつけた。
  ばんっ!! 
 手が何かに叩き落される。
 このままバリアの位置を把握できてれば、とあったが――バリアは複数だった事実に気付かされる。
「ヒャッハー! 悪いオバサンだぁ! 悪のバリアは、貫通するに限る! それが、正義のヒーローの役目!」
 楽しげに声を上げて突っ込むのはリーゼ・アインだ。
 棘だらけの流血の指輪は、流血と痛みが伴うが、その分自分を高め、攻撃力が上がる。
「バリアは、負荷が高くなると安全装置作動したり焼き切れるのがアニメのオヤクソク! 正面から破ってこそ王道!」
 憂戚の大盾を持ち、シールドバッシュの技術をもって真っ直ぐに突撃する。
  がんっ!! 
 その盾を全身で受止めたテュポーンがいた。
 倒しきっていなかったのか、それともどこかに隠れてたか。
 石柱槍を掴み、リーゼはテュポーンと向かい合った。
「あのオバサン、大事なことを忘れてるよ……科学は人を幸せにするモノ、超常を日常に変えるモノ、神様の奇跡を人の技術に落とすモノだって! 沢山の人を不幸にして、技術に落としたモノで神様の真似事するなんて片腹痛いよ!あなたは必ず倒してあげるよ、同じ学者として!!」
 ユノ・クラフトはぷんぷん怒りながら、硬直皮膚で防御力は高めに、刀身に重りが埋め込まれた大剣――エクセキューショナーで、ダストバーストによる強力な一撃で、マリスの足元を狙って破壊する。
 逃がさないとばかりに、周囲を破壊する。
 最後の手――最後の審判は、瞬間移動と錯覚するほどの高速移動で、視界に入る生物を圧倒的な力で、広範囲の生物を爆滅していく技である。
 特異者達が、マリスに倒されることのないよう、その力を使わずに済むようユノは祈って皆とマリスの戦いを見守った。
「全く……二人して倒すことしか考えてないとか……。まぁ、警備や護衛はお手のもの! サポートは任せろ!」
 リク・ライニングは、ユノの後押しをするようにまじかるましん☆ファングで床をグルリと破損させていく。
 テュポーンの姿が見えないリクは、ユノの行動に倣っていた。

*  *  *


 桐ヶ谷はカモンベイビーでマリスを挑発する。
「あなた研究はただの自己満足。だから誰にも認められないのがわからない? このオバサン」
 瞬刻の見切りの眼でテュポーンの攻撃は見ている。
 下手な死角に隠れていない限り、大和が倒しきったはずだが、もし出てきたとしても、攻撃を避ける自信はある。
 マリスの接近戦は解らないが……振って来る剣をファルコンダガー【FA1】で受止める。
 力はない、スピードもない。
 持ち慣れていないマリスの剣捌きは、戦いなれた桐ヶ谷にとって脅威ではない。
 飛鳥はファミリア【レベル4】を連れ、悪戯な魔糸【FA4】で糸の先についている剣状の楔をマリスに突き刺そうとするが、中々見事にバリアに阻まれる。
「こういう根っからのマッドは思いの丈をぶつけても、自分の信じてることしか信じなくて心が揺れるとかは無さそうだし、戦ってアイツの根底あるプライドをへし折らないとダメそうだな」
 カメレオンチェンジで姿を隠し、鬼蜻蛉の機械翅【FA3】で宙にいた水谷 大和は、一気撃滅で自身に練り込んだ気を纏わせて、マリスへ突撃する。
 遺伝子暴走で身体能力を引き上げ、ファミリア【レベル5】を連れてマンティスブレード【FA3】を自身の身体に融合させ、カマキリの力を宿し高い切断力を持つ刃を手にしていた。
  ざしゅっ! 
 床に刃が突き刺さるが、そのまま床を切断してマリスへと攻撃する。
 バリアでその攻撃は塞がれる。
 破壊せんと刃を振るうが、マリスがバリアで水谷を桐ヶ谷の方へと押しやった。
 仲間達に下手な手出しをさせるものかと、星はプラーナボムをマリスの目前に向けて放つ。
 爆発と共にマリスは後退したが、傷一つ負っていない。
「マリスお前って奴は…人を…娘まで弄んでせせら笑って……人の可能性を、未来をお前のちっぽけな自己満足の為に潰されてたまるか! 俺の全てに代えても、アンタだけはここで倒す!」
 怒りの声を上げて、ヒビキ・ヒカリが猛き炎の剣を手にマリスとの距離を詰める。
 ファミリア【レベル3】を連れたヒビキは水谷と共に蜻蛉の機械翅【FA3】で飛行し、2人で挟み込むように攻撃する。
 しかし、それらは全てバリアに阻まれる。
 水谷の鋭い攻撃さえも防ぐならば――――! 
「水谷! 蜻蛉の機械翅の力を解放しよう!」
「おぅ!」
 2人はマリスを挟み、蜻蛉の機械翅の四枚の翅を交互に動かすことで竜巻を発生させる。
 間にいるマリスは、砲撃対策隊のメンバーやユノが集めた数々の瓦礫の欠片をバリアで全て防ぎきれず、その身に受け風に煽られる。
 仲間達の護衛にはステファニア・ライアーがついている。
 エマージェンシーで危険に対して敏感になっており、素直に従い安全な場所へと皆を誘導するステファニア。
 勇気のファミリアを連れ、強い精神をもつ。
 オーバーヒートで自身のプラーナの流動を早め、攻撃力、防御力を上げ、螺旋刀・篝火【ホライゾンナイフ】を手にアームディフェンスで仲間の守護にあたる。
 もしもの時はバーンアウトで攻撃にでるつもりだ。
 ステファニアと共にいるのは星と霜月 八手
 霜月はアブソーブリングで不安、恐怖を払い、蒼炎の生存本能で冷静沈着に、的確な分析をしていく。
 参謀達が割り出したデータと、現状を比較し、何か狂いが出ないか注意深く見る。
 予想外なのは水谷と言うメンバーの増加ぐらいだが、それはどちらかといえばラッキーである。
 とにかく、イルファン達の攻撃は鋭いがそのまま何も考えず突っ込んでしまえば、阻止されるのは目に見えている。
 全力をもった大きな一撃は、2発目は難しい。
 確実に決めなければならない。
 何か出番狂いがあった時に、トランスとグロースリンクによる全力攻撃、もといサポート。
 削撃剣・ルドラ【ホライゾンヴィブロ】を手に、皆の戦いを見守る。

 桐ヶ谷とヒビキはカルペディエムで今を生きるという強い思いと共に咆哮する。自身の潜在能力を引き出し、仲間の潜在能力も上げる。
 そして、連携力が高まるのも感じる。

「マリス、お前の歪みが世界を滅ぼす。ならば示そう! 世界意思を! その歪みを破壊する!」
 蒼炎の生存本能と紅炎の生存本能で冷静、尚且つ不撓不屈の心を持ち、ジェノ・サリスは片翼の衣で天井近くからマリスを見下ろす。
 マリスの戦いを見ていたレベッカ曰く、蒼炎・紅炎の本能二つが呼び起こすカウンター技は真正面から突っ込んで行っても当るはず、らしい。
 マリスがバランスを崩していたとはいえ、真正面から向かって行った夏輝が当てた技である。
 ジェノは、鍛えぬいた自分の肉体とレベッカの言葉に自信が溢れてくる。

「どうやら性根が腐っているのは昔からのようだな。更生の余地のない者に情けをかけるほど俺はお人よしではない。
 タクミ達が目指す未来への道を繋ぐべく、貴様と全力で戦うとしよう」
 スカベンジャーでテュポーンを倒し、体力を回復させたイルファン・ドラグナは、隙あらば即駆けつけられるように緊張した面持ちでマリスの戦いを見守る。
 トゲがついた流血の指輪で流血を流しながら自身を強化し、狂戦士の膂力で潜在能力を振り絞り、力が身体中に駆け巡るのを実感する。

 攻撃の合図はヒビキからだ。
 水谷が蜻蛉の機械翅でマリスの行動妨害している中に、同じように蜻蛉の機械翅で竜巻を起こしながら、猛き炎の剣の力を解放し炎を纏わせ、攻撃力を上げる。
 そして、アブソリュートアライブによる連撃を食らわせるが、やはりというか、バリアで塞がれる。
 そこに、霜月のファミリアラストモーント。三日月の形のプラーナがマリスへと飛んで行く。
 上空に白い鳥が猛スピードで落ちてくるのが見える。
 マリスはヒビキの攻撃をバリアで受止めながら、上空にもバリアを発生させた。
「我らの姿こそ世界の生きる意志そのもの! そうだ、我らがサバイバーだ!
 ジェノは一気撃滅で自身に練り込んだ気を纏わせ防御力も上げ、白い鳥へと変貌していた。
 光をまとって敵を貫かんと、空いている上空から突っ込み、バリアに阻まれ――白い鳥の姿のジェノはバリアの一点に穴を開けて、そこに滑り込んだ。
 マリスの至近距離で元の姿に戻る。
 マリスがジェノの動きに驚き、彼に気を取れているこの時。イルファンは2人の元に向かって走り出す。
 しかし、それは初めに示し合わせていたジェノは気付いていたが、マリスはジェノに気を取られ気付いていない。
 ジェノの蒼炎・紅炎の本能がさざめき合う。神経が研ぎ澄まされる。
 マリスの攻撃がゆっくりと見え、難なく避ける事が出来る。
 その間、マリスは無防備! 
 琥珀の色砂を降りかけ雷の力を宿した巨大なゲルヒルデの戦槍の先端が高速回転し、マリスを貫く。
 それと共に、イルファンのエクセキューショナー――刀身に重りが埋め込まれた大剣もマリスの身体に埋め込まれる。
 自分の中の力を引き出し切ったイルファンによる、コークスクリューによる捩りによる破壊力。
「ぐはっ!!」
 2人の武器を受けたマリスは血を吐いた。
 そして、ぐぐっと、2人の武器をつかみ抵抗を見せるマリス。
 嫌な予感が走ったジェノとイルファンの目と目が合う。
『これで駄目なら最後の審判を頼むぞ』
『ああ、仲間達に被害が及ばないよう避難を頼む』
 一瞬のアイコンタクト後。

「「いっけ――――!!」」

 2人の咆哮のような叫びと共に、絶命したマリスの身体が宙を飛んだ。その後、マリスは動くことはなく、バリアに阻まれながらも特異者たちは勝利を手にした。これまで一手一手がなければ分析もできず、バリアを突破することも出来なかった、故にこれは特異者全員で手にした勝利だった。

 一行はこれにより未来が変わると信じて、現世へと帰っていった。

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