■過去マリスとの死闘■
バリアも厄介だが、攻撃してくる砲台も厄介だ。
マリス戦、テュポーン戦は、各々に当っているメンバーの攻撃が激しく、その隙をかいくぐって砲台の所まで行くのは簡単になっていた。
スピリッツ・ウィスパー【ファミリア【レベル2】】を連れた
各務原 麻衣はハッキングワンド【FA1】で機器がある壁側に駆け寄り、触れて簡単なハッキングを行う。
レーザー光線を発射させながら、瞬間記憶で出てくる光線の場所を覚えていく。
デフラグメンテーションで情報を整理し、光線の位置とハッキングデータをパターン化し、どのデータを弄ればどこの光線が出るか理解していく。
しかし、狙い撃ちにしたレーザー光線はバリアに阻まれ、主導権もあっさりマリスにもどってしまう。
「――――っ!!」
「麻衣さん!」
レーザー光線の直撃を受け、倒れ込む各務原。
きりっとマリスを睨みつける。
「貴女はっ! 命の尊厳をっ! 自分の娘をっ!! 何だと思っているんだっ!!」
観察眼で見た限り、何かを操作した風ではなかった。
自分の身体の一部のように扱っているのか、自動操作であれば、各務原のハッキングが奪い返されたという事実は起きない。
(こっちの、過去のマリスのバリアは不完全、攻撃が通らないわけじゃない。ならば攻撃が効くまで何度でも撃つ!)
フォルティス・アニマ【勇気のファミリア【レベル1】】を連れた
佐倉 杏樹は一心同体でファミリアと心を一つにし、ファミリアと共に何事をも恐れない強い精神力で、凛、とそこに立つ。
「これ以上、貴女に過ちは繰り返させない…ここで止めさせてもらう!」
不可視の一撃をも使い、ファミリアラストモーントでファミリアをプラーナで強化し、三日月の形にして放つ。
目に見えない攻撃は、マリスに直撃し、流れる血にバリアが破壊されたか、そこにはない事実を知る。
射撃口から出るレーザー光線が特異者達を乱発で狙う。
「この時点の研究室の機材を壊してしまえば現世のマリスも打つ手が減る筈だ!」
ウォークス・マーグヌムはそう叫び、イラプションブロウによる猪の突進をみせる。
「佳宵! 終日! 此処をゴミ屋敷にするぞ!!」
振動でレーザー光線の軌跡が揺れる。
呪術防護衣ア式の服を着、魔法防御力を高めたウォークスはファミリア【レベル2】を連れ、クラブシザー【FA2】を融合し、カニの爪の握力と外殻の防御力を得る。
ちょっとやそっとの攻撃はウォークスには利かず、それに気付いたマリスはウォークスに向かって強力なレーザー光線を放った。
ウォークスのライトミラーが光線を弾く。
マリスの余りのメロディアに対する自己中心ぶりに、モンスターペアレントと評した
日長 終日の瞳は怒りに燃えている。
「自分のやりたい事の為に世界を亡ぼすほど理不尽な事をするなんてとんでもないクソババアだね!」
日長は爆薬が搭載された、遠隔操作ができるミニカー――デトネーター【FA2】を走らせる。
そして、突き当たった場所で爆破!!
「世界を滅亡させ、生き残った子供達をモンスターの餌食にさせ、従う者だけは生存を許可する。
挙句、自分に従う者を利用して残った子供や滅亡させた世界で実験ですか……、こんなに怒ったのは久しぶりです。
どうしてくれましょうか、この人間……」
子供好きである
弥久 佳宵の怒りは計り知れない。
弥久にとって、マリスの所業はおぞましいとしか言いようがない。思いつく事さえ信じられない。
「これが毒親と言うモノですか……、メロディアさんの為にもその野望ごと亡くなって下さい」
ファミリア【レベル3】を連れた弥久が放つ、ファミリアカノーネ。巨大な銃弾が生成され発射される。
「滅多撃ちです!」
大木の幹を根こそぎ削り取るほどのその威力は、壁と言う壁に、機械と言う機械に穴を開けていく。
「どすこーい!!」
ウォークスは蟹の爪で破損させ、そこにイラプションブロウによる突撃を加える。
中の機器の配線やマザーボードがむき出しになってくる。
「硬い壁だな……、だが壊せない程ではなさそうだ!」
開いた穴から見える配線。
機械で操作しているのだから、それさえ破壊してしまえば、マリスの攻撃手段がなくなる。
「ハムスターさん、あのケーブルをちょっと齧って来て下さいな」
ファミリアを歯車の弓【FA1】でハムスターの姿に変えた弥久は、穴の中に行って貰うようお願いする。
しゅたたっと、穴の中に入っていくファミリア。
壁の中からバチッと、配線が破損されていく音が聞こえる。
「やい! そこのモンスターペアレント! お前の大事にしてる研究室は今から滅茶苦茶になるよ!」
日長は、むき出しになったその場所に向けて、ハイドロボールで小さな水の球を放つ。
苦々しそうな眼に、日長は研究室は壊して正解だと確信した。
水に浸された配線の数々に放たれるのは、スタンガンの一種のテーザー銃。有線の電極が空気圧で射出されるのである。
バチッと電気を弾く音と共に、破壊の足音が始まった。