■バリア攻略■
「まだまだ改良が必要そうね」
特異者達に確保されたメロディアを見て、何の感情をもみせず、パワーが足りない、予測知能が足りないと、考え込むマリス。
ばしゅばしゅばしゅっ!!
楔を勢いよく吐き出していく射口。
マリスを守る強力なバリアは楔を弾き飛ばす。
「試作型のバリア…ならばどこかに弱点があるはず! そこをつくことができれば、
綾瀬 智也さん達の攻撃もうまくいくはず!」
雷都 美幸がコールドリーディングで注意深くマリスと壁にあるらしい射撃口をみる。
デフラグメンテーションで今の状況を解析していく――。
(戦い……ですか。こういうときに引っ張り出されるのですね……。主様のお願いですし、頑張るのです)
空見 オーバルは雷都を見つめ、静かに頷く。
ロートルデバイスを手にアナライズで敵の能力を分析する。
「恐らく、戦闘ではバリアの弱さをカバーする戦い方をするのではないか……と読んでいますが……」
テュポーンの大半は、仲間達のカモンベイビー等による誘導により、マリスが思うように動いていないはずだ。
その残り少ないテュポーンの網を潜れば、そこにマリス。
「マリス……現在の世界を脅かすというのなら。過去で倒すしかないようね……!」
優理・ストーナーは一心同体でファミリアと心を一つにし防御力を上げ、オーバーヒートでプラーナの流動を早めて攻撃力、防御力と上げる。
そして、虚ろう碧の太刀を手にマリスを守ろうとするテュポーンへと突き進む。
エレナ・フォックスが練成で鉄壁を出現させ、横からテュポーンが集まってこないように、そしてマリスへの道を作る。
エマージェンシーで危険に敏感になった状況で、警戒しつつ前へ進む優理。
ヤバイ、と直感が告げる。しかし、前に進まなければマリスへと攻撃が届かない。
「今だよ!」
雷都の合図だ。
優理は界霊獣ヤソマガツが変化した太刀の力を解放する。
刀身が巨大な気の刃へと変り、真っ直ぐにマリスへ向けられる。
その刃はバリアによって塞がれたが、彼女を守ろうと動くテュポーンを何体も倒す。
「それでは参ります」
その倒されたテュポーンの身体を飛び越えて突き進む
李 霞。
残ったテュポーンから攻撃を受けるが、ブラッドパイルで防御力は上がっており、尚且つ修復蟲で回復していく。
硬直皮膚で皮膚も硬い彼女を生半可な攻撃力では傷つけることは出来ないだろう。
その後に続くのはエレナだ。サンラクシャンを着込み、テュポーンから認識され辛くなって回避力を上げる。
ファミリア【レベル3】を連れ、ヒューミディファイア【FA2】でファミリアを煙のように拡散しこっそりとバリアの中のマリスの後ろにプラーナポータルで空間を繋げてファミリアを送り込む。
エクステンドアームズがバリアをガッシリ掴む。
そして、李は一気撃滅で気を纏い、防御も攻撃力も上げ、も無垢のガッダの力を解放し、優理が開けた穴を潰すかのような強力な一撃がバリアに命中する。
バリアの破壊は厄介だと思っていたブランクエクスプローラーメンバーは、バリア破壊というよりも、一点からでも突き通してマリスに攻撃を仕掛ける事。
エレナが錬成【泥の手】をマリスの足元から出現させて、彼女の身体を掴み、ヒューミディファイアでそこに潜んでいたファミリアが拘束する。
隠密行動、カメレオンチェンジでテュポーンや鉄壁の影に潜んでいた綾瀬が、ファルコンダガー【FA1】と融合し上げたスピードで、さらにイラプションブロウによる猪の力で目指すは、李が突き刺した無垢のガッダの槍。
ガッ!!
深くバリアの中に入り込む。
それを見たエレナは、ファミリアフライハイトによる攻撃をマリスに。
そして、綾瀬がアブソリュートアライブによる連撃を、槍にマリスに届けとばかりに攻撃する。
「研究者として、そして母親としてマリスさんは超えてはいけない一線を超えた。なら、間違ってるって教えてあげないと」
妹尾 春那は、バリアアップデートを
夏輝・リドホルムと自分が身につけている道具に掛けて参戦していた。
ファミリア【レベル3】を連れている妹尾は、自分が持っていた遠隔操作ができるファンタスティックギア【FA3】を夏輝の足につけた。
コールドリーディングで敵の動きを注意深く見、遠くから夏輝の安全を祈りつつ、彼の動きのスピードアップはもちろん、敵に囲まれて身動きできないような事態からも回避させていく。
「実子すら弄ぶ狂気、最早捨て置けん。メロディア嬢やテュポーンは他の者に任せ、過去の邪悪を断つ」
ブランクエクスプローラーのメンバーの攻撃に続くのはGEファミリア【レベル5】を連れた夏輝だ。
ノヴァリアクター【FA5】でテュポーンを牽制しながら、バリア近くまで接近していた。
「いっけぇ! 夏輝!!」
遠くから、応援する妹尾の声が聞こえる。
メビウスリング【レイジングレイ【FA5】】で強烈な閃光を出す光の柱をいくつか発生させ、テュポーンはもちろん、マリスの視界をも眩ませる。そして、バリアには負荷をかけていく。
* * *
「ファミリア、ラッシュです! ひたすらバリアを殴ってください!」
トランスでファミリア【レベル3】との結びつきを高め、魔法攻撃力を上げた
セラフィ・アウイナイトは、一心同体で防御力を上げつつ、パストショット【FA2】でファミリアを銃弾を巻いた人型のメカの姿に変え、マリスに攻撃する。
バストショットの攻撃は拳のラッシュだ。弾幕のように激しい攻撃。
「バリア破壊まで、もう一歩だ!」
エリル・アライラーがテュポーンの動きを先の先で読み、錬成で鉄壁を作り、レーザー光線からも皆を守るように壁を作る。
ホライゾンキャリバーを手に、アームディフェンスで仲間達がレーザー光線の餌食にならないように動く。
(追尾する物は回避を考えない方が良い。受け流した物も、しっかりと床や壁に当てなければ)
受け流す方向も考え、エリルは剣と鉄壁で仲間達を射撃攻撃から守り抜く。
ファミリア【レベル4】を連れた
イリーゼ・ユークレースは、シールドタブレット【FA3】でファミリアを1m四方の半透明のエネルギーシールドに変え、一度の攻撃には耐えられるようにしておく。
蒼炎の生存本能を持ち、冷静沈着な彼女は瞬間記憶で現状を記憶する。
コールドリーディングでマリスの動きを注意深く観察し、バリア発生装置はどこか――手元か、音声で認識しているのか――。
鋭刃のルーンをキルドレのメンバーの武器に付与し終わった
Agent・Eは、役目は終ったとふーっと息を吐いた。
そして、旅立ちの歌を唄いだす。
テュポーンの活動を抑制する力があると言われている歌だ。
(ここは分岐点。旅立ちと別れの場。ここから旅立つ皆さんの為に、二つの世界に向けて)
「――歌は心、心は歌――明日へと羽搏く為の旋律(ツバサ)を、今!」
(歌に意味は無くとも、力は無くとも。繋がる心に、
それは有るから――!)
「この歌で立ち上がるすべての人が、ボクの力です――!」
旅立ちの歌の効果がデュポーンに影響を及ぼしているのをふっと
アイン・アイトヴァラスは微笑んで見て、ラムバイクのハンドルを回す。
こういう狭い場所でバイクを乗り回すには、そういう技術を持っている人はいるが生憎とアインは持っていなかった。
しかし。
たとえ、技術が無くともやりようによっては、どうにかなると友人達にその実績と話しを聞いている。
物が乱雑に散らかっている部屋の中では無理だが、天井などの広い場所であれば技術がなくても走れるのではないか。
バイクのスピードの勢いで天井を走る技術はないが……。
「んっ!!」
激化の代償で筋肉を強制的に膨張させればバイクは持ち上がる。
そのまま空中戦闘で宙に浮き、天井へと車輪を押し付け――途端に走り出すバイクにアインは腕をとられるが、気合を入れて手に力を入れる。
技術は無くとも力はある。
取れ易いのが難点だが、もう一本の腕、エクステンドアームズもある。
方向だけなら、腕力でなんとか――――!!
次なる衝撃には、硬直皮膚によって皮膚も硬くなっている。堪えられるはず。
がくり、とバイクが天井を離れバリアに突っ込む瞬間、アインはコークスクリューで捩りを加えて真っ直ぐにバリアへと突っ込んだ。
どあぁかあああぁぁんっっ!!
イリーゼは、すでに鎖で捕獲している特異者とは違う方向から、シークエンスチェーンによる鎖を具現化しマリスを捕獲する。
全く身動きする様子のない彼女に不安が煽られるが――攻撃が当れば問題ない。
「主様!!」
セラフィが
桜・アライラーの為にファミリアタクトで聞く者の活力をみなぎらせるというリズムを刻む。
そして、すかさずファミリアをヒートネクローシスで高温にし、マリスへと付着させる。
ビンッ!!
セラフィのファミリアが弾かれたのを、イリーゼは見た。
不安要素はあるが、ここまで来たら攻撃のみ。
「思いっきりやっておしまいなさい!」
霊技【イノセント】、手向草【バトルサポートユニット】で身体能力を上げ、攻撃力を上げた桜は幻影の翼で光を屈折させ、自身の位置を誤認させつつ真っ直ぐ突っ込んだ。
「子供が一番でない親なんて腐る程居るからそれ自体はどうでもいい。
だけど――お前のしてきた事の、報いは受けろ」
激化の代償で腕や脚の筋肉を強制的に膨張させ、強力な一撃が放てる状況で、尚且つ、腕と脚部に装着するB2B【ダストトゥダスト】――切れ味抜群の巨大な爪が伸びた鋼鉄をも容易に断つ切断力を持つその爪で、マリスを切断する。
――――したはずだ。
「すごい威力だわ……!」
しみじみと呟くマリスの表面から、パリーン、と音を立ててバリアが破壊された。
「それとも、バリアの防御力が足りないのかしら」
後ろから桜を呼ぶイリーゼの声に、桜はマリスから飛び退いた。
レーザー光線が、彼女の周りに纏わりついていた鎖を破壊していく。