■心伝える■
(メロディアの意識や自我がもっと強かったらマリスの力を乗っ取れないかしら? 現世では抵抗してますしね。
テュポーンを制御できれば、現世にも可能性が見えるわ。だからメロディアの心を強くしにいくわ)
「マリスに抵抗するときの心の支え……思い出を私達でつくるのよ」
一浜 ローゼットの言葉に、協力する他のメンバーは大きく頷いた。
メロディアとマリスの間に
激越の盾が憂戚の大盾を構えて走りこむ。
「ふふふ、それじゃ、メロディア。運動しましょうか」
楽しげに笑うマリスは、激越の盾から距離を置き、様子見に決め込んだようだ。
あまりメロディアと戦いたくなかった特異者にとって有難い展開ではあるが、メロディアが戦いたがらないとは限らない。
メロディアの手刀が激越の盾を襲う。
倒れる激越の盾はマリスが張ったバリアに支えられ、体勢を整え、マリスから目を離さない。
一浜 華那他が月華【クレセントフォール】を手に、激越の盾とメロディアの間に入り込み、アームディフェンスで攻撃を防ぐ。
妙に重い一撃だが、アニマルローブ、バトルサポートユニットで身体能力を上げ、硬直皮膚で防御力を上げ、受け止めてみせる。
「やっぱさ、女の子が傷つくのは駄目だよね。いや、男の子でもダメだけどさ。だからまぁ、止めてあげないとね?」
シックスセンスで何か隠されてないかと直感力を働かせるが、今の所何もないようで安心だ。
いざとなったら肉盾手段も! と、華那他はメロディアの動きを注意見つめる。
「幼い子を利用、というのはまぁ、倫理に問題があるといいますか。
いえ、今の私も見た目は幼いわけですが……。まぁ、私は私にできることをやるとしましょう」
ファミリア【レベル1】を連れた
アストルム・アエクイタスはホライゾンロッドを握り締め、<盾>★2で後衛にいる皆の守りにつく。
サバイバルセンスが、マリスだけではなくメロディアとの戦いも激しいものになると告げている。
クールアシストで冷静沈着に現状を見極め、デフラグメンテーションで情報整理していく。
ハイドアンドシークで気配を殺しメロディアの近くへと移動する
一浜 希だが、アストルムの情報で迂闊に近付くのはマズイと理解している。
(子供を利用するのは最低、だな。でもまぁ、それなら助けるのも人情かな――っていっても傷つけずに、って言うのは難しいと思うけどねぇ。んー……まぁ頑張ろっと)
メロディアの虚ろな目。
「ま、メロディアは悪くないしねー」
メロディアを傷つけず確保したいという仲間の気持ちが物凄く解るだけに、希もなるべく傷つけず――攻撃を無防備に一身に受けてしまうだろう仲間の援護と。
メロディアの背後を確認した希は、プラーナポータルで空間を開け、そこに腕を突っ込んだ。
がくん、と腰を掴まれバランスを崩すメロディア。
武術の心得により、メロディアの攻撃等に警戒しつつ、大きく腕を広げ彼女に抱きつくローゼット。
硬直皮膚で防御力は上がっている。シルバーチェイン【アーマーチェイン】も身体に巻きつけている。
多少は、攻撃受けても大丈夫だろう。
「……敵じゃないわ」
静かにそう囁く。
エマージェンシーとサバイバルセンスを働かせ、危険や死に対し敏感に神経を張り巡らせながら、
レイド・ケイオスもメロディアに近付く。
(過去のメロディアにとってまだ優しい母親かもしれない。親孝行で研究に志願した可能性もあるから、否定はできないな)
まず敵意はない事を示す為、手に救急セット、ホットチョコレートを彼女にみせる。
虚ろな目のメロディアは、それが何なのか理解できないように、その瞳にそれを映す。
「何かしたい事はないか? 楽しいか? 苦しくないか? 好きな物は?」
心に響くようにと、ゆっくりと言葉を紡ぐレイド。
しかし、メロディアは無。何の反応もなく、聞いているかどうかも不確かだ。
どすっ!!
鈍い音をたてて、メロディアがローゼットを吹き飛ばす。支えるレイド。
すぐに戦闘態勢を整えて、ローゼットは悲しげに彼女を見つめた。
心に言葉が届かない――――!!
ローゼットの肩に手を置いた希は静かに首を振る。
ファミリア【レベル2】を連れてた希は、皆の絶望を吹き飛ばすかのようにファミリアタクトでファミリアに力強く心地よいリズムを刻ませた。