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亡界のロストチルドレン~完結編~

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亡界のロストチルドレン~完結編~
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 ファラン守れ 2

「まさか本当に、こんな真正面から来てくれるとはね」
 【エコーロケーション】で暗殺者の接近に気づいたシーラは、胸元のペンダントを高く掲げる。
「貴方の目的はペンダント? 家が壊れるのが嫌だから、やり合うならここでやりましょ?」
 【カモンベイビー】で暗殺者を挑発するシーラ。
 無論、暗殺者からの返事はない。
 しかし次の瞬間、突然シーラのペンダントが鎖ごと引き千切られた。
「――っ!」
 ナイフの刃先が当たったのか、シーラの頬に血の跡が赤い糸のように浮かび上がる。
「シーラ姉!!!」
 飛び出したディックは、【エコロケーション】で敵の位置を探りながら、【シールドタブレット【FA3】】で攻撃からシーラを守る。
「万が一本物だった場合を考えてこちらにも人を回したんでしょうね。
ただ、反応を見る限り、他に敵はいないようです」
 【エコロケーション】で得た情報を元に、ラシェルはそう分析する。
 三対一であればこちらが有利。
 そう見て取ったラシェルは、【隠者の歯車】で攻撃を仕掛けようとしたが、ディックの「シーラ姉!」という、悲鳴のような叫び声にラシェルは攻撃の手を止める。
「どうしました?」
「シーラ姉が!!」
 見れば、ディックの背後でしゃがみ込んでいるシーラの息が酷く荒い。
「毒ですか……。今すぐに治します!」
 ラシェルの【ピュリファイストリーム】に触れ、シーラの体から毒素が抜けていく。
「大丈夫ですか?」
「うん。敵は?」
「ペンダントだけ持って逃げ出したみたいだよ」
 ラシェルの問いかけに頷いたシーラに、ディックが答える。
「追いかけましょう!」
「待って! 来るわ!!!」
 建物の中に入ろうとラシェルを、【エマージェンシー】で敵の気配を察知したシーラが引き止める。
「テュポーンの群れ……呼ばれて来たんでしょうか」
 暗闇の中に蠢くテュポーンに、ラシェルは息を飲んだ。
「ここで食い止められる限りは食い止める!」
 シーラは【プラズマリング】の光量全開で目くらましを仕掛ける。
「シーラ姉には近づかせないよ!」
 ディックは【シークエンスチェーン】でテュポーンを拘束し、そこに【プラーナボム】を放つ。
「ここから先には行かせません!」
 ラシェルは【ファフロツキーズ】で広範囲に攻撃を仕掛け、三人は全力で、テュポーンをここで足止めするのだった。
 
 ***

「やっぱりテュポーンも出てきたか」
 【ファミリア【レベル2】】のキョクを使用して、水瀬 悠気は【チャネリング】で仲間たちに警戒を促す。
 外に現れたテュポーン以外に、既に建物内に侵入しているテュポーンの気配もある。
 悠気は【グロースリンク】で【ファミリア【レベル5】】のシキを纏い、【Azurite Suit】で治癒力を上げ、ファランの傍で神経を研ぎ澄ました。
「隠れても無駄だ」
 紅紫 司は、【ファミリア【レベル2】】で室内のテュポーンを探知し、【誘引のファミリア【レベル1】】で誘い出す。
 保護色を使って、背景に溶け込むように潜んでいたタコ型のテュポーンが、匂い誘われ、その姿を現した。
「視界は僕が確保します! 存分に戦ってください!」
 御伽 了は【ライトオブノウレッジ】で光源を作り出し、仲間たちを支援する。
「助かる」
 司は【ブレードマスケット【FA1】】をファミリアアビリティで融合させ、【フェイクモーション】を使い、テュポーンの死角から触手をブレードで斬り落とす。
 【アームディフェンス】と【打払】でテュポーンの攻撃を弾きながら、ファランの場所から遠ざける。
「目に見えなくても…動きは分かってるんだ!」
 【チャネルオブワンダー】でテュポーンの動きを先読みした悠気も、敵の攻撃がファランに届く前に、先制攻撃を仕掛ける。
 ファランの防御は、ルーメ・エルントが引き受けた。
 ルーメはドラゴンフライの【エコロケーション】で得た情報を逐一受け取り、【エクスキューショナ】を【アームディフェンス】で盾代わりにして、攻撃を防ぐ。
「何としてもペンダントを守り切って未来を繋ぎたいのよ……わたしは」
 ルーメは攻撃を防ぐやいなや、【アーマーチェイン】の鎖を投げつけた。
 そこに、エルウィン・フローリエが、【永遠のトロイメン】を仕掛け、拘束したまま眠らせる。
 エルウィンの親も研究者だ。
 ランファの両親に、つい自分の親を重ねてしまう。
「おかーさん……エル守りたいよ」
 エルウィンは、母の姿を思い出し、呟く。

「思いがけない反撃に、手段を変えたか……」
 【蒼炎の生存本能】で、敵のファラン殺害の手口を熟考していた四柱 狭間にとっては、テュポーンの投入も予想通りと言った所だ。
 狭間は【紅炎の生存本能】も併用し、【ボーンウェポン】の突きで、テュポーンの攻撃に反撃する。
「受け取れるはずだったペンダント……。
今度こそ受け取れるようにしないとだね」
 黄瀬 春香は、ファランの周囲に【聖域】を張り、ファランに付かず離れずの位置から敵の迎撃に集中する。
 【火風のプラーナ結晶】でファミリアを火属性に変え、【アブソリュートアライブ】でテュポーンたちを遠ざける。
「既婚者とは言え、レディを守るのは私の流儀よ。
たまには人様のお役に立ちましょう」
 宵街 美夜はファランのすぐ傍で【聖域】を展開し、そこでテュポーンの反応を待つ。
「この聖域はさながら蜘蛛の巣……いらっしゃい」
 美夜は、聖域に触れたテュポーンに、【ブラッディブースト】で速度を上げた、【黒剣“黒き嗜虐の花園”】による高速突きをお見舞いする。
 
「テュポーンが家中に入って来たそうですよ。
廊下を守護するよう、指示されました」
 想那からの通信を受けて、朝霧 葵は、黒杉 優に言う。
「トラップも発動しているようね……行きましょう」
 【感応】と【CHファミリア】で強化された五感と六感を研ぎ澄まし、優は敵の気配を探る。
 合流したのは、既に寝室に繋がる廊下に待機していたセナリア・ロイルディースと、アルト・エンフェリアだ。
 四人は、部屋に迫った二体のテュポーンと戦闘を開始する。
「ここは必ず守り切りましょう!」
 葵は【インスパイア】で皆を奮い立たせると、【千斬鋼】でテュポーンに斬りかかる。
「一気に終わらせます」
 葵は【エリキシル【FA2】】で自身をイノシシの姿へと変化させ、身体能力を高める。
 敵に突撃する葵に合わせて、優も【不可視の一撃】を撃ち込んで行く。
 テュポーンの体力を削り、動きが鈍って来たところで、優は【ミスティカ【FA2】】で一時的に能力を引き上げる。
「これで仕留めます」
 優は【ファミリアラストモーント】を放ち、テュポーンの体を真っ二つに斬り裂いた。

「あの子達の選択の先に何が有るのか、私は知りたい。
だから、全力でサポートするわ!」
 セナリアは、【ハーピーの涙【FA3】】でファミリアをハーピーに変化させると、鉤爪でテュポーンに攻撃させる。
 一方で、自身は【エネルギシールド】を展開し、ハーピーの攻撃によって出来た隙を狙って、攻撃の機会を伺う。
 アルトは、【マクロプースナックル】で拳を強化し、テュポーンとの接近戦に挑む。
 フックやジャブにレイザーエッジを交え、小刻みな攻撃でテュポーンの動きを制限することを心掛ける。
 セナリアの放ったハーピーも絶えずテュポーンに攻撃を加え、鉤爪でテュポーンの触手をもぎ取って行く。
「過去を変える事は並の事じゃないよ。
でも、それを成そうとしているのなら、わたしはそれを手伝いたい!」
 アルトは残り少なくなったテュポーンの触手を【アームディフェンス】で弾き、蠢く触手の伸びる本体を顕わにする。
「見えた……!」
 アルトはファミリアによってカンガルーに変化した尻尾をバネにして強く踏み込み、テュポーンの腹に全力の拳を叩き込んだ。
「これで終わりよ!」
 アルトの攻撃で動かなくなったテュポーンに、セナリアが【ファミリアカノーネ】を放ち、テュポーンは跡形もなく消え去った。

 ***

 しばらく、残りの暗殺者がいる可能性を考え待機していたが、暗殺者が来ることはなかった。

「生きてる……わね」

 ランファは穏やかな寝息を立てる母親の呼吸を感じ、ほっと安堵の息をついた。
「ママ……きっとパパも無事よ。
 皆が守ってくれた……だから……」
 言いたいことは沢山あるような気がした。
 けれど、上手く言葉に出来ないし、ここで言っても仕方のないことだ。

「さようなら……」
 離れ難い気持ちを振り切って、ランファは危機の去った静かな寝室を後にする。

「……待って」

 突如聞こえた声に全員が身構え、後ろを振り返る。
 そこにゆっくりと起き上がったファランの姿があった。

「あなた……ランファよね?」

「えっと……その……」

 しどろもどろになるランファを、ファランは優しく抱きしめる。

「どうして大きくなったあなたがここにいるのかはわからない。
 でもあなたがランファということはわかるわ。……おかえりなさい」

 母の胸の中でランファは小さく「ただいま」と呟いた。
 そこへ父であるラオシュンも帰ってくる。

「事情は道中で聞いた。ランファ、このペンダントが必要なんだろう?
 時間がないから、よーく聞いて。

 中に入っている僕達の写真を外すことでプラーナを集める。また着けることでフタができるんだ。
 あとタイマー設定が可能で、何分後にプラーナを放出する、ということが可能だ」

 その説明に頷き、父親たちはランファにペンダントを渡そうとする。

「ううん、いいの。そのまま大事に持っていて。
 そして小さな私にペンダントを渡してあげて、お願い」

 ランファに懇願され両親はわかったと返事をした後、ランファの両頬にキスをした。

「代わりこれくらいしかあげられないが……」

「がんばるのよ、ランファちゃん?」

「……うんっ」

 新たな思い出と共にスポットから現世に戻ったランファ。
 そしてそのポケットには、念願のロケットペンダントが入っていた。

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