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亡界のロストチルドレン~完結編~

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亡界のロストチルドレン~完結編~
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 ラオシュンを守れ 3

「緊急事態だ! まだ残っている者たちは速やかに退避するように」
「何かあったのか……?」
「よくは分からないが、外部からの侵入者による殺人があったらしい」
 おずおずとデスクの下から這い出て来たラオシュンに、顔なじみの研究員が応える。
「殺人!? それは物騒だな」
「ああ、この部屋も調べさせてもらうことになる」
 そう言う彼に続いて、複数名の研究員が部屋に入って来る。
「念の為持ち物検査を……」
 進み出てきた研究員が、ラオシュンの手を引こうとした、その時――。
 
「見つけましたわ!」
 研究員たちの後から飛び込んで来た西村 瑠莉は【翡翠蒼天】で素早く身を翻すと、ラオシュンに伸ばされた手を斬り付ける。
 すると斬り付けられた研究員は白衣を脱ぎ捨て、姿を消した。 
「危ない! ラオシュンさんを早く!」
「えっ?」
 瑠莉の声にいち早く反応したコトミヤはラオシュンを突き飛ばし、彼の代わりに敵のナイフをその身に受ける。
「これは……、毒、か……」
 強化した体に直接のダメージは大してないが、小さな傷からジワリと広がる痺れにコトミヤは膝をつく。
「次は食らわねえよ!」
 璃佐は【ファニー召喚】でファニーを喚び出し、風のシールドでラオシュンの周囲を覆う。
「どこ行きやがった!!」
 璃佐は咄嗟に敵を探すが、白衣の下に着込んでいた光学迷彩服で背景に溶け込んでしまった暗殺者を目で捉えるのは難しい。 
 だが、視覚に頼らなければ、その位置を把握することも可能だ。
「そこでございます」
 【生命感知】で潜む敵の存在を察知した瑠莉は、暗殺者の位置を特定し、【贄姫】の衝撃波を放った。
「見えたぜ!!」
 璃佐は瑠莉の攻撃した方向へ突進し、【猛き炎の剣】で猛然と暗殺者に斬りかかる。
 激しく刃を打ち合うが、やはり自身の目で暗殺者の動きを追えていない分、璃佐の動きが鈍る。
 背景に身を隠した暗殺者によって、常に死角から繰り出されるナイフに腕を抉られ、璃佐は咄嗟に手のひらで傷口を抑えた。
「くっ……意識が――」
 刃に仕込まれた強力な毒は、即効で璃佐の正気を奪っていく。
「畜生……ここで、倒れる訳にはいかねえよ。
親子の再会位、無事にやってバチなんか当たらねえよ!」
 璃佐は朦朧とする意識の中、【酔撃】で攻撃を続ける。
 璃佐の不規則な動きに気を取られている暗殺者の隙をついて、贄姫を構えた瑠莉が素早くその背後に回り込んだ。
「これで仕留めますわ!」
 瑠莉の刃は、そのまま暗殺者の胸を貫いた。

「他の方たちも逃げてください~
ここにいると危ないですよぅ?」
 何が起きているのか分からず、呆気に取られている研究員たちに、東河 茉侑が言う。
 けれど、茉侑の顔を見た研究員たちは、皆一様に顔を引きつらせ、悲鳴を上げて逃げ出した。
 なぜなら、彼らが見た死体こそ、【フェイクデッド】で死んだふりをしていた茉侑だったからだ。
 瑠莉、茉侑、、アコニット・エクレレールの三人は、研究員たちの中に暗殺者が潜んでいると考え、闇に乗じて一つのトラップを仕掛けた。
 研究所の照明が復旧した時、茉侑は死んだふりで研究員たちの動揺を誘い、暗殺者の炙り出しを計ったのだ。
 瑠莉は【直感のファミリア】の力と【超直感】で、不審な動きをする者がいないかを探り、アコニットも【コールドリーディング】でその場に居た研究員たちの反応を伺っていた。
 怪しい相手に目星をつけ泳がせていたら案の定、この研究室へと姿を現したという訳だ。

「おっと、あなたは逃げちゃ駄目よ」
 逃げ出した研究員の中の一人に向けてアコニットは【ステイシスライトニング】を放つ。
「あなた、どこから入り込んだのかしら?」
 殺人現場からここまで、居合わせた研究員たちの顔ぶれは把握している。
 その時見かけなかった顔があれば、それはこの部屋で紛れ込んだ者であるということだ。
「くっ……」
 しかし痺れには若干の耐性があったらしい。
 暗殺者は震える手を口元に持っていくと、ありったけの力で指笛を吹いた。
「何? 外から――」
 音を合図に窓が割れる音がして、テュポーンの群れが室内へと雪崩込んでくる。
 窓の方へと皆の意識が逸れる中、騒動に紛れて暗殺者は再び姿を消す。

「――新手か!」
 窓の警戒に当たっていたヴァイパーパーカーは、【エマージェンシー】で察知した危機をロイへと伝える。
 ロイは、咄嗟に武器を構え、【アームディフェンス】でテュポーンの触手を弾いて、身を伏せた。
「近くにいるぞ、構えろ」 
 慧斗の【チャネリング】で指示を受けた櫻 玲は、ラオシュンの前に立ち、【チャージ】で力を溜める。
「必ずわたくし達が守りますので安心して下さいな」 
 玲はラオシュンを安心させるように微笑むと、【ダストバースト】で迫るテュポーンを一気に薙ぎ払った。
「ランファさんのお父さんを守る――そのためならなんだってするよ」
 平原 静乃は【サンラクシャン】で、テュポーンから気配を隠し、他の特異者たちとの戦闘に気を取られているテュポーンの背後に忍び寄る。
 そうして、一体一体確実に、【E.P.S.】で攻撃を加えていく。
「数はそれなりだが、強さはそうでもねぇ。
とっとと片付けちまうぞ!!」
【アブソリュートアライブ】で敵を蹴散らしながら叫ぶロイの声に応じ、戦いは総力戦となり、室内のテュポーンの群れは特異者たちに一掃された。 

 ――一方、排水溝の出口では。
「瑠莉たちは上手くやってくれたようね」
「ああ。お陰で逃げる鼠を一匹捕まえた」
 由梨は【トータスガントレット【FA3】】で殴りつけた暗殺者を床へと転がしながら、壱与に言う。
 内部の戦いに乗じて逃げ出すつもりだったのだろうが、排水溝から外へと抜け出したところで、由梨のブービートラップにかかったのだ。
 命からがらと言った体で研究室を脱出したせいか、注意力も散漫だったのだろう。
 由梨達の前に姿を現した暗殺者は、酷く無防備だった。
「あちらも片付いたようだ。戻ろう」
「そうね」
 【聞き耳】で研究室の中を探った壱与はそう言って、由梨と共に研究室へと戻った。
 
 ***

「皆さんのお陰で私の研究は守られました。本当にありがとうございました」
 平穏を取り戻した研究室で、ラオシュンは皆に向かって頭を下げる。
「だったら、私たちのこと信用して、ロケットの使い方教えてくれる?」
 【指南書】の手引きを元に、ラオシュンに月音 留愛が事情を説明する。
 すると、ラオシュンはロケットの機能と使い方を丁寧に教えてくれた。
 そこで分かったことは、二つ。 
 一つは、中に入っているランファ一家の写真を外すことでプラーナを集め、また着けることでフタをすること。
 二つ目は、タイマー設定が可能で、何分後にプラーナを放出する、といったことが可能であるということだ。
「研究も大事だけど、貴方自身も大切にして。
 貴方が命を落とすということは、ランファさんが親を失うということなのよ」
 西村 由梨の言葉にラオシュンはハッと顔をあげ、何度も頷いた。

 こうして目的を果たした特異者たちは、ラオシュンに別れを告げ、研究所を離れたのだった。


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