「あなた達はいいわね。生きている今も……死んじゃうかもしれなくなっても、いつも周りに誰かいてくれる。一緒に戦ってくれる。ホントに、頭にくるわ……」
目を覚ましたエリーはそう言って悪態をついた。
周囲にはテュポーンの死骸が転がっている。
エリーの盾となった彼らだが、エリーに寄り添う存在ではなかったのだろう。
疲れきったエリーの目には、悲しい孤独の色があった。
「もういいわ、帰ってあげる。この世界はあんたら生きてるやつらで好きにしたらいいわ。……私はあんたらが作るとかいう別の未来で楽しくやるんだから、しっかりやんなさいよね」
そう言うと、エリーは姿を消した。
その横顔にキラリと光るものが見えた。
「サミシイ人デシタ」
ピュータはぽつり、呟くように言った。
素直に自分が負けたことや、間違っていたことをエリーがハッキリと認める事はなかった。
だが、ピュータはその姿に語らざる何かを見たようだった。
「ココニ生キ、生キタイトネガウ者達ガ未来ヲ決メルベキデアッテ、自分ガ押シ付ケテハナラナイ……エリーハソウ悟ッタノデショウ」
今ある世界で生きるのか、「皆が生きている別の未来を作り上げる」のか。
ブランクの未来を決める権利は自分にはないことを悟り、エリーはヨミへと帰ったのだとピュータは言った。
「世界は、このままだとなくなっちゃうの?」
戦いを終え、子供の1人が疲れ切った顔で鷺鴉メンバーに問うた。
「こうやって何度も何度も頑張っても、全部ダメになっちゃうの?」
彼らは黙って、重々しい表情で頷いた。
廃墟の向こうに、今までの戦いで死んだ子ども達の墓が見えた。
必死で生きようとし、しかし叶わなかった仲間たちの墓だ。
「死んじゃった皆も帰ってくるかもしれない……だったら、そのほうがいいのかな?」
もしも、失ってしまった物を取り戻せるのなら。
いなくなってしまった人たちともう一度笑い合えるなら……。
子ども達の中にそんな雰囲気が漂い始め、次第に子供達の争いは小さくなっていった