■プロローグ■
俺は世界が嫌いだ。
どの世界でも、どいつもこいつも外見で人を判断する。
いくら頑張ろうと、いくら良い成績を残そうと、外見で判断される。
だから、俺は世界が嫌いだ。
特異者として覚醒した時は、この上なく歓喜に打ち震えた。
俺はただひたすら力を求めていた。
強くなりたかった。
異なる世界の、異なるアバターを得ることで、強くなることが実感できる。
俺を外見で蔑んでいた奴らを見返して驚く顔がたまらなく最高だった。
“三千界統合機関”の一員になった時は、その崇高な目的に一も二もなく賛同した。
命を受けて神多品学園都市に来た時も、技術やアバターを奪ってから壊すつもりだった。
だが。
俺は会ってしまった。
あの人に。
生まれて二度目に、俺を外見で判断しなかったあの人に。
リージョン・ユニバースでも俺の扱いは変わらなかった。
目立たないよう実力や能力は隠していたが、それでも外見で目立つ。
そんなことは分かっている。
だから、俺は世界が嫌いだった。
でも。
あの人は違った。
周りがどんなに俺を蔑もうと、あの人だけは俺を庇ってくれた。
打算とか不純な気持ちは一片たりともなく、本心から俺を見てくれていた。受け入れてくれていた。
……こんな聖母のような女性がいるはずがない。
俺が引き離す態度を取っても、いくら罵詈雑言を浴びせようとも、純粋な瞳で俺を見てくれていた。
優しい言葉を掛け続けてくれていた。
……本当に女神や聖母がいるならば、あの人のような人なのかもしれない。
何時の頃からだろうか。
あの人をまともに見られなくなったのは。
輝いていて、眩しすぎて、俺とは住む世界が違う。
あの人はそんなことは関係なしに、俺の心の中にずかずかと入ってきた。
しかし。
俺はあの人の母親を殺していた。
そのことを知ったあの人は、怒ったり、悲しんだりすることはなく、理由を聞いてきた。
まるで許してくれることが当たり前のように。
俺はそんなあの人を殺すことが出来なかった。
生まれて初めて躊躇った。
炭素凍結という手段で封印したのも、この神多品を壊した後も、あの人だけは生き残って欲しいと思ったのかもしれない。
俺は世界が嫌いだ。
だけど、そんな心が残されていることに、俺自身驚いていた。
■目次■
1ページ プロローグ・目次
【3】リージョン・ユニバース防衛
2ページ 奮い立つ意志
3ページ 塗り潰される日常風景
4ページ 異世界の戦場
5ページ 騎士の在り方
6ページ 立志と初心
7ページ もう一度ここから
8ページ 私達の学校、私達の街
【4】ラ・デェス神多品防衛
9ページ ■五聖獣を集める場所/心を揺り動かす声■
10ページ ■五聖獣はラ・デェス神多品中にいるぞ!■
11ページ ■五聖獣を集めてどうるすの?■
12ページ ■急いで五聖獣を送り届けろ!■
13ページ ■何故、アウストラリスは単独行動をするのか■
14ページ ■レリーフを守れ! 万華鏡と戦え!■
15ページ ■避難民達を守るために■
16ぺージ ■暴徒達の洗脳は解けるか否か■
17ページ ■避難民と一緒に走って、守って戦う■
18ページ ■皆無事にシェルターまで誘導したい!■
19ページ ■歌って和ませよう/先の見解■
20ページ ■シェルター前で起きる混乱■
21ページ ■高崎恋歌を止めた■
【2】楯無高校防衛
22ページ 楯無高校を防衛せよ! 1
23ページ 楯無高校を防衛せよ! 2
24ページ 一般人を守れ!
25ページ 楯無高校の激闘 1
26ページ 楯無高校の激闘 2
27ページ 楯無高校の激闘 3
28ページ “戦旗”ファナティック争奪戦 1
29ページ “戦旗”ファナティック争奪戦 2
30ページ “戦旗”ファナティック争奪戦 3
31ページ “猛虎番長”猫沢の意地
32ページ サウザンドアイズの悪あがき
【1】アポカリプスの調伏を止める
33ページ 逃げ惑う観客達
34ページ 共に戦う者
35ページ 吉田規夫に与する者達
36ページ ゲリラライブ
37ページ 吉田規夫
38ページ 仲間と共に
39ページ 榛名の元へ
40ページ 調伏の阻止
41ページ 決着
42ページ ティアーズキャンパス
43ページ エピローグ