クリエイティブRPG

大和妖奇譚 ―妖魔行―

リアクション公開中!

 0

大和妖奇譚 ―妖魔行―
リアクション
First Prev  17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27  Next Last

八つの首の化け物 7


一方、紫御前たちは。

「へぇ、やるじゃねぇか。
あとは、こいつを倒すのみだ」
紫御前が、ヤマタノオロチの最後の首を前に言う。

「紫さん、俺も戦列に入るのでよろしくたのむ。
ヤマタノオロチは式神だが、伝説級の力で無いにしろ大妖級の力だろうな。
早急に調伏して、戦勝の宴で紫さんと一緒に酒が飲みたいものだ……」
【紫御前近衛隊】を自認する、
時雨 樹夜が、
紫御前に言った。
「ああ。こうも冷たい雨に濡れてると身体が冷えてしょうがない。
とっとと倒して、酒飲むぞ」
紫御前はにっと笑い、樹夜はうなずく。
樹夜のフェローのリヴァージュのバリスタが、
風の衣を樹夜にまとわせる。

「さて、最強の巫女の力見せてあげよう!!」
結城 しゅーりも、
【紫御前近衛隊】のメンバーとして、
清浄の光で、ヤマタノオロチに目くらましをする。
「時雨 樹夜!!
道は作ったでぇ~!
男をみせたれよ!!」

その隙に、嵐からの影響を減じて、
樹夜は、神懸りを行い、精神を集中させる。
そして、月弓 『月下美人』を引き絞り、
破魔の矢を放つ。

グシャアアアアアアアアアアアアアッ!

破魔の矢を眉間に受け、ヤマタノオロチが怒声を上げる。

「やったで!
これで、ついでに、オロチにリボン結んで、
可愛くする機会も……!」
「何を言っているんだ?」
どんな時も女装のことを忘れない、しゅーりに対し、
紫御前がツッコミを入れる。

猿楽面で、敵に不安や恐れの感情を悟らせぬよう、表情を隠している、
弦間 明士は、
紫御前の周りへと、
小結界を張る。
「自分は結界をなるべく維持します。
思う存分、戦ってください」
明士の言葉に、
紫御前はうなずいた。
「ああ、感謝する」

他方、【援護攻撃部隊】として、紫御前の援護のチームを組んでいる、
ピティエ・リズヴェリオ
アンジュ・フィルガスピアは。

「こっ、怖いですよう……!?」
「やれやれ……男なら潔く戦いたまえよ」
ピティエに、アンジュが肩をすくめてみせる。
「ここに、私の正義を示す!」
太刀を抜き打つアンジュに対し。
「うう、もう、仕方ないなぁ……」
ピティエが夜叉の仮面をつける。
すると、ピティエの弱気さはどこかに消え失せていた。

アンジュが紫御前の援護で、
ヤマタノオロチを攻撃している中、
ピティエがそれをフォローする動きを見せる。
「あーもう、アンジュ先輩、しっかりしてくれよ」
「むう、君にそのようなことを言われるとはな。
だが、彼女の本気の舞台、
私たちが作ってやろうではないか!」
アンジュは気を取り直し、
紫御前の支援を行う。

「皆、恩に着るよ」
紫御前が、着実に、
ヤマタノオロチとの間合いをはかっていく。

キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!

ヤマタノオロチは、最後の悪あがきのように、
酸の息を吐き散らし、
今、まさに、紫御前を飲み込むかに見えた。

次の瞬間に、
紫御前の動きを捕えられたものは、
そう多くはなかった。
いや。
ほとんど皆無というべきか。

ヤマタノオロチの最後の首が落ちる音が響き、
その直後、身体全体も地面に轟音と共に横たわった。
そして、一行は、いつのまにか地面に立つ紫御前の姿を見た。

一瞬の沈黙の後。

一同は歓声をあげた。
特異者たちは、ヤマタノオロチのすべての首を、
同時に落とすことに成功したのである。

ヤマタノオロチは、強敵であったが、
「八つの首を同時に落とす」という正しい戦略に気づいたおかげで、
勝利することができたのである。
紫御前であれば、一本くらいは容易に落とせるはずだが、
多くの特異者たちの協力がなければ、再生の隙を与えずに倒すのは不可能であった。

「ありがとう、これでひとまずは安心、といったところだ」
紫御前が、特異者たちに礼を言った。

倒されて動かなくなった、ヤマタノオロチの胴体に、
クロウ・クルーナッハたちが迫る。
「ヤマタノオロチといえば、尻尾の中に剣っ!
よーし、尻尾切るぞーっ!」
式神であることはわかってはいるが、
クロウは好奇心を押さえられない。

クロウのフェローの猫又も、
ヤマタノオロチを蒲焼きにするつもりらしく、
一緒に引き裂こうとしている。

「オリジナルではない以上は、お目当ての物がある率は低いと思いますが……。
承知しました。
やる、と言うのでしたらわたくしも微力を尽くしましょう」
クタアト・アポクリファも、
クロウの支援をすることにする。

クロウが、わくわくしながら、
ヤマタノオロチの尻尾を切り裂いてみるが。

「うーむ、やはり、何もなしか」
クロウががっかりした様子で言った。

ヤマタノオロチの尻尾からは、草薙の剣が出てきたりはせず、
式神であったヤマタノオロチの身体は、
消えていってしまった。


「こいつを操っていた奴がいたはずだが……。
やはり、これだけのことができるとすれば、
“鬼の陰陽師”、大嶽か?」

紫御前は、消えていくヤマタノオロチを見ながら、つぶやいていた。

First Prev  17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27  Next Last