序
突如暗雲が立ち込め始めた空を見上げ、人々は不安を隠し切れないでいた。
それなりの知識や素養のあるものなどは、その雲に不吉な徴を見ただろう。
そうでないごく普通の人間ですら、迫り来る禍々しい気配を、うっすらと感じ取れたくらいだ。
北では轟と落雷の音が鳴り響き、南では慟と暴風が吹き荒ぶ。
その正体は分からずとも、自分たちの身に危険が及ぶかもしれないことは容易に想像できた。
しかし、逃げ出そうにもどこに逃げれば? そもそも、逃げられるものなのか?
多くの人が村から離れることも忘れて戸惑いと恐怖の表情を浮かべる中、特異者たちは手分けして彼らを保護すべく、動き出した。