戦神、到着
「なあ蔭丸。妖魔は鵺って話じゃなかったか?」
馬に跨り、伊与から京へと全速力で駆ける
紫御前は、傍らの封魔流忍者
蔭丸を見やった。
「どうやら、新手が現れたようで御座るな。
……むしろ、こちらの方が厄介かもしれぬで御座る」
遠目に見えるのは、八つの頭を持つ大蛇。
古の記録にある、最悪の妖魔の一体。
「しっかし、蔭丸よ。この馬、誰の式だ?」
「生憎、紫殿にもそれは教えられぬ。そういう契約ゆえ……」
抗我忍ほど極端ではないが、忍者は契約を重んじる。
彼の口を割らせることは無理だろう。
「まあいい。おかげであっという間に京の町だ」
妖魔の姿が近づいてくる。
そして、それを囲むように集まる者たちの姿も見えてきた。
「へえ、勇ましいねぇ。それじゃ、あたしらも本気で行くとするか!」
紫、蔭丸の二人は、戦場に颯爽と現れた。