■プロローグ■
それは「何処か」の……そして、まだ「何時か」の出来事である。
「どうだ、調子は?」
聞き込みに回っていた
花菱 飾は、戻って早々、筆を走らせる
ドーウィン・トリスメギストスへと声をかけた。飾が傍にどすんと腰掛けても、顔を上げないままで「そこそこ」と答えたドーウィンは、墨の切れるのと同時に「よし」と息を吐き出した。
「とりあえず、一冊目は完成、と」
その言葉に、手元を覗き込んだ飾は、結構細かいな、と呟いた。
飾自身が、あちらこちらと周り、ドーウィンの言うとおり時には金銭による交渉によって得た様々な知識や情報が、そこには記されている。今、ドーウィンが書いているのは、妖魔についての知識や対策だ。“鬼”についても、少しではあるが触れられている。これが後々、自分や誰かの役に立つかもしれない、との思いで記されているそれが紐に閉じられていくのを見ていた飾は、ふと、卓上にもう一冊の本を見つけた。
「……それは?」
「ああ、これは――気分転換のようなものさ」
言って、ドーウィンが取り上げた本は、今まで書いていたそれと違って、情報書というよりは、日記、あるいは記録のようなものに近かった。ぱらぱらとめくった飾は、そこに見知った名前を見つけて、軽く瞬く。
「……これは」
その目線に、ドーウィンは目を細めて「たまにはいいだろ」と笑ったのだった。
そのタイトルは「大和妖奇譚――妖魔行―」。
その一頁目は、こう、書かれている――
■目次■
プロローグ
【4】序
【4】避難、開始
【4】妖魔の影
【4】迷子係
【4】怪我人の救出
【4】ひとときの安らぎ
【4】あの村では
【4】妖魔狩り
【4】京の避難所
【4】止まない雨はない
【5】真実を求めて
【3】戦神、到着
【3】偽りのヤマタノオロチ 1
【3】偽りのヤマタノオロチ 2
【3】八つの首の化け物 1
【3】八つの首の化け物 2
【3】八つの首の化け物 3
【3】八つの首の化け物 4
【3】八つの首の化け物 5
【3】八つの首の化け物 6
【3】八つの首の化け物 7
【3】大嶽
【5】十五年前
【1】縦横無尽
【1】止める、我が身に代えても
【1】この一撃は後に続く者の為に
【1】繋ぐ為の一手
【1】想いの力
【5】不知火
【2】山寺へ向かえ!1
【2】山寺へ向かえ!2
【2】山寺へ向かえ!3
【2】山寺へ向かえ!4
【2】山寺へ向かえ!5
【2】芦谷導満1
【2】芦谷導満2
【2】芦谷導満3
エピローグ