少女を救出せよ
とある小さな街に一人の少女が取り残されたという要請が講師の
フリードリヒからもたらされた。
これがGA:【アルファチーム】とGA:【ブラボーチーム】の初任務だ。
【アルファチーム】の
飛弾 理恵としては救出を行う上で敵がいると邪魔なので、味方と共に排除したいと口にしてはいたが、それは半分建前。もう半分は銃が撃ちたいから。
師走 ふわりが廃ビルの中にいる【混沌の獣がいる位置を割り出す】ためにタクトレポートⅠでスカウトドローンを飛ばす。
「相手の動きは阻害します。あとは遮蔽物を使いつつ攻撃しましょう!」
「狙撃は任せてくださいね(ああ、早く撃ちたい!)」
黒枝 ソラはこの中ではやや臆病な性格をしていた。
混沌の獣が怖くない訳じゃない。けど、深呼吸して覚悟を決めた。
「みんなの為にも、ここで食い止めよう!」
「ああ。教官の手を借りずに獣を倒してやろうじゃん」
アカデミーで学んで一人前になったことを証明することが、アカデミーへの恩返しになるはずと
美月 伊織が意気込む。
「教官。本当に危ない時以外は手を出さないでくださいね」
「そのつもりだ。そうしなければお前達が成長しないだろうが。生意気なんだよ」
「ヤクシャを見つけました。作戦通りホワイトスモッグを発生させます」
ふわりがヤクシャの姿を発見しホワイトスモッグを発射させる。
そしていの一番に飛び込んだのはあの臆病なソラ。
「この後は牽制に専念するよ。攻撃はみんなに任せた!」
ストレインで力を溜め、全身に気を張り巡らせオーバーモウィングを繰り出し、闇属性の魔法攻撃をしてくるヤクシャの攻撃からエネルギーシールドで仲間の盾になる。
伊織も負けじとブースターレッグで加速して接近、マシンブレードMK-Iでソニックスラッシュを撃ち、そのままヤクシャとすれ違って背後に回り込む。
そうしてソラと挟み撃ちにしてヤクシャの逃げ道も潰しておく。
遮蔽物の陰からは爛々と目を輝かせた理恵が手鏡などを用いて敵の位置を確認しつつ、位置を把握してはアサルトライフルでフロストノヴァの冷気を圧縮した弾丸を放つ。
更にベンドショットによるカーブ射撃で脚を狙い撃ち、機動力を削ぐ。
遮蔽から飛び出して直接狙い撃つことも考えるが、それは一か八かの博打になる。
見つからないことに賭けて背後から飛び出せばやはり闇属性の魔法攻撃が飛んで来るが、アテニュエイトシールドで防いでエアブラストでバランスを崩させる。
そこを押し込むように畳みかける伊織へソラが全力の応援を飛ばす。
「いっけぇぇーっ!!」
「これに答えないのは女じゃないんだよねぇ!!」
応援を受けた伊織はアイキドーで魔法攻撃を避けると、ブースターレッグの勢いをそのままにソニックスラッシュを叩き込んだ。
◇ ◇ ◇
コスモストランシーバーで少女を救助した旨を仲間に伝えるGA:【ブラボーチーム】の
ユークリート・ヴェスノーイ。
独りで心細かった少女が助かった際には泣かれてしまった。
「こんなところにひとりで……どんなに怖かったろう。よく頑張ったね。君は勇気がある。一緒に家族のところへ行こう」
「うん……」
蘭野 しずくが捜索している間は周囲を警戒しつつ、メディエーターゴーグルで少女が汚染されていないか確認し、治癒術で応急処置。
メディエータージャケットで包んで、抱っこしてアテニュエイトシールドを展開。
それには小さな少女の頬も赤くなってしまう。
「取り越し苦労で済んで何よりだ。来ることはないと思うが、もしも、があるのが戦場だからな」
万一、ヤクシャがこちらに来た時のことを考えて用心し、ユークリートと少女を護衛するように
夕薙 久遠は警戒しながら進む。
もしヤクシャが来たときは、大声を出しながらオーバーモウィングで攻撃してヤクシャの注意を自分に向けさせて足止めし、その間に少女とユークリート、しずくに逃げてもらうことも考えていたが、そんな一番最悪の事態は起こらず廃ビルから脱出することに成功する。
「使わないに越したことはないが、次に使うとすれば怖がってはいられないものな」
構えていた汎用型鉄剣を見ながら、久遠はひとり呟く。
今回は使わなかったが、次の使うとすれば本当の戦場となることは間違いないからだ。
「久遠さ~ん! ユークリートさ~ん! 蘭野教官~!」
その時、【アルファチーム】の理恵の呼ぶ声が聞こえてきた。
向こう側もことを済ませたのだと察した久遠だった。