オーバーチュア遺跡 1層
「まさか、駐屯地の近くから遺跡が見つかるとは思いもしなかったさ―」
「ホウライに移住してくれた領民が増えたからのようね」
団長の
リズ・ロビィと副団長の
今井 亜莉沙は、遺跡調査に集まった騎士団の面々を前に、今回の調査の趣旨について話し合っていた。
「古代の遺跡を調べれば、楽園シャングリラの歴史の断片が見つかるかもしれないな」
「ただ、そう悠長なことは言っていられないと思うんだ」
「というと?」
「先行調査で発見されたバルバロイですが、彼らが外へ出ないという保証がないのです」
「あ!?」
遺跡が見つかったことでワクワクしている
火屋守 壱星に対し、
壬生 杏樹と
川上 一夫は“遺跡の中にバルバロイがいることによる影響”の方を危惧していた。
「あたしも壱星と同じ考えだったさー。何か特産品や名物になるもの無いかねー? とか、この土地の歴史を探ってみたいさー♪ って。でも、それ以上にその内地上に出て駐屯地や領民に危害を加える可能性ある方が怖いのさー!」
「あたしたちの実力なら、主力を2層に回せばリズ団長が言うように何等かの成果は得られると思うの。でも、それだとバルバロイを取り逃がしてしまう危険性が高まるのよ。成果を得るより、領民や近くの入植民たちを守ることを優先するのがオーバーチュア騎士団よ!」
二人の言葉にリズはいつものひょうひょうとした態度は崩さないものの、力強く頷いた。
そして亜莉沙がそうまとめると、壱星は納得がいったように「そういうことなら任せてくれ!」と元気よく返事をし、杏樹と一夫も頷いたのだった。
「オーバーチュア遺跡ローラー作戦開始なのさー!」
出発の音頭を取ったリズは、杏樹の空艇“蒼鷹竜”【シュワルベWR】のステージに乗り、そこにマジックトーチを括り付けて光源を確保しつつ、色彩の筆【アーケン・シュバルツ】でマッピングを行ってゆく。
こちらの遺跡はファンタジーにあるような石を積み上げられて造られたような構造をしている。
「聞きしに勝る植物の蔓延り具合だな!」
「延焼と精神力に気を付けてね。バルバロイと戦う時精神的にへばっていたらシャレにならないわよ」
先頭を進む、コールクラークに乗った壱星が【火炎舌【星素】2】で植物を焼き払い、オーバーチュア【カリバーン】を纏った亜莉沙がスピットファルクスで切り払ってゆく。
「今回のバルバロイは注意した方がいいかもしれないよ」
「と申されますと?」
「
今まで植物に憑依していたバルバロイっていなかったんだよ」
同じく空艇“蒼鷹竜”【シュワルベWR】のステージに乗っていたマジックトーチを持つ一夫に、植物に関する知識を有する杏樹が告げた。もし、バルバロイに関する知識も有していれば、もう一歩踏み込んだ考え方ができたかもしれないが、こればかりはないものねだりかもしれない。
「!? 殺気だ! みんな注意してくれ!」
「ドラグーンソナーに感あり! バルバロイが周辺に5体いるわ!」
【殺気感知】を持つ壱星がバルバロイの殺気に気付くと同時に、亜莉沙のドラグーンソナーにもバルバロイの反応が現れた。
マッピングと時々スケッチをしていたリズは、春爛漫【【星音】8】を奏で始める。
リズの周辺に桜の花びらを舞い散らし、メインである歌姫に木漏れ日をスポットライトすることにより歌姫の歌に活力や連帯感を乗せる【星音】だ。
「銭のない奴ぁ 俺んとこへ来い 俺もないけど 心配するな 見ろよ 青い空 白い雲 その内何とか なるだろう」
そこへコブシの利いた一夫の黙って俺についてこい【【星詩】8】が乗り、騎士団員の背中を強く押す。
襲い掛かってきたのは、今まで壱星が焼き払い、亜莉沙が切り払ってきた蔦がバルバロイ化したバルバロイ・パインだ。
「蔦に後れを取るあたしじゃないわよ!」
「流石はアサリパイセン!」
「アサリじゃないし!!」
襲い掛かってくる蔦をローレライ・シールド<D>で弾き、【ホルファート流三連斬】を綺麗に決める亜莉沙。
隣では、コールクラークで遊撃的に飛び回り、飛雷剣を投げて亜莉沙のサポートを行う壱星が合いの手を入れ、それにもきっちり返す亜莉沙。
「!? 二人とも捕まってよね!」
【二挺携行】で空艇用圧縮空気砲【マギ・エアロランチャー<G>】とホルファートライフルの二挺を構えた杏樹が、【エスケープスナイプショット<G>】で天井から今まさに落下しようとしていた巨大な吸血ヒル、バルバロイ・リーチを回避しつつ、砲撃を叩き込んでゆく。
リズの【星音】の旋律に乗った一夫の【星詩】のサポートと、亜莉沙と壱星、杏樹の連携の取れた攻撃により、バルバロイ・パインとバルバロイ・リーチは粗方倒された。
「ドラグーンソナーにあたしたち以外の反応はなくなったわ」
「殺気も感じられなくなったな」
「これで1層は片付いたとするさー。みんな、お疲れ様なのさー」
亜莉沙と壱星の報告を受けて、リズが1層からのバルバロイの討伐官僚を宣言した。
「これで駐屯地の領民も安心して入植ができるといいな」
「ですが、まだ2層があり、バルバロイがいると聞いております。いずれは調査と討伐を行いませんと」
杏樹が言うように一難は去ったが、まだ2層が残っておりそこにバルバロイの存在が確認されている以上、油断は禁物だと、“勝って兜の緒を締めよ”とばかりに一夫が全員に告げるとリズたちは頷いたのだった。