鶏肉遺跡 1層
「こいつは驚いた。遺跡というから、もっとファンタジーファンタジーしている奴を想像していたんだがな」
「アークが裏テルスというのも、この光景を見るとそう実感できますわね」
松永 焔子が纏うシャムシールに、【ショックアブソーブ】を施しながら
キョウ・イアハートが雑談半分呟くと、焔子も周囲を警戒しながらそれに答えた。
“鶏肉騎士団”の駐屯地からそう遠くない場所で見つかった崖の下に隠れていた遺跡は、中は金属製の壁となっており、そこかしこにパイプが走るメカニカルな外観をしていた。
「ただ、もしこの遺跡が
マグナ・マテル関連のものであれば、明かり一つ無い時点でケチなのは確かですわね」
「言えてる。……うっし、できたぞ」
焔子が言うように、彼女たちの視界は二人が所有しているマジックトーチによって確保されている。
もちろん、二人は無駄話をしているわけではない。【ショックアブソーブ】をシャムシールとキョウが駆るシュワルベWRdreiの二機に施すには相応の時間が掛かるからだ。この間にも遺跡に入り込んでいるであろうバルバロイたちは移動している可能性が高い。
「この遺跡でその秘密の一端を垣間見れれば……」
「前線に近い遺跡とはいえ、そればかりは蓋を開けてみないことにはな」
焔子のシャムシールが前衛、その後ろをキョウのシュワルベWRdreiが飛行しているが、彼の元々の実力に加えて赫翼<G>のお陰もあって閉所であってもスタンドガレオンを難なく飛ばしていた。
曲芸飛行に近い感覚だろうか。
「!? 焔子!」
「心得ておりますわ! キョウ様はそのままツインカノン型を! 私は殺気がバレバレのサイレンサー型を!」
キョウが言うのとほぼ同時に、焔子は【バレルロール<D>】で飛来してきたフレイム弾を回避していた。
焔子はそのままシャムシールの特徴でもある尻尾で壁を叩き、急な方向転換を繰り返すトリッキーな機動でサイレンサー型へ肉薄すると、【烈火一払】で隠れていたサイレンサー型バルバロイを焼き斬った。
「【ショックアブソーブ】のお陰で出来るけど、後でパテで埋めて再塗装しねぇとかな、この擦り傷……」
キョウも【エスケープスナイプショット<G>】で回避と攻撃の両立を図りつつ、ライトニング・ロア<G>の雷弾をツインカノン型バルバロイへ叩き込んでゆく。
ここは遺跡の中である。横宙返りによってシュワルベWRdreiは少なからず壁と接触して擦り傷を作っており、彼は操縦に専念しつつ、どのようにメンテナンスしようか無意識のうちに考えていたのだった。
とはいえ、キョウと焔子によって第1層に入り込んでいたバルバロイは粗方片付いたのだった。