■プロローグ■
――リュクセール王国、フェゼルシア
ユーフォリア王女を乗せた馬車が、
エルツベルムへ向けて走っていた。
エイブラム王子の戴冠式に出席するためである。
馬車には他に
レノン家当主である
ウォーレスも同乗している。
シルヴィヤンカは同行していない。
ナイトアカデミーの学長はユーフォリア王女の叔父である
ジェイムス・レノンであるため、
彼や彼を慕う生徒が戴冠式で変な気を起こさないよう、ナイトアカデミーから移送されている。
彼女はそういったナイトアカデミーの生徒を助けるため、別行動を取っている。
「ウォーレス」
「何か?」
窓の外を見ていたユーフォリア王女は、合い向かいに座るウォーレスに声を掛けた。
「シルヴィヤンカが話してくれた、2人の王女だが、わたしとエイブラムもあのようになると思うか?」
「それはユーフォリア、お前自身が決めることだ。お前は聡明で物事の本質を見抜く力を持っている。多くの者の声に耳を傾け、自分で答えを出せ。2人の王女もそうして、それぞれが出した答えの一つだと、儂は思っている」
「わたし自身が決める事……」
8歳の少女には荷が重いかもしれない。
しかし、生まれ持った血筋は本人の意思とは関係なく、否が応でも運命への荒波へと飲み込んでゆく。
ユーフォリアは今、まさにその岐路に立っているのだった。
■目次■
プロローグ・目次
【1】戴冠式に参列する
1.王とは何か
2.それぞれの人物像
3.ユーフォリアの思い
【2】護送隊に陽動を仕掛ける
1.禍乱への牽制
2.アンキレー傭兵隊
3.プラハーダ傭兵団
【3】ナイトアカデミーの生徒を救出する
1.移送される生徒たち
2.初仕事
3.騎士の卵の矜持
4.更なる奇襲
5.騎士団と傭兵団(1)
6.騎士団と傭兵団(2)
エピローグ