・平和な日常の中で
「それじゃ、早速案内するよ」
「よろしく頼む。こうやってちゃんと見て回る機会、しばらくなかったからな」
「そんな改まんなくていいよ。さ、こっちこっち」
飛鳥 玲人は恋人の
リーゼロッテ・マルセイユと待ち合わせし、TRIALの本部棟へと踏み込んだ。
「これ渡しとくね。ガイド用端末。
大学のキャンパスとその周辺丸ごとこっちに転移してるから、結構な広さなんだ」
玲人は端末の画面に視線を向けた。
ワールドホライゾンほどではないが、TRIALも小さな街程度の規模はある。
ふと、玲人の目に危険区域を示す『ハザード』のマークがついたエリアが留まった。
「そこは技術部の区画だね。
機密扱ってるから関係者以外立ち入り禁止ってのもあるけど……それ以上に色々な実験もやってるから危険で刺激が強いんだ。
ジェシカ部長やキョウちゃんをはじめ、ここにいるのは一癖も二癖もある人たちだからねー」
「ああ、ここが噂の“魔窟”か……」
「あたしはそこまで気になんないんだけどね。
地球で考古学者として遺跡見回ってた頃から変な人たちと関わることは多かったし」
リーゼロッテの本職は考古学者だ。
現在は三千界の様々な世界に残る『“神々”の痕跡』を研究し、三千界における神代の歴史を紐解くことを目標としているとのことだ。
「普段は考古学者らしいことしてるんだな。研究室、良ければ見せてもらえないか?」
「うん、いいよ! まずは本部をひと通り見て回って、その後お茶でも飲もっか」
その時、リーゼロッテのスマートフォンが鳴った。
が、彼女は画面を見てそっとポケットに戻した。
「何かあったのか?」
「いや、いつもの。ちょっと一部騒がしくなるかもだけど気にしなくて大丈夫」
玲人は本部の食堂やラウンジ、ブリーフィングルームといった施設を案内してもらった後、リーゼロッテの紹介でTRIALの職員たちから話も聞けた。
アーキタイプの探索も続けているが、今はホライゾンのサポート、バックアップがメインであるという。
その後、玲人はリーゼロッテの研究室で談笑し、平和な時間を過ごしたのであった。