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納涼! 嵐のOMATSURIバトル!

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納涼! 嵐のOMATSURIバトル!
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■迷子センターも賑わってます【2】

「……ここは、迷子センターです? ……べ、べつに迷子になってなんかないですよ。
 ……人手が足りないです? ……お手伝いするですよ」
 シア・クロイツがぶんぶん、と首を振ってから、寂しそうにしている子どもたちに元気になってもらおうと、多くの人が知っている曲を歌う。ふわふわと浮かぶシャボン玉やはらはらと舞い散る桜の花びらに子どもたちが楽しそうに飛びつき、シアの周囲が段々と賑やかになっていく。
「……次はみんなも知ってるあの曲ですよ」
 前置きの後に流れてきた曲を、シアは子どもたちと一緒になって歌って楽しんだ。

「……聞いてくれて、ありがとうなのですよ」
 ぺこり、と頭を下げたシアが拍手を送ってくれたスタッフに意を決して尋ねる。
「……会場の出口って、どっちです?」


「あそんでたら、おとうさんおかあさんとはぐれちゃったのっ」
「そうでしたか。不安でしたし、寂しかったですね」
 目にうっすらと涙を浮かべた子どもの声を、小山田 小太郎が同じ目線に立って受け止め、温かな笑顔を返す。
「ここでも楽しい催しがあります、一緒に楽しみながらお父さん、お母さんの迎えを待ちましょう」
「……うんっ」
 涙を拭って笑顔を見せた子どもに頷き、立ち上がった小太郎が堀田 小十郎へ申し訳無さそうな顔をして言った。
「小十郎君達まで付き合わせてすみません……。でもどうか、力をお貸しください」
「そんな顔をしないでほしい、小太郎さん。
 我らもその気持ちは一緒だ……我らが演武でどうか力にならせてくれ」
 ガッチリと握手を交わし合う二人を、睡蓮寺 陽介睡蓮寺 小夜が見守っていた。
「なんつぅか、似た者同士だよな……小十郎と小太郎さんって」
「うん……」
 二人がうんうん、と頷いていると、小太郎と小十郎が振り返って苦笑を浮かべた。
「私たちのことを話しているように聞こえたが――」
「おーし、困ってる奴らに笑顔の花を咲かせてやろうぜ!」
「お、お歌を歌ってあげなくちゃっ」
 聞かれていたのをごまかすように、陽介と小夜が子どもたちの元へ向かう。
「ここからは小十郎君、頼みましたよ」
「ええ、小太郎さん」

「……そう、子ども相手、と軽んじてはいけない。笑顔を引き出すのは誰であっても一緒なのだから」
 白鳥の羽のように見える刀を抜き、構える。その動作はたとえ子ども相手であっても、一切の妥協なく。
「――ハッ!」
 大きな動きから繰り出すしなやかな剣捌きは、武術に詳しくない子どもでさえも視線を惹き付ける。アクションに応じて咲き乱れる花火は子どもたちを楽しませ、寂しい気持ちを一瞬にして吹き飛ばした。
「そおら、捕まえてみろぉ! でなければ攫っていってしまうぞぉ!」
 一方陽介は悪役を演じ、子どもを高く抱きかかえて連れ去るようなアクションを見せる。
「こらー! わるいことはいけないんだぞー!」
 勇敢な子どもたちが陽介に立ち向かい、陽介から子どもを奪還する。
「ま、まさかこの俺が――ぐわあぁぁ」
 子どもたちに追い込まれた陽介が床に伏せ、しかしその身体は咲き乱れた花火の中に消えた。
「よしよし……わたしと一緒に、お歌を歌おう」
 ギターを携えた小夜がそっと背中を押してくれるような歌を歌い、悲しい顔をしていた子どもの頭を優しく撫でてあげる。
「ありがとう、おねえちゃん」
 笑顔になった子どもに、小夜もつられてふふ、と笑顔になった。


「うわーん、パパー、ママー!」
 両親とはぐれてしまったのだろう子どもが声を上げて泣いていたが、突如その泣き声が止んだ。
「よしよし、泣かないで頂戴な」
 傍に寄ったノワール・ネージュが子どもをそっと抱きしめつつ、頭を撫でてあやす。ふわり、と暖かく柔らかなものに包まれた子どもは安らぎを覚えたのか、ノワールの中でスヤァ……と寝息を立て始めた。
「……なあに、その『信じられない』と言いたそうな顔は。私、これでも包容力はある方よ」
 背後でまさに『信じられない』と言いたげに立ち尽くしていた桐ケ谷 彩斗へジト目を向ければ、彩斗はバツが悪そうに顔をそむけた。彩斗が胸の辺りを凝視していたことは、ノワールにはお見通しである。
「意外だな、ノワールが子供好きとは」
「そうね、好きなのか、と言われると好きよ。だって、子供は可能性の塊だもの。今は美しくないとしても、美しく育つ可能性を秘めているから」
 その発言に、やはりノワールはノワールなのだな、と彩斗は納得する。それでも今のノワールは『本当に美人』であり、彩斗はいつもこうであったら……と無理な願いを心に抱いてしまった。
「さ、この子は私に任せて、彩斗はさっさと両親を探しに行きなさいな」
 ノワールが子どもに振り返り、まるで楽器を演奏しているような素振りと共に、聞く者を安らかな気持ちにさせる子守唄を紡ぐ。彩斗は聞いていたい気持ちを抑えて、子どもの両親を探しに向かった。


「フフフ、迷子センター上空は私、魔女ヴィルトールが支配したのだー!」
 魔女を意識したファッションで、空飛ぶほうきに跨って登場した空莉・ヴィルトールがくるり、と回ってみたり緩急をつけて飛んでみせながら、子どもたちの視線を集めていく。
「ちょっと! 何じっと見てるのよ!」
「な、何も見てないってば!」
 きわどい丈のスカートをひらひらさせながら飛んでいたため、男の子はついつい視線がそちらに行ってしまい、女の子に諭される光景があちこちで見られた。そして男性スタッフもチラ目で見てしまい、女性スタッフに肘鉄を食らってもんどり打つ。
「みんなに見てもらうのって、楽しいね♪ そーれ、もっともっと楽しんでいこー!」
 調子が出てきたように、空莉はほうきを上空に向けて勢いよく飛ばし、直後急降下する大技を繰り出して拍手と歓声をもらった。


「迷い子の為、三ヶ条の下参上!
 親しめる名前で・親身に・楽しく! この三つを常に心に抱けば、君も立派な騎士だ!」
「うーん、よくわかんないけど、カッコよさそう! おねえちゃん、僕がんばるね!」
「お、おねえちゃん……うぅ、イケメンに見えないのは致し方ないですか」
 子どもたちに騎士の何たるかを説きつつ、姫柊 葵依が遊びに興じていた。子どもを背中に乗せてのお馬さんごっこは彼の見た目に反して非常に安定した乗り心地を提供していたし、ダンスもしっかりエスコートを務めており、『イケメン』かどうかはさておき、『イクメン』であることは疑いようがなかった。
「おねえちゃん、またあえる?」
「ああ、きっと会えるさ。今日を一緒に過ごした友の証を無くさないように、大切にしてほしい」
 子どもの胸には、葵依も所属する『リトルフルール』の連絡先が書かれたバッジが付けられていた。いつか子どもが両親と一緒に、『リトルフルール』の公演を見てもらえたらいい、そう葵依は心に願うのだった。


「大丈夫、ママにここに来て、って伝えたからね」
「……うん」
 狩屋 恋歌がしゃがんで目線を合わせ、よしよし、と頭を撫でであげれば、泣いていた子どもがスッ、と泣き止んだ。
「撫でてみる?」
 そして子どもの視線が、連れてきた神獣ティラミスにチラ、チラと向いているのを見た恋歌が、ティラミスを呼んで子どもの前に差し出す。おそるおそる子どもの手がティラミスに伸び、額にそっ、と触れた。
「……あったかい」
「ふふ。この子はね、音楽も大好きなの」
 恋歌がギターから明るい童謡を演奏すると、ティラミスも楽しそうに一緒になってウタを紡いだ。それを見た子どももキャッキャ、と楽しそうに笑う。
「一緒に歌おう?」
「うん!」
 笑顔で頷いた子どもとティラミスと、恋歌の楽しい合唱が響いた。
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