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【まなびや・夏】まなびや船、抜錨!

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【まなびや・夏】まなびや船、抜錨!
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 変異体による襲撃がある少し前のことである。
 主砲の砲塔に腰かけたウォークス・マーグヌムは、
 エナジーゼリーともみじ饅頭を肴に、持ち込んだシャンパンをちびちびと飲んでいた。
 そこから少し離れた場所で、有機 魔王は対空機銃にもたれかかりながら空を見上げていた。
 甲板からはパーティを楽しむ特異者達の声や軽やかな音楽が聞こえてくる。

「今のところ、何事も無く順調で何より。だが万が一のこともある。
 誰かが気を張っていても良いだろうな」

 ウォークスはぽつりと独り言をつぶやき、独りの晩餐を楽しんでいた。
 だが。

「――お」

 不意に魔王は身構えた。
 空の向こうに黒い点がぽつぽつと浮かんでいた。
 ウォークスはすかさず砲塔に付属していた艦橋との通信機器のスイッチを入れた。

「こちら主砲・ウォークスだ! 敵の襲撃だ、すぐに指示をよこしてくれ!」

 直後に敵の襲撃はまなびや船に乗るすべての特異者達が知ることになる。
 魔王はブーステッドらしい戦闘意欲を口元ににやりと浮かべた。

「パーティなんかでじゃれあうより、やはりオレにはこういうのが似合うぜ!」





「安藤ツバメ、出るよ!」

 オレンジと白のカラーリングが特徴的なIFに乗り込んだ安藤 ツバメは、
 そのままUターンをするように甲板まで飛んでいき、ちづへと機械の手を差し出した。

「ちづさん、乗って! 空から迎撃するよ!」

 ツバメの言葉にちづは首を横に振る。

「人員を運ぶオプションが無ければ、IFの戦闘機動に生身の人間は着いていけません。
 乗せて頂いても気絶してしまい、役に立たないのがオチですっ。
 私はランチャーウィザードとしてまなびや船を守りますっ。どうか、気をつけてください」
「そっか……。それじゃ、ちづさんも気をつけて!」

 再びツバメはIFを動かし、まなびや船へと近づく変異体の群れへと機体を飛行させた。

「いっくよおおおおッッ!!」

 気合の言葉を入れてツバメはヒートメタルソードを振り上げた。
 遠くより飛来してきた人型の変異体はあっという間にまなびや船を取り囲んだ。
 もとは人間だったのかもしれない。しかしそのブーステッドのなれの果てはすでに理性を失っていた。
 彼らを突き動かしているのは、攻撃衝動。和解どころか言葉を交わすことさえ不可能だ。

 ザグッ!!

 ツバメの攻撃が変異体の肩に大きく食い込み、腕が吹き飛ぶ。
 しかし吹き飛ばされたはずの腕はみるみるうちに再生していった。

「回復力が高いみたい。あれくらいの傷ならすぐに元通りよ」

 誰よりも先にIFで迎撃に向かった永久野 空は、IFの無線通信を利用してツバメに告げた。

「動きも早い……まなびや船にいる人達も気をつけて!」

 無線で艦橋と通信し終わった空はロングレンジライフルの照準を変異体の一体に合わせた。
 そしてすかさず引き金を引く。
 ライフルから放たれた実弾は変異体の胴体を見事に貫いた。

『…………!』

 声なき悲鳴をあげた変異体は胴体の穴を回復させることもできず、そのまま海の中へ落ちた。
 ほ、とため息を吐いた空は油断することなく前を見つめた。
 攻撃衝動のままに動く変異体達は次々に特異者達へと襲いかかる。
 IFで迎撃に向かった特異者もいるが、変則的に動く変異体達は甲板にいる特異者にも殺意を向けた。
 甲板に立った九条 蒼夜は身構えながら敵をにらみつけた。

「めでたい門出だ。無粋な客にはお帰り願おう」

 普段のやわらかい態度は身を潜め、今は武人然とした顔つきになっていた。
 蒼夜は後ろに立つちづへ少しだけ顔を向けた。
 ランチャーウィザードとしてライフルを構えたちづはこくりとうなずいた。
 それを合図として蒼夜は前へと飛び出し、数体の変異体達が蒼夜に襲いかかった。
 高速の連続攻撃を放つ変異体の懐へ、蒼夜は一気に距離を詰めた。

 ザッ!!

 変異体の攻撃は寸でで回避され、蒼夜の鋭いカウンターが変異体の胴体を大きく切り裂いた。
 その勢いで次の攻撃を放つために蒼夜は前へと踏み出す。
 しかし別の変異体が蒼夜の後方へと迫っていた。
 そこにちづの放ったライフルの攻撃が命中する。
 だがそれだけでは高い回復力を持った変異体を足止めすることはできない。

「――させるものか」

 研ぎ澄まされた照準が蒼夜に襲いかかる変異体を狙い済ます。
 フォーゼル・グラスランドの持つ二つのレーザーガトリングの攻撃が変異体へと命中。
 更にカズ・アシュウインの対物ライフルによる攻撃も重なった。
 複数の攻撃を受けた変異体は己の傷を癒すこともできず、そのまま崩れ落ちた。

「ちづにばっかり構うなよ。オレ達だってサポートしてみせるぜ?」

 対物ライフルをあげたカズは蒼夜に向かってにぃっと笑いかけた。
 まったくだと言わんばかりにフォーゼルはうなずいた。

「……他人に背中を預けるというのもたまには悪くないな」

 蒼夜は源星と呼ばれた日本刀を構え、再び敵に向かった。
 敵との間合いを最低限にまで詰めるブーステッドの接近戦に、ランチャーウィザード達による後方支援。

「オレの力がどれだけ役に立つかわからないけど、できるだけのことは!」

 内に秘めた熱さを燃やしながらカズは仲間の攻撃に自分の攻撃を重ねた。
 どんなに高い回復力があっても、特異者達の協力攻撃の前に変異体達は傷を癒す余裕はなかった。

「さて、掛け替えの無い“今”を邪魔する無粋な輩は、早々にご退場願おうか」

 仲間達が造り上げた船と楽しい時間を壊すわけにはいかない。
 レーザーガトリングの照準を敵に合わせながらフォーゼルはつぶやいた。


 やがて特異者達の戦いは終わった。
 攻撃衝動に突き動かされたままの変異体達は海中へと沈んでいった。
 元は人間であった彼らは、特異者達のおかげでようやく静かに眠ることができるようになった。

 再び船旅を再開させたまなびや船の前に人工の陸地が見えた。
 巨大人工浮島、エリア15の姿だった。


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