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【まなびや・夏】まなびや船、抜錨!

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【まなびや・夏】まなびや船、抜錨!
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 大きな波や風に船体を揺さぶられることもなく、まなびや船は海の上を進んでいく。
 寝室を改装して作った図書室には数人の特異者達が集まっていた。

「タブレット式はそこまで好きじゃないんだが……」

 などとぼやきながら長神 五十鈴はタブレットコンピューターをぽちぽちと操作していた。
 ゼストでは電子書籍が一般化しており、紙の書籍は貴重だ。
 だからここにあるものはすべて一般人でも扱えるタブレットPC型の電子書籍だった。

「そうかい? これはこれで味があっていいものだと思うけどね」

 つまらなさそうな五十鈴とは逆に、榊原 灰音はタブレットに指を滑らせて
 電子書籍のページを次から次にめくっていた。

「なぁ、キミもそう思うだろ?」
「えっ、は、はいっ」

 灰音に不意に話しかけられた風見 伴哉は、飲んでいたハーブティーのカップを落としそうになった。

「ところでそれはなんだい?」

 タブレットPCのカバーにつけられている栞を指差し、灰音は聞いた。
 その栞の真ん中にはちづらしき人物が笑顔で手を振っているイラストが描かれていた。

「これは僕が作った栞で……皆とはあんまり話すことはできなかったけど、楽しかったから」

 だから思い出を残すために伴哉は栞を作った。
 地球では腫れ物扱いされていた伴哉にとってまなびやの空気は居心地がよかった。
 そんな二人の様子をマーティン・ウドヴィルは少し離れた場所で見ていた。
 どうでもいいとでも言いたげな顔ではあったが、カバーが開かれたタブレットPCには
 ステンドグラスを使い、桜の木がデザインされた栞がついていた。
 それを優しく手に持ちハンカチで包んだ。……あとでちづに贈るために。
 マーティンは図書室の窓を開け、少しだけ顔を外に出した。

「風が……気持ちいい」

 これまでに学んだことや今は亡き愛するひとを想い、マーティンは静かに微笑んだ。

「俺はまだ、生きている」

 潮気を含んだ涼しい風が図書室のなかへと吹き込んでくる。
 その風はタブレットPCを横に置き、机に突っ伏している五十鈴の黒髪を優しく撫でた。

「……たまには、こういうのもいいかも、しれないな……」
「まったくだ。さぁ、ゼストのすべてをボクに見せてくれよ」

 五十鈴はむにゃむにゃとつぶやきながら完全に眠りの世界に落ち、
 灰音は普段は眠そうな目を輝かせながらより面白いものを見つけるために読書に没頭した。
 それぞれに図書室を楽しんでいる仲間達を見ながら伴哉はつぶやいた。

「神様、今日も素敵な一日をありがとう。明日はどんな日?」





 まなびや船にはカラオケボックスも存在する。
 部屋に流れる音楽に合わせ、【二人の未来へ捧ぐ歌】の一人、加々宮 絶花は【セレナーデ】を口ずさんだ。
 タイトルは『departures~あなたの隣で~』
 カラオケデートに来てくれた【二人の未来へ捧ぐ歌】のもう一人にして恋人のリシア・ローザのために心を込めたラブソングだ。

「…………」

 やがて音楽は終了し、カラオケマシーンは高得点を画面に映し出した。

「ほら、次はリサの番だよっ」
「えっ!? そ、そんな、あたしなんかより絶花さんの歌が聞きたいなっ」

 絶花がマイクを差し出すが恥ずかしがるリシアはなかなか受け取ろうとしない。

「仕方ないなぁ。なら、二人で一緒に歌おう。それなら大丈夫だよね?」

 微笑んだ絶花はリシアへと手を差し出し、リシアはおずおずとしながらもその手を握った。
 次に流れる曲はポップなデュエットソングだ。
 絶花はさりげなく【ブレイブボイス】でリシアを勇気づけた。
 おかげで最初は小さな声で歌っていたリシアもやがて楽しそうに歌いだした。
 そして最後に。

「ありがとう、絶花さん。絶花さんのおかげで勇気が出たからこの歌を絶花さんに……」

 マイクを握ったリシアは自作の歌を口ずさみはじめた。

『アナタと過ごした日々
 心から笑える安心できる、いつも輝いて見えた
 アナタは私の光
 心からありがとう、私まで輝いてるように思えた
 幸せを確かに掴んだ今
 素敵なあの場所の思い出を胸に
 手を取り合って助け合って
 この世界をアナタと一緒に歩んでいきたい――』

 歌いきったリシアは絶花に向かって微笑んだ。

「絶花さん、大好き……!」


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