現実とメタバースが共存する裏世界、
遙樂(ヤオロウ)。
特異者、アイドル、契約者は
梟睿(シャオルィ)の案内で
ライフラインとなっているメタバース空間
真華胥(シンカショ)にトランスレートしました。
早速見て回ろうとしたそのとき、警告音が鳴り響きます。
トランスアウトを試みますが、実行できません。
動揺の声が上がる中、梟睿の背後に殺気を放つ何かの影。
殺気の影が彼に襲い掛かろうとした瞬間、
キンとした耳鳴りが聴こえ、全身の血が沸騰するような妙な感覚に襲われたのです。
卍 卍 卍
その感覚に続いて、銃声とともにドサッと音がしました。
梟睿(シャオルィ)が振り向くと、黄色い札を額に張り付けた人型の魔物が倒れています。
魔物こと
妖孽(ヤンイェ)から視線を上げると、二丁拳銃を手にした水色シニヨンヘアの女性が立っていました。
「もしかして、キミ――」
梟睿が声をかけた瞬間、次々と妖孽が襲い掛かってきました。
「あんたも応戦して!」
「わかってるって!」
そう答えたものの、どう応戦すればいいのか。
普通の攻撃ではきっとやつらは倒せない、梟睿が本能的に感じ取った瞬間、直感的に“どう戦えばいいのか”が理解できたのです。
これは梟睿に限らず、夥伴に覚醒した者すべてがそうだったように。
(きた、きたきた!オレもついに!)
梟睿も手のひらから力を放って黄色い札に攻撃しますが、金切り声を上げるだけで倒れもしません。
「何やってんのよ!」
「それはオレが聞きてぇって!」
妖孽の数が増え、手一杯状態の2人。そのときでした。
「つうぃちゃん、あとあそこだけだよん。よろしくね~」
「了解しました」
槍を彷彿させるような刀で黄緑色の長髪女性が妖孽の上半身を貫いていきます。
刺突でも鮮やかな身体さばきを披露した彼女の周りには倒れた敵の輪ができ、それらは消滅していきました。
「君たち、大丈夫ですか?」
「……助かった。まっ、こいつが足引っ張らなければ琳はもっと上手くやれてたし」
自身を
琳(リン)と呼ぶ女性は、左手の銃を軽く梟睿に向けました。
「それはこっちのセリフっしょ」
「はいはい、そこまで~。ええと、二丁拳銃のりんちゃんに隣は……」
「梟睿(シャオルィ)だ」
「しゃおちゃんね。僕は
梓玥(ズーユェ)。呼び方はなんでもいいよん。
んで、隣が僕の
夥伴(フォウバン)」
「
翠玲(ツゥイレイ)です。よろしくお願いします」
「夥伴……? なにそれ」
琳の疑問に、三人は沈黙します。
お互い顔を見合わせ、梟睿が説明することになりました。
「夥伴は簡単に言うとバディってわけ。
ロマンチックに言っちゃえば、潜在的に運命づけられた相手ってやつさ。
ビビッと来たろ? 耳鳴りと血が沸騰したような感じ」
「したけど……え、まさか」
琳は梟睿の顔を見つめます。そう、まさに今2人は夥伴になったのです。
「ありえない! なんでこんなやつと!」
「あーあ。オレの運命はもっとこう息ピッタシを想像してたんだけどなー……ナゲカワシー」
「何ですって!このアマチュア巫師!」
「はぁ!?オレは戰士!そんでちびっ子!オマエが巫師――」
いいえ、と梟睿の話に被さるように翠玲が話はじめます。
「琳さんは拳銃のようなものを駆使して戦われていましたよね。武具を介して攻撃を行うのは戰士の証です。
夥伴に覚醒した戰士の元には自身を司る武器が現れると、過去の文献にも記されています。
反対に、巫師にはあまりそういった武器は出現しませんが、自身の身体を媒介に巫術を発動させ
妖孽に攻撃を与えることが多いそうです。先ほど戦闘を拝見したところ、梟睿さんは巫師としての目覚めを果たしたようですね。」
必ずしも戰士と巫師の夥伴とは限りませんが、と話す翠玲に
終始傍観していた梓玥が口を開きます。
「はいは~い、そこまで~。今問題なのは、妖孽が現れた真華胥から僕たち含めてみんなトランスアウトできないってことでしょ~?
まずは現実世界に戻れるようにしないと。あの魔物……妖孽に対処できるのは、夥伴だけだからね~」
「ってことは、琳たちと夥伴に覚醒した人たちしか対処できないのね」
「そういうこと。っというわけで~僕とつうぃちゃんで出処を探して叩いちゃうから、2人は妖孽対処よろしく」
「ちょっ、手一杯だったの知ってるでしょ!」
「知ってるよん? だから、これは慣れるためのトレーニングだよね。君たちがちゃんと戦わないと、みんな死んじゃうよ~?」
真華胥では精神や五感を持ち込めるため、痛みは感じます。
そして真華胥で死んでしまった場合、その者の魂は消え、現実世界に置いてきた肉体は植物状態となってしまいます。
琳はキッと梓玥を睨みつけたあと、あなたの方に振り向きます。
「あんた、見てたでしょ。いい? 琳はあれとタッグ組みたくない。
だからあんたと組んであげる。それなりにできるみたいだし」
「おいおい、それはオレも同じだぜ? なぁ、キミ。オレと組んでくんねぇ?
一度戦った仲だしさ。連携はちびっ子よりできると思うぜ?」
「言った傍からなに言っちゃってんの~。この2人は放っておいて、僕たちと一緒に出処探そうよん。
甘やかしてると、トレーニングにならないからねぇ」
「出処を探す途中、妖孽に遭遇するかもしれません。
そのときは共闘、またはお守りしますので、共に行きましょう」
夥伴相手に納得がいかない琳・梟睿チーム。
この緊急事態でも冷静な翠玲・梓玥チーム。
2組に挟まれたあなたは、緊急事態の中でとあるペアの手を取ることにしたのです。