――戦乱渦巻く“機神(ロボット)の世界”ジーランディア。
ジーランディアでは
『鐵皇国』、
『ルミナス王朝』、
『自由都市連盟』の三国が、
大陸の中央にある天を貫く塔
「ガドラスティア」を巡って争い、混迷を極めていました。
異世界からジーランディアに様々なものを呼び寄せ、時にジーランディアから送り出すガドラスティアの力は、
ワールドホライゾンにとっても注目すべきものであり、
泥沼化した戦況を変え、塔の謎に迫るべく三国に介入する事となります。
ワールドホライゾンの特異者たちと共にガドラスティアに辿り着くのは、果たしてどの国になるのか――。
△▼△▼△
──鐵皇国
鐵皇国では、先のガドラスティア総攻撃の敗退によって失われた勢力範囲の回復に向けた準備が進められていました。
その一つが
棹銅(さおどう)の街を勢力下に入れることです。
棹銅は現皇帝・
覇道 鼎の父・覇道 堅狼が、ガドラスティア攻略の補給基地として利用していましたが、総攻撃の敗退の際に多くの戦力を失った鐵皇国は、鐵の城を守るためにここの守衛隊すら引き上げざるを得ない状況となっていました。
そのため、勢力範囲から外れてしまったのです。
街の者から連絡があればアメノトリフネで駆け付けますが、今は常駐している鐵皇国の守衛はいない状態でした。
「鼎様、大変だよ!」
覇道家直属の巫女(ガジェットドクター)・
兼武 結咲が、鼎の元へ駆け込んできました。
何でも棹銅が、複数の飛空艦と機動兵器に包囲されているというのです。
しかも、
その飛空艦と機動兵器はダークレッドに塗られたものだといいます。
「マズいわね……奴らが、
“夕闇団”が、棹銅の街に鐵皇国の守衛がいないことを嗅ぎつけてしまったようね」
鼎の軍事指導として雇われているソルジャーの
ル・フェイが、結咲の報告を聞いた途端、珍しく焦った表情を見せました。
普段はひょうひょうとした態度の彼女だけに、その余裕の無さに鼎も不安になります。
「あの、“夕闇団”というのは?」
「“はぐれソルジャー”の中でも
札付きのワルよ。かなりの規模で、自分たちの機動兵器や飛空艦をダークレッド、夕闇色に縫って統一していることからそう呼ばれているわ。連盟に所属する街は、彼らが来たら無条件で食料や弾薬を差し出して略奪を防ぐくらいなの……“白いクルースニク”の話は思っていた以上にジーランディア全体に広まっていたようね」
「そのような者たちが棹銅を取り囲んでいるということは……」
「ええ、急がないと、
棹銅の街は人も物も根こそぎなくなるわよ。奴ら、女子供にも容赦ないから」
ル・フェイの話を聞き、鼎は結咲に出撃準備を急がせると共に、ワールドホライゾンの特異者たちに連絡を取るのでした。
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──ルミナス王朝
国王
バルタザール・ルミナスもまた、仕える司祭
ソラン・ラッグスを介してベグライターたちに出撃準備を通達していました。
「ガドラスガードを蹴散らして、遺跡をルミナス王朝のものとするぜ! ジェミニケーターを強化するのも悪かねぇが、俺らの主力はシュヴァリエだ。シュヴァリエを進化・覚醒させなければ、覇道堅狼のようにガドラスティアへ挑むことすら夢のまた夢だからな!」
国王バルタザールは、大敗を喫したとはいえ、覇道堅狼にガドラスティア攻略を先越されたことがかなり悔しいようです。
「覇道堅狼のように」が口癖となっていました。
「勇者バルタザール、“急いては事を仕損じる”という鐵皇国の言い伝えがございます」
「ああ、分かっているさ。俺の座右の銘を知ってるだろ? “勝って兜の緒を締めよ”だ。急ぎはするが焦りはしねぇよ」
司祭ソランの忠告に、国王バルタザールは精悍な顔に、悪ガキのような屈託のない笑みを浮かべました。
覇道堅狼のような先人がいるからこそ、二の轍は踏まない──そう思っているようです。
「遺跡を守るガドラスガードは、シュヴァリエや機動兵器で当たるが、遺跡の中には入れねぇ。だが、ガドラスガードは遺跡の中にもいるはずだ。汚ねぇがそれがジーランディアだ。装備はちゃんと整えておけよ!」
「
その点に抜かりはございません。こんなこともあろうかと、ブルーミーティアライト製の武具やレッドマグネタイト製の武具を造らせておりました」
「流石はソランだな! ガドラスガードは俺が引き付ける。お前は遺跡の中を頼む」
「勇者バルタザールの御心のままに」
国王バルタザールもまた、ワールドホライゾンの特異者たちに連絡を入れるのでした。
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──自由都市連盟
自由都市連盟の
首長都市フリーダムシティにある執務室で、盟主
アリス・エイヴァリーは決裁業務を行っていました。
「これ、巧妙に隠してますが、使途不明金が多いので、領収書を付けさせないと通せません」
「はい!」
「これ、巧妙に隠してますが、桁が一つ少ないので、補足資料を付けないと通せません」
「はい!」
「これ、当初の予算を超過しているので、理由を聞かないと通せません」
「はい!」
決裁業務自体は、お約束の「決裁書類の山済み」……ということは無く、全てタブレットによる電子決裁で行われています。
しかし、目を見張るべきは盟主アリスの書類を読み、その中に書かれた数値を把握し、決裁可能かどうか見極める速さです。決裁書類一枚当たり1秒も掛かっておらず、次から次へとスワイプして、執務室に控えている秘書官たちに伝えます。
大変なのはむしろ秘書官たちの方です。十名以上いるのですが、盟主アリスの決裁速度が速すぎる故に、彼ら彼女たちの突き返された決裁書類の処理の方が追い付かないくらいでした。
金勘定になると十人の提案を瞬時に聞き分けて、適切な答えが出せる類稀な能力を持つ……その能力に嘘偽りは無く、だからこそ先代の盟主が彼女を指名したのかもしれません。
「アリス、飛空艦がガドラスガードに撃墜された」
そこへノックもせずに入ってきたのは、“カウンターソルジャー”の
マッシュでした。アリスが私的に雇っている護衛のソルジャーです。
「乗務員数を教えてください。すぐにでも見舞金の支給を」
「あれ、
お前がイスカリオで造らせていたものを載せていたと聞いていてな。連盟所属の飛空艦が墜落したと聞けば、
“バンディッツ”たちが動くぞ」
「!?」
今までタブレットから目を離さなかった盟主アリスは、マッシュの話を聞くとすっくと立ちあがります。
「直ちに撃墜された飛空艦の残骸の回収に向かいますので、部隊を編成してください。盟主権限を使用しますので最優先事項となります。私も向かいます」
「あの、決裁業務は……」
「飛空艦の残骸の回収が終了次第再開します。それまで、今までの分の処理を済ませてください」
秘書官の一人が遠慮がちに聞くと、盟主アリスは即答します。秘書官たちの業務が追い付いていないことを分かっているからです。それらを終わらせないことには、いくら彼女が決裁を済ませても、連盟の都市の決済処理が終わらないのです。
盟主アリスもワールドホライゾンの特異者たちに連絡を入れるのでした。
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鐵皇国の皇帝・覇道 鼎、ルミナス王朝の国王バルタザール・ルミナス、自由都市連盟の盟主アリス・エイヴァリーそれぞれからワールドホライゾンの特異者へ依頼が来ました。
どの国に協力するかはあなた次第。
あなたの行動(アクション)が、各国の未来を左右するかもしれません!