“ヴィラン(悪)”が人々を裏で支配する
ロディニア。
それはここ
カディヤックヒルでも変わらない。
悪事を働くヴィランの中心である“異邦人(エトランジェ)”に成す術を持たなかった人々だが、
勇気を力に変換する
“ブレイブコンバーター”の開発によってヴィランに太刀打ちできる力を手に入れた!
“セイヴァー(救世主)”が勇気を力に変えてヴィランを打ち破る想像(イマジン)の世界となったのである!
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――カディヤックヒル、??
「何故だ!? 何故、彼奴に造れて、我に造れんのだ!? 何のデータが足りんのだ!?」
マッドサイエンティスト・エジソンは、自身の研究室で怒り狂っていました。
彼の周囲には、その怒りの矛先を向けられたサイボーグたちの残骸が散乱しています。
マッドサイエンティスト・エジソンが見ているのはセイヴァーズの動画です。
ロディニアの兵器が効かない
異邦人(エトランジェ)であるサイボーグを、セイヴァーズが倒しています。
その手の甲や胸元には、水晶玉のように
“ブレイブコンバーター”が輝いています。
「勇気を力に変えるだと!? そのような非科学的なものをどのように出力するというのだ!?」
「それが出来たからこそ、彼らはあなたが生み出したサイボーグを倒しているのですよ?」
『コンサルタント』を名乗る男から、“ブレイブコンバーター”の仕組みについては聞いています。
ですが、「勇気の力」や「想いの力」といった、目の見えないし、測定しようのない非科学的な要素をエネルギーの素材にすることを、マッドサイエンティスト・エジソンはできなかったのです。
「“氣”みたいなものですが……こればかりは感じてもらうしかないですからねぇ」
『コンサルタント』はため息をつきます。
「想いの力」については、人気ネットアイドル
『カフェ・au・lait★time24』のデータを奪うことで研究しようとしています。
残るは「勇気の力」です。
ですが、『コンサルタント』が言うように、「科学」で理解しようとする彼には難しいかもしれません。
「我の目指す究極のサイボーグに足りないところはそこなのだ! どうすれば“氣”を感じられる!?」
「そうですねぇ……一般的には鍛えられた肉体や、若い肉体が“氣”を感じられますね」
「若い肉体か……サンプルは多い方が、サイボーグの素材にもなるな」
『コンサルタント』の言葉に、マッドサイエンティスト・エジソンはニヤリと卑下た笑いを浮かべました。
■□■
――カディヤックヒル、アンダープレート、イマジンレガリア
「またですか!?」
『アア、マタダニャ』
「今月に入って5件、既に200名くらいが行方不明とはね……」
イマジンレガリアの長官
光牙 影路郎(こうが えいじろう)は、モニターに映る相手からの報告に驚きを隠せませんでした。
モニターに映っているのはさんぜんねこですが、その身体の大半はメカに置き換えられています。
マッドサイエンティスト・エジソンに捕まり、サイボーグ手術の実験台にされたさんぜんねこでした。
元々「ねこのおまわりさん(ポリスニャン)」として市民に親しまれ、カディヤックヒルポリスに籍を置いていた彼は、マッドサイエンティスト・エジソンの支配下に置かれる寸前に辛くも脱出し、正気を保っています。
そしてサイボーグに改造された結果、“ブレイブコンバーター”が反応してセイヴァーに目覚め、こうして
『メカポリスニャン』としてイマジンレガリアの協力者となっています。
彼が影路郎に報告したのは、今月に入って多発している
『学生の失踪事件』でした。
下は小学生から上は高校生まで、アンダープレート・プラチナプレートを問わず、登校時や下校時、課外活動時に忽然と姿を消してしまっているのです。
既に200名近くが失踪しており、
プロフェッサー・ソルフォードも心を痛めています。
『カディヤックヒルポリスモ捜査ハ続ケテイルガ、早クモ異邦人(エトランジェ)ノ仕業ト断定シ、捜査ヲ打チ切ル方向ダニャ』
「ううむ……確かにエトランジェの仕業であれば、カディヤックヒルポリスは手の出しようがないが……しかし、200名もの若い命をみすみす見過ごすわけにはいかん! 断じていかん!」
「長官、失踪箇所を見せてもらえるかしら?」
エトランジェの仕業と分かれば、カディヤックヒルの人々ではどうすることもできず、捜査は近日中にも打ち切られると、メカポリスニャンは言います。
しかし、エトランジェであっても対抗する術を持つ影路郎はそうはいきません。
そんな彼に話し掛けるのは、テルスから“ブレイブコンバーター”の研究にやってきた
エーデル・アバルトです。
今の彼女はフリフリなパステルタッチの魔法少女の衣装を纏い、手にマジカルマッチロックを持っています。
マジカルキャスター“パッション☆エーデル”となった彼女は御年25歳、ちょっと羞恥心が入っているようで、フリルをやたらと気にしています。
「なるほどね……」
エーデルはメカポリスニャンから提供された、失踪が起こっているであろう場所とカディヤックヒルの地図を重ね合わせながら呟きました。
「一度に大人数を失踪させるには、『それなりのギミック』が必要になるわ」
そう言って地図を指さします。
そう、失踪したと思しき場所は幹線道路沿いであったり、ハイパーループ(真空チューブ鉄道)内であったりと、
普通に考えれば失踪したら分かりそうな場所です。
ですが、それらにはもう一つ共通点がありました。
「!?
マッドサイエンティスト・エジソンが整備したインフラね!」
「その通りよ。失踪した人数に目が行きがちだけど、もっとシンプルに、
こんなことができるのはインフラを整備した張本人、と考えるべきじゃないかしら?」
「確かに、先日の
オーブントレインのように、マッドサイエンティスト・エジソンがインフラに仕込んでいた、と考えれば合点が行くな!」
エーデルの着目点に、プロフェッサー・ソルフォードと影路郎は唸ります。
『シカシ、身内ヲ擁護スルツモリハナイガ、カディヤックヒルポリスモ現場の調査ハ行ッテイル。失踪ヲ裏付ケルヨウナギミックハ見ツカッテイナイ』
「普通に調べたらそうでしょうね……でも、
調べる方法は他にもあるわ」
「エーデル君ありがとう! マッドサイエンティスト・エジソンが何を企んでいるかは分からないが、200名もの未来有望な若人の命は、セイヴァーに掛かっている! セイヴァーズ、出撃せよ!」
影路郎は“ブレイブコンバーター”を通じてセイヴァーズに出動を要請したのでした。