オンラインの世界RWO(レディアントワールズオンライン)。
一度は
ヴォルテックスによって
三千界を巻き込む危機にさらされたRWOでしたが、
ワールドホライゾンの特異者やRWOのユーザーたちの活躍によって脱しました。
そして大型アップデートとして500階の塔、
スパイラル・オブ・コスモス
が実装されたのです。
スパイラルは
八大竜王と呼ばれるドラゴンの試練を超えて
8本の聖剣を集め、頂上向かうのが目的です。
そのスパイラルで特異者たちは
反ヴォルテックス同盟を名乗る
非特異者のクラン集団とぶつかります。
同じ頃スパイラルで卵から産まれた不思議な女の子がいました。彼女は
モモと名付けられました。
そして特異者たちは竜王ヴリトラ、ウガジンの試練をクリア。ヴォルテックスで手に入れた聖剣も含め、合計3本の聖剣を集め、200階までのルートが確保されました。
そしてモモもまた特異者たちとの冒険を経て、着実な成長を遂げていたのです。
しかし、特異者たちと一緒に冒険をしてきた
24時間騎士団には異変が起きていました。
セルジュが魔王を名乗って離反し、
アヴィのユーザー
アメリア・朱雀院が反ヴォルテックス同盟によって誘拐されてしまったのです。
■□■
――スパイラル199層。
「これは、すごい眺めですねえ^^」
ほえみはためいきのモーションをしました。
中空が目立つスパイラルではありますが、200階を超えたあたりから雲海がどこまでも高く層状になっているのです。
その上、空にはドラゴンが見えます。
そのドラゴンはどこまでも長く、空のかなたまで伸びているのです。
「
竜王アンフィスバエナ。
200階から250階までの長大なドラゴン」
「なるほど、トカゲというよりはヘビに近い、
スカイドラゴン系統か。
……それにしても信じられないスケールだな」
バウアーの言葉に
ヨシミツが納得します。
「ああ、そしてその両端にそれぞれ頭があり、
夫婦なんだ。
一体にして二竜王、二つの聖剣の守護者。
――それがアンフィスバエナだ」
「ほえー。でも、そんなに長くちゃ。
夫婦でお話しするのも大変そうです;;」
「そうだな。で、頼みがある。
俺の最後の冒険をアンフィスバエナの試練にしたい。
アヴィにアンフィスバエナの聖剣を見せたい」
「!?」
「それって……」
真剣なバウアーの言葉に、
ほえみとヨシミツは押し黙りました。
■□■
そして、スパイラル200層。
アンフィスバエナ(妻)の頭の前に、
250層から
夫の頭が落ちてきました。
『母さん、すまん!
一撃でやられて聖剣奪われた……
グランブルって男強い!』
「まあ! 情けないこと……。
いいわ、私にはイケメンがいるし」
『酷い……』
夫の頭はそのまま落ちていきました。
「マダム。
愛するダンナの首、ほっといていいのかい?」
「いいのよう、その内また生えるから。
でも、夫がやられたという事は私のところにも来るのかしら。
――冒険者が」
「ああ、来るでしょう。だが、あなたの首には傷一つつけさせません。
このRWOの支配者たる、魔王がね」
「ステキ! あなたが勝ったら聖剣あげるわね」
アンフィスバエナ(妻)の頭の上は、
魔王を自称する
セルジュがいたのです。
この情報はほどなくスパイラルの頂点を目指す全ての冒険者に伝わり、
アンフィスバエナの聖剣を巡る多くの冒険者が200層の雲海へと向かいました。
そして、落ちるところまで落ちた
アンフィスバエナ(夫)の首にはある手紙がつけられていたのです。
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冒険者の中で250層まで来られる者がいたら戦わないか?
バウアーが老いぼれた今、俺は強敵を求めている。
俺から聖剣を奪えたら、そのまま進呈する。
グランブル
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それは、
反ヴォルテックス同盟の盟主、
グランブルからの挑戦状だったのです。
こうして、二つの聖剣を巡る新たな竜王の試練が始まりました。
しかし、その裏では誘拐されたアヴィにまつわる
恐ろしい事態が進行していました。
■□■
スパイラル215層、
RWO総合大学 スパイラルキャンパス。
RWO総合大学は反ヴォルテックス同盟所属の研究系クランでした。
そのリーダーである
ローム学長こそが、
アヴィの誘拐拉致の犯人だったのです。
ですが。
「無理、もう無理!
サイコエネルギーがたまりすぎて、
臨界寸前なんですけど!
この子の潜在能力高すぎじゃねーの?
オレツエー系?」
ローム学長は実験棟の中心に眠る
青白く光るアヴィを見ながら叫んでいました。
色々な計器が「超危険」という意味の警報を発しています。
「うるさいわねえ。
あんたが、すごい実験材料欲しいっていったから、
教えてあげたんじゃない」
ロームの横にいたのは
螺旋の門番クックゥです。
「そうだけど、
もっと適度なイノベーションを期待してたんですし!
わかった、諦める。
ホライゾンだか管理委員会だかわからないけど、とにかく通報しますわ。
聖剣とかもどうでもいいし、
RWOでは垢バンされて、リアルでは逮捕されて刑務所いけばいいんでしょ? アイツみたいに?
RWOと一緒に滅びるよりそれがマシですわ!」
「はぁ? させる訳ないでしょ。
スパイラルだって、RWOだって滅びればいい。
……アヴィさえ、アメリアさえ……」
(ヤバい、アヴィもサイコだけど、
こいつも大概サイコですわ。
だけど、どうすれば……)
「
適度なダメージと声かけ。
そうすればアヴィは目覚める。
もちろん、リアルでの救出も重要じゃがな」
「あ、あんたは
じいさん!
あんたみたいな有名学者に、あたしのイノベーションを渡さないですわ!」
「さっき諦めると言ってただろ。
既に冒険者たちには伝えてある。
アヴィの仲間たちがやってくる。
アヴィを救うのは竜王の試練の一部とするという許可も
アンフィスバエナ(妻)から得たしのう」
「うるせえぞ、ジジィ! 来させるか!」
クックゥは冒険者を迎え撃とうと、外に飛び出しました。
学長とじいさんはそれを止めることは出来ませんでした。
「クックゥ……。
あれは、アヴィとは別の意味での巨大な才能の持ち主。
だが、それを見出されなかったがゆえに」
「人の才能とか、このさいどうでもいいですわ!
大体、ゲームのアヴィだけ助けたって、無駄じゃない?
リアルも助けないと。だけどワタシも誘拐組織がどこに監禁してるか知らないですわー」
「大丈夫、それも対応している」
■□■
サルマティアの街。
「ツバキ、任せてもいいのね?」
「イイノネ?」
「うん、大丈夫。
蛇の道は蛇っていうか……ある人物の証言で組織の居場所が分かったの」
スパイラルキャンパスに向かおうとする
アクアマリンと
モモに
ツバキは断言しました。
「アルホーホー?」
「うん。できれば頼りたくなかったけど……」
「そっか。でも、何でもいい。
アヴィを救うためなら、悪魔に魂を売ったっていい」
「ウッタッテイイ!」
「ありがとう」
ツバキの言葉を聞く前に、モモとアクアマリンは旅立ちました。
「誘拐した組織を潰す作戦、協力するね!」
「
クレイン助かるわ。アヴィの救出作戦頑張ろう!」
「うん」
アンフィスバエナの試練と、アヴィの救出。
二つの大きな危機にスパイラルは、RWOは揺れ動いていました。
そして、その行く末を決めるのは、
冒険者たちに託されていたのです。