シナリオガイド
《教会》と《炎》――それぞれの戦いは交差する。
シナリオ名:≪GOE≫烈火の戦士と聖華の騎士・後編 / 担当マスター:三千界のアバター運営チーム
パダーニャ王国首都、ロンバルディア。
発展した汽化技術の代償に、汚染された灰色の大気に染まった街。
そこは今まさに、戦場へと姿を変えようとしているのでした。
――事件の発端は、数刻前に遡ります。
巡回中の王国軍兵士が、ロンバルディア旧市街区へ向けて大量の魔物が押し寄せている事を報告。
その数は到底、指で数えられるものではありませんでした。
■□■□■
「……全隊、覚悟は良いですか?」
緊迫感が纏わりつく旧街区の最後方にて、一人の少女が澄み切った声をあげました。
それはこれから戦場へ赴く者の心に潜む、恐怖と言う名の魔物を祓うように。
「大丈夫だよ、フィオーレ。……この街は《教会》騎士団が必ず護ってみせるよ」
いち早く少女――フィオーレの声に応えたのは、鈍く光る甲冑を纏う騎士でした。
数多くの従士を引き連れる騎士――キアーラ。
彼女に続いて、集った《教会》騎士団の面々は、次々と剣を胸に掲げ矜持を示します。
「しかし旧街区は放棄……か。軍もやってくれるな」
「そう言うでない。あの数は異常……王国軍も避難誘導に命を賭けておる」
着々と武装を整える中、騎士――エヴェラールとロベールは言葉を交わします。
彼らの言葉通り、状況は切迫していました。
せめてもの救いは王国軍が帝国軍に後れを取らぬよう全兵を挙げ、住民の避難を完了させようとしていることのみです。
不安が渦巻く中、二人の間に割って入るのはキアーラでした。
「……もう一つ、懸念材料は“彼”……かな」
彼。
キアーラが発するその言葉の裏には、世界を揺るがす鍵――《起源の七体》が秘められていました。
察した二人は、鈍重な息を溢します。
しかしながらそれを掻き消すように、皆の肩を小さな手が大胆に掴みかかるのでした。
「大丈夫ですよ! 後で私も向かいます!!」
「……フィオーレ、いや団長よ。大丈夫か……お前が最前に赴き失えば《教会》は……」
「ふふん。《教会》のみんな……信じてください。必ず帰りますから」
フィオーレは柔らかく、そして決意を込めて言った。
必ず帰る。戦場では何の確信もない約束。
しかしかつて全てを失いかけた者達だからこそ、底知れない深さを感じているのだ。
《教会》一行は彼女を信じ、その背を見送る。
一人の少女であったフィオーレから、《教会》騎士団長へ成長したその背中を。
■□■□■
《教会》騎士団が旧街区に総動員する中。
炎を纏う男は一人、ロンバルディア旧街区の外縁部へ向かおうと歩を進めていました。
「――やはり行くのですね、フーリア」
「…………ああ。決着をつけねえとな」
男――フーリアへ包み込むように優しく、声が響きます。
静かに瞳だけを向けた先には、甲冑を纏うフィオーレが佇んでいました。
「ふふん。決着、ですか?」
フィオーレはこれから死闘が待ち受けているとは思えない、まるで咲いたばかりの花が如き笑みを浮かべます。
全てを見透かされたかと、フーリアは表情を緩め大きく歯を覗かせるのでした。
「ああ。……“約束”とな」
「なら良いんです。私も共に行きましょう」
《教会》を担う聖なる華と、この世界の《炎》と同義なる存在。
二人は互いに並び立ち、静かに決戦の地へと足を進めていくのでした。
(必ず護る……フィオーレも……この街も)
――烈火の如き男に再燃する、その想いを乗せて。
そしてロンバルディアの外縁部に差し掛かった二人を、鬱屈とした闇を纏う男が出迎えました。
未だ静寂を保つ街で、男――オーディオの薄気味悪い、まばらな拍手が響きます。
「来てくれたんですねぇ――《起源の七体》が一つ……フーリア。それに《教会》騎士団長フィオーレ様が、最前線まで来るとはねぇ」
「俺がいると魔物をおびき寄せる呼び水になるからな」
「はっはっは!! 知ってたんですか? いつかの町を一つ滅ぼした時に学びましたなぁ?」
フーリアの冷えた言葉に、オーディオは嗤います。
そう、彼は己自身を見つめ、知ったのです。
オリジナルギアが故に、マナに貪欲な者達を無意識ながら集めていることに。かつて町一つを大惨事に飲み込んだ、魔物襲撃事件で利用されたことに。
「……町。やはり貴方が仕組んでいたのですね……!!」
薄汚いオーディオの言葉に、フィオーレの瞳にも強く覇気が宿りました。
しかしながらそれすら些細な事とでも言うように、オーディオはフーリアへ言葉を投げつけます。
「しかし――これはどうでしょう……か?」
「……何ッ!?」
「魔物の動きが……止まらない」
オーディオの後方よりなだれ込む魔物達。
それはフーリアとは離れた位置から、旧街区へ続々と侵入していきます。
「……一体、どういうことだ!?」
「そんなことはどうでもいい。始めましょうフーリア……君の本気が見たい」
怒り、震えるフーリア。
また護りきれないのかと、彼の纏う炎にも憎しみが滲みます。
憤怒が彼の炎を染めようとしているのです。
「フィオーレは邪魔です」
オーディオの周囲に闇が迸ります。
次の瞬間、不意打ちの形で踊る瘴気はフィオーレを後方へ薙ぎ払い、短い悲鳴が響きました。
すぐに立ち上がる彼女でしたが、フーリアの怒気は増す一方。――ですが。
「……クソヤローが」
「おや……? 暴走しませんか……」
フーリアの瞳は激怒の炎に飲まれてはいません。
それをしてしまえば全てが壊れると、理解しているため。
後ろには《教会》が――仲間がいる。彼は後方より駆けつける協力者達の存在を感じ、煮え立つ己を見つめ続けるのでした。
■□■□■
《教会》騎士団と同じく、いち早く現場に急行していた特異者クロエ。
市街区の土地勘を強めるべく、先んじて巡回を行っていた彼女は、妙な影を発見していました。
「…………何なの、あれ」
それは思わず眉を寄せてしまうほどの、漆黒に歪んだマナでした。
幾重にも重なる瘴気を吐き出しながら、闇はロンバルディア市街区へ向けて疾走しています。
目を凝らして見れば、それは人です。
闇の根源と思しき剣のようなものを抱え、声にならない呻きと共に疾風の如く駆けているのでした。
そしてその直後――遥か前方より魔物達が駆けてくる姿くを捉えます。
「来たわね……――ッ!?」
唐突に、クロエの脳にこれまで特異者達が得ていた、あらゆる情報が巡りました。
それはあまりに、魔物達がまるで何かを追っているかのように見えたからでしょう。
「…………まさか、あの剣を……追っている……?」
「おい、君。ここから先は帝国軍が魔物殲滅に当たる。早急に立ち去りたまえ」
瞬間、彼女の眼前に帝国軍兵士が立ち並びました。
《教会》騎士団とは別に、彼らも前線に立つと聞かされていたクロエですが――
「あらあら、ごめんなさいね」
迷わず抜刀。炎を噴出すると彼らを跳び越え、一気に剣へと疾駆します。
しかし、すぐに彼女の身体は強烈な重圧に押し返されるのでした。
「――おっとっと。触らぬ堕剣に祟りなしっスよ?」
「お前らは魔物殲滅に注力しろーー!! 死ぬ気でやらねーとロンバルディアが崩壊すっぞ!!」
クロエを阻むは、幾度となく特異者達と激突した宿敵バルメ、そしてアンドレアでした。
しかし彼女達の装いは、かつてとは異なります。
帝国の軍服をその身に纏っているのです。
「アンドレアの言う通りっス。諸君らにも“目的”があるっスよね……魔物討伐後、《教会》騎士団へ名誉の戦死を贈る、ね」
クロエへ跳びかかろうと猛る帝国軍兵へ、冷えた瞳を向けるバルメ。
“目的”――その言葉を聞いた帝国軍は、この場を彼女らへ預け一斉に持ち場へと戻るのでした。
「堕ちた、剣……なるほど、アスカロンね」
「察しの良いおねーさんは嫌いじゃないっス。ま、でも今回の“目的”――果たさせてもらう」
そしてバルメとアンドレアは、クロエへ構えます。
待望する“目的”。――幾度かの敗走を味わわせた、特異者達の排除です。
「もっとも、秘密兵器【アスカロン】がないと困るっスからね……そっちの防衛は最優先っス」
「魔物を街へおびき寄せるのと、退治の切り札だろ? やっぱオーディオはクレイジーだな!」
「ふぅん……なら“取り戻す”までよ」
三人は一触即発。一瞬にして臨戦態勢を整えました。
そしてその後方には、堕剣を携える男も足を止め憎悪を露わにしています。
「……く……くく……憎イ……憎イ」
一対多数の緊迫する中、クロエは素早く通信機へ入電します。
物語の幕を開けた者達へ告げるため。
今こそ決着を着ける時よ――と。
担当マスターより
シナリオガイドをご覧いただきまして誠にありがとうございます。
パダーニャを担当させていただきます、砂糖しろくろです。
前作のエピローグでオーディオが語ったロンバルディア殲滅作戦。
傷ついた魔物達の多数を呼び寄せることで、それは実行されようとしています。
《教会》、そして《起源の七体》が一柱を担うフーリア。
その戦いが交差する今、物語は決着を迎えようとしています。
同日に公開されている「≪GOE≫地よりとぶもの、空をおりるもの・後編」に予約・抽選参加している場合
こちらのシナリオは参加できませんのでご注意下さい。
ただし追加参加になった場合はその限りではありません。
●現状の概要とこれまでのあらすじ
現在、一連の事件の黒幕オーディオによって、興奮状態の魔物達がロンバルディアへ押し寄せようとしています。
協議の末、先の強襲犯(バルメ・アンドレア)を取り押さえたことを追い風に、主導権を握りつつある駐在帝国軍はロンバルディア旧街区放棄を決定。
かつての騒動で貴重な戦力を失った王国軍に代わり、《教会》騎士団が旧街区にて魔物の殲滅を総動員することとなったのでした。
一方《起源の七体》炎のフーリアは、かつて製作者が自身に託した“みんなを護る”想いを果たすべく、単身オーディオの元へ。
しかし完全な力を目覚めさせるため、彼の暴走を狙うオーディオは魔物を街中へ呼び込む罠を敷いていました。
それこそが、《教会》に代々伝わる聖剣――アスカロンです。
正しき者が扱えば強大な魔を払い希望をもたらす力がありますが、現在は堕剣となり魔物を呼び寄せる代物となっています。
時と場所が異なり起こった全ての欠片は、現《教会》本部に位置するロンバルディア旧市街区に集まり、交差する――運命の時間。
特異者達はギルド(またはフィオーレかクロエ)より依頼を受け、彼らだけでは手に負えないこの戦闘の解決を行うこととなります。
オーディオの破滅的な性格から、魔物達の数や質は相当なものです。よって完全討伐を目標とする場合は下記記載の難易度を著しく超えています。
また、フーリアが力を使い続けた場合、覚醒の力をコントロールできない可能性は十二分にあります。
しかし形は違えど、この場には聖剣アスカロンが存在しています。
本来持つべき者が所有すれば、悪しきものを鎮め、人々に希望をもたらす、本来の聖剣としての力を発揮します。
それは大きく戦局を左右することとなるでしょう。
■アクションパートについて
【1】オーディオと戦闘 難易度:8
黒幕・オーディオを撃破することが目的となります。
闇のマナを宿す金属を操り、それを自在に変形させることで遠・近距離共に応じます。
生粋の策士であり、裏をかく攻撃の一手目は確実に読んでくるでしょう。
身体能力においても後述のアンドレアを凌駕する力を持っており、どうやら腰の据えた刀からの抜刀術を切り札としているようです。
そして闇属性の攻撃全てを吸収するため注意が必要です。
またオーディオは一体多数の状況下を想定し、周囲に二つの球体型ギアを巡回させています。
それらは自動でマナを強く発する者を柔軟な形で攻撃し、また状況に応じて盾ともなります。
武器から盾への変型時はタイムタグがあり、自身への誤射を避けるためか闇のマナには反応を示さないようです。
ただし、オーディオと同じように闇属性の攻撃は吸収します。
※こちらのパートでは、味方としてフーリアとフィオーレが参戦します。
【2】魔物達から旧街区を防衛 難易度:6
迫り来る魔物達から旧街区を防衛することが目的のパートです。
ロンバルディア市街では既に帝国軍の主戦力が配備されている反面、《教会》の本部がある旧街区は魔物の脅威に晒されています。
小型の魔物がアスカロンを求めて多数暴れ狂っている他、凶悪な魔物の存在が確認されています。
《教会》とギルドより得られた魔物の情報は以下の通りです。
★ギーヴル
闇のマナを有し、這った場所を腐られるほどの毒を有する、蛇のような巨大な怪物です。
その力は危険度「A」とされるベヒーモスに勝るとも劣らないとされ、特に毒に纏わる攻撃に注意が必要です。
ブレスや噛みつきなどの攻撃だけでなく、その身体全体が毒の塊ですので直接攻撃時には工夫が必要かもしれません。
強敵であることに間違いありませんが、光のマナへ強い執着を示し攻撃対象とします。
ギーヴル迎撃ポイントは、比較的開けた広場のような場所となります。周辺への警戒は最小で済む反面、《教会》本部付近であるため、戦闘が激化すれば本部崩壊の恐れもあります。
迎撃にはキアーラ・エヴェラール・ロベール・ベルナール・アルノが隊を率いて参戦しています。
《教会》の作戦では迎撃ポイントの程近くにある、地下溶鉱炉へ叩き込むようです。
ギーヴル一体を容易に放り込めるサイズですが、凄まじい熱気に警戒されないようその蓋は閉じられています。
開閉スイッチによって操作でき、ギーヴルを弱らせ蓋の上へ立たせた時待機している従士が開のスイッチを押す手筈です。
戦力の分配が必然な現状ではありますが、そこまで誘導すれば討伐は可能でしょう。
落ちれば確実に無事では済みません。《教会》騎士団は特異者のただ一人でも蓋の上にいる場合、開のスイッチを押すことはないでしょう。
また、これは《教会》側の作戦であるため、必ずしもそれに合わせる必要はありません。
また、その他の魔物に関しては、アスカロンを所持する男の移動速度も考慮されたためか、鈍足な魔物が多数見受けられます。
猿のような身体を持つ魔物は鈍足な分力が強く、生半可な攻撃は跳ね返す鎧のような皮膚を持っています。
これらの魔物のみを相手取るアクションの場合、記載難易度以下になります。
※こちらのパートでは、《教会》騎士であるキアーラ、エヴェラール、ロベール、ベルナール、アルノが味方として参戦します。
【3】アスカロンを取り戻す 難易度:7
バルメとアンドレア、そして堕剣アスカロンを構える男――ベルトランとの戦闘がメインとなるパートです。
立ちはだかる三人と交戦することが前提となりますが、目的はあくまでアスカロン奪還です。
クロエはその機を虎視眈々と狙っており、奪還次第本来の力を発揮できる者へ届けようと目論んでいます。
バルメとアンドレアを引き付ける事が出来れば、容易ではありませんが十分に奪還の隙はあるでしょう。
しかしながら謎の多かったバルメとアンドレアが共に、特異者達を葬ることを“目的”と明言し参戦しています。よって二人の相手をする場合――特に撃破を狙う場合には、上記難易度以上であると予想されますので注意が必要です。
★バルメ
バルメは重力と風を纏う双剣を巧みに駆使し、一対多数の状況下でも対応できる柔軟な戦術を有しています。
双剣時の火力はさしてありませんが、双剣は一つの長剣に変形します。
その際放つ重力波を伴う光線と、一撃必殺の火力には注意が必要です。
また、彼女は重力と風を巧みに操り、周囲をまるで無風状態にする力を見せています。
その際に強力な攻撃が無効化されている前例もあるため、注意が必要です。
★アンドレア
対してアンドレアは汽化部分より煮え滾る、灼熱の流体を主軸に戦います。
戦術に特化している部分はない反面、一撃の重さは並みの特異者を凌駕しています。
接近戦を最も得意とし、己の膂力で破壊した物へ灼熱の流体を放ち、炸裂される技には注意が必要です。
今回は機関銃型ギアこそ所持していませんが、彼女は流体で同じような攻撃を行いますので注意が必要です。
★堕剣所有者【ベルトラン】
堕剣アスカロンを所持するベルトランは、ほとんど自我がない状態となっています。
全身を蝕む闇のマナでただ破壊と命令の実行のみに尽くしていますので、上記二人の援護ではなくただの破壊行為を特異者へ行います。
元々疾風の如く駆る速度を主力にした戦法を取る騎士なので、思わぬ一撃に注意が必要になります。
また、今のアスカロンは歪んでいるため、マナを身近に感じられるストレンジャーは思うように力が発揮できなくなります。
魔物をおびき寄せる力も有していますので、各勢力が魔物を抑えている状況でも、思わぬ乱入には注意が必要かもしれません。
※こちらのパートでは、味方として特異者クロエが参戦します。
・オーディオと戦闘
・目的
決着をつける!
・動機
全ての戦いに終止符を打つと同時に、《起源の七体》の力を特異者側へもたらす。
・手段
自動援護型ギア……闇の力には反応しない……か。
それを上手く利用すれば撃破も出来そうだが。
俺はオーディオへ立ち向かう者達を邪魔する援護型ギア、これを必ず潰す。
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・魔物達から旧街区を防衛
・目的
旧街区を護る!
・動機
時代に取り残された一角。それでも、生きている人はいる。
懸命に避難誘導を行う軍の決定を咎める事はしない、けれど私はここを護りたい。
・手段
ベヒーモスに匹敵する魔物、ギーヴルか。
やらなければいけないことが多くて正直しんどいけど、私は《教会》の作戦に応じようかな。
光に反応するなら弱ってきたところを誘き寄せるくらいは出来るはず。
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・アスカロンを取り戻す
・目的
アスカロン奪還。
・動機
アスカロンを取り戻せば事態は収束する。敵が秘密兵器って言うくらいだから……。
それにこれは彼が持つべきモノじゃない……彼女が持つべきよ。
・手段
何はともあれ、バルメとアンドレアを何とかしない限り無理ね。
これまでの戦いから察するに、アンドレアはとことん直球勝負。
マグマは厄介だけど……こっちは変化球で勝負ね。
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