――ワールドホライゾン、広場。
「すっかりとバレンタインって感じになってきたわね!」
「ホライゾンが生まれ変わってから色々と忙しかったが、少しは落ち着いてきたからな」
例年同様、バレンタインの季節になったことでホライゾン中が賑わいを見せており、ホライゾンフィールではチョコレートを前面に押し出したフェアが開催されており、
明夜・ワーグナーと
アドルフ・ワーグナーが歩いている広場でも、二人と同様に仲睦まじく歩いているカップルが多く見られました。
「今年はバレンタインをゆっくり楽しめそうでよかったわ」
「界霊の出現には常に警戒しているが、今のところ発見の報告はないようだ。トラブルメーカーの二人も今年は大人しくしているようだし、たまにはこんなバレンタインもいいんじゃないか?」
アドルフのいうトラブルメーカーとは、三千界管理委員会のイベンターである
ミリアムと
ギリアムのことですが、どうやら今年はおかしな事をしでかす前にアドルフに先手を打たれたようで、彼女らが原因となってなにか事件が起きるという可能性も低そうです。
毎年、なんだかんだで事件の起こってしまうバレンタインですが、今年はそういった心配はなく明夜の言う通りゆっくりできそうではありますが、明夜はそわそわとどこか落ち着かない様子です。
二人が結婚してそれなりに時間は経つものの、互いに仕事が忙しくこうして二人きりでゆっくりと過ごすという機会は少なく、明夜は未だに緊張や恥ずかしさのようなものを感じてしまうのです。
一方で、アドルフも表情には出さないものの緊張はしているようで、いつもよりも口数が減っていました。
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――ホライゾンフィール
明夜とアドルフが広場でデートをしている頃、
覇道 鼎は
ルシア・ミュー・アルテミス、
仙道にあのふたりと共にホライゾンフィールを訪れていました。
この三人、実は数日前に明夜と共にバレンタインに向けて共にチョコレート作りをしていたのですが、その際にひと騒動があったのです。
主に、料理が苦手な明夜や、そもそも人生初となる料理をするルシアが要因となって。
その際、何度もリトライをする内に、いくらか余分に買っていた材料もすべて使い切り、明夜とルシアの分を作ることが出来ませんでした。
後日、明夜はこの日にアドルフと共に過ごすため、ホライゾンフィールで既製品を買ったという連絡を受け、ルシアもここでチョコレートを買おうと決めたらしく、鼎とにあもそれに付き合うことにしたようです。
「へぇ、一口にチョコレートと言っても色々とあるのね」
「味だけでも、ミルクにビター、ブラックやホワイトなど様々ですわね」
「色んな味を詰め合わせたトリュフチョコや、高級感のあるガトーショコラなんてのもいいよね! もちろん、可愛らしくラッピングとかしてさ!」
明夜に教えて貰ったチョコレートの専門店を訪れると、まだまだ一般常識に疎いルシアに鼎とにあがチョコレートについて教えていました。
それを聞きながら、あれでもないこれでもないとルシアは迷っています。しかし、そんな一時も楽しいようで、自然と微笑んでいました。
「決めた、これにするわ!」
「決まったかにゃ? それじゃあ、にあの作ったチョコをあげるね!」
「え、でもバレンタインのチョコって恋人や結婚相手に渡すって…。も、もしかしてあなた…!」
「うにぃ!? ち、違うから! これは友チョコってヤツ!」
「友チョコ…?」
「バレンタインは元々、ルシアさんの仰るように恋人や夫婦の間でパートナーにチョコレートを贈るものでしたが、最近は友チョコといって親しい友人間でもチョコレートを贈り合うんですのよ。はい、これは私からです」
「そ、そうなの。びっくりしたわ…。でも、そういうことなら頂くわ、ありがとう。それじゃあ、私も。既製品で申し訳ないけど…」
「大切なのはそこに込められた想いですわ。ありがとうございます、大切に頂きますね」
「そうそう! はい、鼎ちゃんも交換しよ!」
悩みに悩んだ末にルシアは一つを選び取ると、にあが自作のチョコレートを渡します。なにやら誤解をされそうになったようですが、鼎が説明をすることでルシアは理解を示してくれたようです。
鼎からもチョコレートを受け取ると、自分用に買おうと思っていたチョコレートと同じものを二つ追加し、鼎とにあに一つずつプレゼントするのでした。
にあと鼎もチョコレートを交換し、友チョコの交換会を終えると三人はそのまま仲良く、ホライゾンフィールでショッピングをしながら仲良く過ごすのでした。
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久々に何一つトラブルの起きない平和なバレンタインを、あなたも大切な誰かと共に過ごしませんか?