――ワールドホライゾン、ホライゾンスタジアム。
「まさかこんな形で昔の闘技場が復活することになるなんてね」
かつて最強決定戦が行われていた闘技場の跡地に、大型のスタジアムが出現しました。
市長の
明夜・ワーグナーはこの施設を『ホライゾンスタジアム』と名付け、
今年の最強決定戦の会場とすることを決定します。
※「新世界の闘技場」参照
「今のワールドホライゾンは想いの影響を受けやすくなっています。
夏のグミ坊主がそうでしたが、
ホライゾンの状態はもちろん、特異者の“創造力”がこの一年で大きく高まってもいるのでしょう」
秘書の
クロニカ・グローリーがタブレットを操作し、新世界創造計画絡みのデータを表示しました。
「新世界創造計画も大詰め。
木戸君たちが頑張ってくれているけど、これからホライゾンは新たな特異点、一つの大世界として生まれ変わる。
正直、ホライゾンがここまで大きくなるなんて思ってなかったわ」
「はい。当初の想定よりも多くの世界と繋がり、裏世界――異なる次元の異世界にも行くことになりました」
バランスが崩れた三千界を救うため。
そのために
ヴォーパルは特異点である地球から特異者適性のある者を誘い、
三千界における活動拠点として世界の狭間にワールドホライゾンが作られました。
「私たちは多くの世界を崩壊から救ってきた。
それによって三千界の因果が、特異者に集束している。
一人一人が、世界の存亡を左右できるほどに大きな影響を与え得るわ」
「聖具の力があったとはいえ、私たちは一度は滅ぼされた大世界を取り戻すことができました。
もちろん、特異者の力だけで運命を覆したわけではありませんが」
「私たちの想いが彼らを動かし、彼らの想いが私たちに力を与えてくれた。
三千界を生かすも殺すも私たち次第……そう言えてしまうほどに、特異者の存在は大きくなった」
去年の時点で特異者が“神”の領域に踏み込みつつあると判断していた明夜ですが、
この一年間での新世界創造計画や界賊セレクターとの戦いを経て、完全に踏み込んだのだと確信しました。
「……このタイミングで繋がったジーランディアには気になることも多いけど、
ホライゾンの新生とセレクターとの戦いの決着が、私たちにとっての大きな節目になるわ」
「今までとは色々と変わるでしょうね。……不安ですか、明夜さん?」
「不安や恐怖はないわね。
そういうマイナスの想いがホライゾンに悪影響を与えるから我慢している、というわけじゃなくて
……これまで色々あったな、って」
「まだ一年を振り返るには少し早いですよ。
今年最後の大仕事が、これからあるんですから」
だから今は、年に一度のイベントを精一杯楽しみましょう、とクロニカが言いました。
「そうね。最強決定戦を盛り上げて、ホライゾンのエネルギーを高めて新生を後押ししましょうか」
「はい! あっ、明夜さん。こっそり参加する、なんてのはやめて下さいね」
「わ、私がそんなことするわけな、ないじゃない」
明夜は去年は止められたものの、リハビリの結果多少は戦闘を行っても大丈夫だと分かり、
今年は正体を隠して参加するつもりでいました。
「なので、先に手を打っておきました。
皆さんと同じ部門に参加させるわけにはいきませんが、エキシビジョンマッチの参加者として登録してあります。
後は明夜さんを指名する人がいるか次第ですね」
「いいの?」
止められると思っていましたが、むしろ堂々と参加していいと言われ、少し困惑します。
「はい。アシュヴィンの二人も、『その方がいいリハビリになる』と言ってましたので」
他にも、この機会にと名乗りを上げた者や、各世界で推薦を受けたであろう者の名が、
エキシビジョンマッチの参加者としてリストに並んでいました。
「それなら、今の私なりに全力でいかせてもらうわ。ふふふ……」
こうして今年の最強決定戦が始まります!