――戦乱渦巻く“機神(ロボット)の世界”ジーランディア。
ジーランディアでは
『鐵公国』、
『ルミナス王朝』、
『自由都市連盟』の三国が、
大陸の中央にある天を貫く塔
「ガドラスティア」を巡って争い、混迷を極めていました。
異世界からジーランディアに様々なものを呼び寄せ、時にジーランディアから送り出すガドラスティアの力は、
ワールドホライゾンにとっても注目すべきものであり、
泥沼化した戦況を変え、塔の謎に迫るべく三国に介入する事となります。
ワールドホライゾンの特異者たちと共にガドラスティアに辿り着くのは、果たしてどの国になるのか――。
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――ワールドホライゾン。
「ガドラスティアの事も気になるけど、『ジェミニケーター』をもたらした“死の商人”についても、まだ正体は分かってないのよね?」
「はい。手口を考えるとあの男――山本 大國の可能性が高いですが、
直接取引した者たちは相次いで亡くなっており、自由都市連盟にも顔を知る者はいません」
先行調査を行った特異者からの報告をまとめ終えた
クロニカ・グローリーが、市長の
明夜・ワーグナーに告げました。
「口封じ、でしょうね。
私たちに正体を知られないようにするというよりは、当事者間での解決をできなくし、戦争を長期化させるために」
ガドラスティアと並んでホライゾンが追っているのが、
異世界の機動兵器をジーランディア仕様に複製する装置「ジェミニケーター」をもたらした“死の商人”の正体です。
過去の手口からあたりはついているものの、確たる証拠は掴めていません。
「死の商人の狙いもガドラスティアなら、ジーランディアで戦局を窺っているはず。
私たちの介入を知ったら、いずれ向こうから尻尾を出すでしょうね」
明夜はクロニカが投影したジェミニケーターを見て、呟きました。
「ジェミニケーター。この戦局を打破するために、あえて私たちも使わせてもらうわ」
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――鐵皇国。
「もう一度ガドラスティアを目指すためにも、最優先は国力と兵力の回復ですわ」
覇道家唯一の生き残りとして皇帝に即位した
覇道 鼎(はどう かなえ)は、生き残った覇道家の家臣団を集め、
会議を行いました。
現在の皇国は三国の中で最も劣勢で、鼎自身も実戦経験が乏しく、
大鐵神のオリジナルの一体である至天神・毘沙門の力を引き出せず、連盟の賞金稼ぎに追い詰められてしまうほどです。
「鼎、鐵皇国の強みは結束と、“冶金技術”よ。
多くのモノノフを失ったけど、職人たちは健在だわ」
「練度の不足を、まずは武具で補いましょう」
鼎に雇われているソルジャーの
ル・フェイはそう助言しました。
そのためにも、武具の素材となる良質な鉱物資源が大量に必要となります。
「しかし……それだけでは足りないわ。
ジェミニケーター。あなたからすれば忌避すべきものでしょうけど、
あれの力もまた強化しなければ、王朝と連盟の力の差は埋められないでしょうね」
「はい。問題は、今のわたくしたちで確保できるモニュメントがあるか、ですわね」
ジェミニケーターの複製能力を強化できるとされる
モニュメント。
その存在は鼎も認知しており、皇国のすぐ近くでも確認していますが……彼女の頭を悩ませる問題がありました。
……モニュメントを守る“守護者”の存在です。
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――ルミナス王朝。
「オレたちは強い。
だが、覇道のおやっさん……鐵皇国の先帝覇道 鐵狼もまた優れた武人だった。
オレたちと幾度もやり合ったあの者たちでさえ、ガドラスガードの足元にも及ばなかった」
ルミナス王朝でも、
バルタザール・ルミナスは側近を集め、円卓を囲んでいました。
最強のベグライターだと自負しているバルタザールですが、現状ではまだガドラスティアに至るには足りないと、
判断しています。
「この場にいる者はオレが認め、オレから王位を奪おうと研鑽を重ねた者たちだと思っている。
実力は十分だ。そんなオレたちに足りないものがあるとすれば、何だ?」
「我々の実力に耐えらえるだけの武器、ですわ」
バルタザールを勇者として認め、仕える司祭
ソラン・ラッグスが言いました。
「シュヴァリエはベグライターと共に成長致しますわ。
ですが成長が著しいと、増大する魔力に武器が耐えらないことも珍しくはありませんわ」
「それにガドラスガード――異世界の機動兵器についても、もっと知る必要があるな。
そのためにも、複製能力を強化し、ジェミニケーターの再現度を向上させなければならん」
王朝の方針もまた、皇国と同様のものでした。
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――自由都市連盟。
「今回の議題は、ガドラスティア到達に向け、どう連盟の予算を割くかについてです。
ワールドホライゾンという異世界からの来訪者も確認されており、
彼らを雇うことができれば、大きな戦力となってくれるでしょう」
「だが、よそ者を優遇するのには反対だ」
「価値には正当な対価を支払う。期待はできるのだろうが、全ては働き次第だ」
「その存在に危機感を覚え、少しは我らの役に立つソルジャーが増えて欲しいものだ。
未だに他国の領地にまで乗り込んで、面倒事を増やす連中も少なくない」
連盟の議会では、盟主の
アリス・エイヴァリーが議長となり、
各都市の首長の意見をまとめていました。
「面倒事といえば、モニュメントを占拠している連中もどうにかせねばな」
「複製能力を強化しているせいか性能が高く、並のソルジャーでは相手になりませんからね」
「報酬の額も低くないんだが、リスクに見合わないって避けられてるのが痛い。
だが、これ以上出すほどの案件かと言われれば……」
「報酬、倍にしましょう。モニュメントを解放し、連盟の名義で保有。
利用する際に使用料を取るようにすれば、報酬で出した分はすぐにペイできるでしょう」
アリスが電卓をたたき、予算配分を行いました。
「それと合せて、武器・弾薬の増産。そのための資源採掘の依頼も出しましょう。
これから先、他の二国との戦いは激化します。
ソルジャーも生き残るためには武装の拡充が必要になりますから、投資した分のリターンは得られます」
首長たちは渋々ながらも納得し、早速部下に命じて各々依頼を出す準備を始めます。
こうして、各国ではガドラスティアを目指すための事前準備が行われることとなりました。