――ワールドホライゾン、人工小世界
ワイドキューブ。
年越しを控え、そこには広々とした大きなステージが設置されていました。
「
どうだ、この黄金のステージ!
エンタメの根本、すなわち『大きいものが光る』を体現しているようだとは思わんか?」
フェスタのライバルである「グランスタ」の会長、
烏扇 統夜が言う通り、
ステージは床から階段、装飾に至るまで黄金色に彩られています。
「今年のパフォーマンス大会はあなたが主導だって聞いてはいたけど――」
「なんというか、派手ですね」
ヴォーパル、そして
紫藤 明夜はステージを見てあっけにとられた顔をしていました。
「それがコンセプトだからな!
わが社の新ステージシステム
KINKAKUJI(キンカクジ)は」
「金閣寺? ……あー、全部金色だから?」
「ああ。しかもステージから五重塔がせりあがる仕掛けもついているぞ!
見ていろ、今動作テストをしてやる」
烏扇がそう言い、指をパチンと鳴らしました。
そしてステージの中央が開いて、下から五重塔が現れます――
しかし。
『YAKIUCHIだ~~~!』
五重塔は燃えていました。
せりあがる焼けた塔の前に立っていたのは、三人組のバンド。
激しいギターと軽快なドラムスの音が、KINKAKUJIに響きます。
「何者だ? いや、それよりも――
何なんだ、この芸術的な登場は」
(塔が燃やされたことはノーリアクションなのね……)
センターに立っているのは、ギターとマイクを携えた千国の
織田信長。
そして、脇を固めるのは豊臣秀吉と徳川家康です。
「聞きやがれ、俺たち
天下布武のニューシングル『YAKIUCHI ~Re:Burning~』を!!」
「怖いですぅ~~暑いですぅ~~!!」
「これくらい我慢しなさいよ家康! グダグダになっちゃったじゃない!」
彼らは高らかに叫び(?)ながら、燃える五重塔をバックに熱いロックナンバーを奏で始めます。
”天下布武”のステージに明夜とヴォーパルはぽかんとしており、烏扇も驚きを禁じ得ない様子でした。
そしてひとしきり演奏を終え、信長はステージの下にいる烏扇にビシリと指を差して言い放ちます。
「これまでのパフォーマンス大会じゃ、フェスタのアイドルに一枚上手を行かれたようだからな。
次はこっちの力を見せつける番だ。
今回の目標は
打倒アイドル! 覚悟しておけよ、烏扇とやら」
「…………」
信長の言葉を受け、烏扇はふむ、と思案します。
しかしすぐに何かを思いつき、
「ならば今大会は、お前たち特異者と我々ヒロイックソングス!のアイドルの
紅白戦としよう。
組分けしてライバル感を出すほうが、そちらのファンも喜ぶと思うが?」
と信長に提案しました。
果たし状を突き付けたつもりだった信長は、それに面食らった様子で答えました。
「お、おう。わかった」
(信長をこうもあっさり諫めるなんて……)
そう明夜が烏扇の手腕に感心していると――
キーンというハウリングを鳴らし、後方ステージから声が響きました。
『はーいそういうことでしたら公・平・に!
この
Project A.M.がジャッジをお引き受けしまーす!』
現れたのは
アマネ、そして
咲田 茉莉花――
アイドルユニット「Project A.M.』の二人です。
『あとは……烏扇会長、ヴォーパルさん。
お二人も審査に加わっていただけますか? その方が楽しそうなので!』
「無論だ」
「私でよければ、引き受けましょう」
アマネの言葉に、烏扇とヴォーパルは頷きました。
「……今気づいたんだけど。
会長、ちょっと若くなってない?」
茉莉花が尋ねると、烏扇はフッと笑って答えます。
「アゴンの先で手に入れた力だが……
今はそんなことより、大会のほうが重要だ。
あの天下布武にインスピレーションも受けたしな。
――
五重塔は燃やせるようにするぞ!」
「それは危ないんじゃないかしら……」
◆ ◇ ◆
こうして。
ワイドキューブのステージKINKAKUJIでは、二組に分かれて舞台の上で競う
年越し紅白パフォーマンス大会が
開かれることになったのでした――。