――フェイトスター・アカデミー。
今日もアイドル達は、芸能活動に異世界冒険にと大忙しです。
小世界での冒険やワールドホライゾンを通した様々な世界の探索に精を出していたアイドルたちですが、
今日のフェスタはとある噂で持ち切りとなっていました。
「だからね、すっっごいライブをやる謎のアイドルがイクスピナに来てるんだって!」
「ひ、光凛ちゃん……さっきからそれだけじゃ全然わからないよ~……!」
プレゼントスマイルにもその噂は届いているようで、
泉 光凛と
奥 莉緒も
既に人だかりの出来ているイクスピナのステージに駆け付けていました。
周囲には観客だけでなく、何やら招待状らしきものを手にしたアイドルたちの姿も見受けられます。
と、そこに声をかけたのは
水谷 大和でした。彼もまたその招待状を片手に怪訝そうな様子です。
「プレスマにも届いたのか? この招待状。
何かの企画やドッキリかとも思ったんだが、みんな何も知らないらしくてね……」
「ふわぁ、そうそう! 私達宛にもそれが届いてたからワクワクしながら来ちゃったんだよね!」
「そ、そういう情報を先に教えてほしかったな……!?」
莉緒がその招待状に目を通すと、
「あらゆる世界の歌と踊りが交わる宴――ワールドライブにご招待!」
と、ド派手な便箋にド派手なフォントで記載されていました。
しかしやはり何か情報が得られることも無く、莉緒がこてんと首を捻ったその時――
派手にギターを掻き鳴らす音と共にステージに派手なライトアップと漆黒の爆炎が発生しました。
「待たせたね、オレの可愛い子猫ちゃんたち!
最近巷を騒がせている“他世界ライブ”でこの世界のライブに革命を起こしている謎のアイドルこそが――
このオレ、
水谷 日向(みずたに ひゅうが)さ!」
彼が登場した途端、観客席から熱狂的な黄色い声が上がります。
しかし大和だけは何とも言えない白けた瞳を日向へ向けていました。
「どう見ても謎のアイドルが兄さんなんだが……」
「うふふ、この私が説明しましょう。謎のアイドル、水谷日向の魅力を」
「いや、どこから出てきた?」
突如として現れ、訳知り顔で大和の肩を叩いたのはマナPこと
紫麝 愛でした。
彼女曰く、水谷 日向は大和と同様に異世界からやってきて地球でデビューした特異者であるとのことです。
各世界から様々な物語を収集し、それをベースに異世界の技術も交えてライブを行う通称
「他世界ライブ」が
地球では新鮮で派手なライブとして若い女性中心に人気が急上昇しているそうです。
「ああ、確かに兄さんのこの曲……ロディニアの特撮ドラマがモチーフっぽいな。
よく見たらロディニアやアークの力も使われてるみたいだ」
「あれっ? だけど、地球じゃヒロイックソングス!の小世界以外の力は使えないはずだよね?」
「ふふ……抜かり無く。グランスタの開発段階の
超・ディメンションシフト(仮)をちょ~っと拝借してるんです。
これで幾らかはこの大世界以外の技も使えますし、私はプロデュースのお礼に大和きゅんのショタ期の写真を貰えるってわけ……ぐふっ♪」
「あんたは何をしてるんだ……?」
その時、色々と呆れ返った様子の大和をステージ上の日向が目ざとく見付けました。
日向は大和を真っ直ぐ指差してバチンッとウィンクをします。
「大和! お兄ちゃんがお前に格の違いを教えに来たぞ! 昔みたいにお前が泣くまで楽しませてやるからな!」
「本当に昔っからオレを対等な存在として見ようとしないな……。
で、そのお得意のライブでオレたちフェスタに対決を挑もうっていうのか」
イケメン兄弟の対峙というエモい構図に、更に会場は湧き上がりました。
誰もが未知のライブに胸を踊らせ、この対決に注目しています。
「おっ、マナPちゃんも協力サンキュー! オレがこのライブ対決で勝ったらぜひ付き合おう!
まあオレ、各世界に彼女が1人以上いるからハーレムに入ってもらうって感じだけど☆」
「な、何言ってるのあの人……!?」
あまりにあっけらかんとした告白に莉緒が混乱した様子でマナPをちらりと見ます。
「お付き合い……そして結婚……!? 正直キミには微塵も興味はないけれど、大和きゅんのお義姉さんになれるのねっ……♪
ああんっ、
私だけとは言わずフェスタの全女子生徒と女性教員をマインドコントロールでキミの彼女にします……♪♪♪」
「な、何言ってるのこの人ー!?」
涎を垂らしながら悦に入っているマナPをがくがくと揺さぶりながら光凛が悲鳴を上げました。
実の兄が起こすあまりの惨事に大和は頭を抱えます。
「そんな馬鹿なことになってたまるか。悪いが、兄さんはオレたちが正面から倒させて貰うよ」
「ははは、言うようになったな大和! そう簡単にお兄ちゃんを越えられるかな?」
かくして、様々な世界の力が集うワールドライブがイクスピナで幕を開けたのでした――!
★☆★
「……ん? なんかステージの方が騒がしい、かも」
「ああ、何だかすごいアイドルさんが来てるらしいですよー」
一方その頃、
村雲 いろはと
西宮 彩がイクスピナの一角のカフェでのんびりとパンケーキを食べていました。
「折角ですから後で見に行ってみますかー?」
「そうね。あ、でもあの1日限定スイーツ……日向パフェと日向ドリンクとかいうのも試してからがいいわ」
1日限定で水谷 日向コラボメニューが並ぶ店は少なくないようです。
イクスピナではそんなメニューを楽しんだり、限定ドリンクを片手にライブの応援を楽しむ休日のアイドルたちの姿も散見されます。