――ワールドホライゾン、人工小世界「ワイドキューブ」
「話には聞いてましたが、これは素晴らしいですね」
「切り替えもちょちょいのちょいだし、ライブやパフォーマンスをする上でできないことはほとんどないと思っていいわよん」
TRIALの代表、
リサ・グッドマンに案内され、
ステージを見回したフェイトスターアカデミーの校長
木 馬太郎は満足げに頷きました。
裏世界との繋がりも強くなったこともあり、今年は去年よりも規模を拡大し、
『新春フェスティバル2021』として正月イベントを行うこととなったのです。
「
去年もパフォーマンス大会を行いましたが、せっかくのお祭りです。
ただ競い合うだけでなく、のびのびと楽しむこともできればなお良いでしょう。
複数のステージを設け、露店も建ち並ぶ……去年よりも賑やかになりそうですね」
「祭りは派手にやってこそでありんす」
パラミタからは校長たちを代表し、葦原明倫館の校長
ハイナ・ウィルソンが見学に来ていました。
遠目ではありますが、ハイナの目に鳥居が留まります。
「あそこは『和エリア』よん。ワールドホライゾンには以前ビーチがあって、そこに神社もあったんだけど……吹き飛んじゃったからねー。
移設はしたけど小さくなっちゃったから、ああやって再現してるのよ」
年末年始は国や世界によって様々ですが、日本の正月行事に対応できるよう、ワイドキューブ内には神社も建てられていました。
「にゅふふ。この機会にボクも色々と楽しませてもらうにゃ」
にやにやと笑っているのは、神州扶桑国出身、現在はロディニアでも活動している
“三代目”久重 元内です。
この四人が今年のパフォーマンス大会で審査員を務めることになります。
「大会はこっちの大ステージで、大会に参加せずに気ままにライブやパフォーマンスしたい人はサブステージで。
当日は皆で盛り上げていきましょー!」
■□■
ライブ・パフォーマンス向けの会場準備が進む中、ワイドキューブの一角には闘技場も設営されていました。
「なんですの、これは?」
境屋の隣で、メイド服の少女――
神野 羽生(しんの はう)が怪訝な表情をします。
「年末と言えば格闘技だ。年は越しちまったがな。
リニューアルした最強決定戦は闘技大会とは大分毛色が違うものになったから、
こっちでは従来のやり方に近い形でできればと思ったわけだ。
あっちで見送られた
タッグマッチ部門は、この方が向いてる」
境屋が腕を組んで笑いました。
「名付けて、『新春タッグトーナメント』。トーナメント方式で最強のペアを決める大会だ。
人数次第じゃシードが必要だが、まぁ参加者の実力次第だな」
「ふぅん……」
「どうした? お前さんも参加したいのか?」
「わたくしの力を押さえつけておいて言いますの、それ」
ハウは元々界賊の一員で、現在は境屋の預かりとなっています。
境屋は彼女に名を与え、対外的には義娘として扱っていました。
「おっ、はーちゃんじゃん。元気? そっちのおっさ……何か若返ってね?」
「気にすんな、そんな日だってある。お前さんもいたのか」
二人に声を掛けてきたのは三千界管理委員会のエージェント、
スーリヤです。
彼女はホライゾンアカデミーの女子制服を着崩していました。
「ま、これからこっちで世話になるし。それにお祭りって聞いたら来るしかないよね」
今は地球に帰ることができないため、スーリヤはホライゾンアカデミー生として居座っています。
「ああ、そうだ。お前さん盛り上げんの得意そうだから、司会進行やってくんねぇか?」
「マ? まぁいいけど」
そして、正月フェスティバル2021の当日を迎えることとなりました。
今年最初のイベントをお楽しみ下さい!