災厄の化身“禍神(マガカミ)”が人知れず蔓延る禍(わざわい)の世界、神州扶桑国。
霊力の暗黒面とされるマガカミに対抗できるのは、霊力に触れられる異能者――「神通者」のみ。
神通者は帝都・扶桑市に設立された「六明館学苑」に所属し、
神通者の壊滅と、災厄の化身『九厄』の復活を目論む者たち「七難会(しちなんかい)」
との戦いを繰り広げていました。
それに対抗すべく、かつて九厄を倒したと言われる六大流派の祖の武器【天下六霊槍】を集めた特異者達は
ついに決戦へと向かったのでした。
それぞれの流派とゆかりのある敵、そしてそれらを統べる立花 幹久との戦いは熾烈を極めますが、
特異者達は六大師範と共にこれを撃破
一時の間平和が戻った扶桑国ではありますが、まだマガカミ全てが消えたわけではなく、
「修祓隊(しゅばつたい)」の仕事は続きます。
更に昨今では“進化した”マガカミもいると噂されており、
それらへの対策が早急に考えられているのでした――。
■ □ ■
――六明館学苑 講堂。
「ふぁあ……一体何なんでしょうこんなに朝早くに……」
学苑内最も広い講堂の片隅で
陸奥純平は大あくびをしながらそうこぼしました。
「純ちゃん昨日の連絡聞いてなかったわけ?
今日は“各流派の師範代”が免許皆伝見込みのある隊士を集めて試験するって言ってたじゃん」
純平の言葉に
三野 美那子はやや呆れたような表情でそう返しました。
「佐士くんは一織流だし豪ちゃんは紫垣流、それぞれの試験会場にいるよ。
今日ここにいる知り合いは純ちゃんだけなんだからしっかりしてよね」
「そういえばそんな話を聞いてたような……
最近いろいろ忙しくて色々虚ろになってたんですよね……」
昨日、一部の隊士のみに配布された召集の連絡。
それは各流派の免許皆伝者を測る為の試験を行うというもの。
“試験内容は当日に発表、参加不参加は自由。そして怪我は自己責任”
との旨が記載された紙が配られたのだった。
その背景には、マガカミ自体が知能を持ち、人に紛れるなどの
卑しさを見につけ始めているという事がありました。
七難会との戦いを終え、マガカミの被害件数そのものは減っているものの
一件当たりの被害は大きくなる傾向があるのでした
「何やるのかわかんないけど、やってやるしかないじゃん?
みんなに置いて行かれるわけにはいかないし!!」
気合十分な美那子は元気いっぱいに手を突き上げるのでした。
■ □ ■
――帝都 上谷区(うえやく) 商人街
「にゃっふっふ~~~~もっとおいでもっとおいで~~~」
摩天閣跡に建てられた簡易的に建てられた塔の上で
“三代目”久重 元内、通称げんちゃんは笑みを浮かべていました。
その手には依然発明したマガカミ誘引器が握られています。
「周囲のマガカミを引き寄せて、その間に復興作業!
ついでにマガカミの数も減らせて一石二鳥!やっぱボクって頭いいにゃ」
集められたマガカミは隊士達によって次々と対処され、
復興作業は平和に進んでいきます。
「……さて、君はボクに何の用かな?
“この機械”につられてきたわけじゃなさそうだけど?」
集まるマガカミの数が落ち着いてきた頃、
げんちゃんは今までと違った真面目な表情で
自身の背後に現れた気配の主へと声をかけます。
「…………」
しかし、気配の主である黒い装束に身を包んだ人影は
何もしゃべることなく消えてしまうのでした
「にゃるほど。あれが巷で噂の“義賊”さんね
ちょぉっとばかり興味が出てきたなぁ……」