暗黒の世界アーキタイプ
三千界統合機関の研究員ヴィトによってアーキタイプの遺跡、その一つが破壊され、
“人工の特異者”セラフィ、そして数多くの界霊が目覚める事件が発生しました。
それらは特異者にとって鎮圧されましたが、
ヴィトは自身の操る界霊を用いて逃亡、セラフィはそれを追って姿を消します。
ゲートを用いず姿を消したセラフィ。
ホライゾンが改めて彼女の姿を確認したのは、瘴気が地表のほとんどを覆う世界、ゴダムでした。
□ ■ □ ■ □ ■ □
黄昏の世界、ゴダム
世界を蝕むスポーン因子によって邪神群と呼ばれる
化物になる恐怖にさらされながらも、
なお強く生きる人々が暮らす世界。
ゴダム北西部、ショーマッドの街、そこから数時間移動した何もない荒野の真っただ中。
瘴気こそ薄いですが、人間が暮らすにはおおよそ向いていないといえるほどの荒れ地に、
巨大な研究所が建てられていました。
「ここ?」
「あぁ、間違いねぇぜ。
あの時の気持ち悪い雰囲気がプンプンしやがる」
その程近く、何もない空間から現れ荒野に降り立ったのは、
真っ赤な巨体を持つ界霊と一人の少女。
界霊に包み込まれているようにして現れた少女
セラフィは、
その腕から軽く飛び降りると、研究所を見定めました。
「じゃあ行こうか、ジス」
そして研究所に向け一歩踏み出したとき。
「お、ほんとにいた。ちょっと待てよ!
えと……セ……セラ……」
「セラフィさん、ですね。
私は川端 詩織といいます。先日あなたと共に戦った特異者達の仲間です」
セラフィに追いつくようにして荒野に現れたのは、
ある理由からゴダムに滞在していた
高杉 大介と
川端 詩織、そしてミカワヤの
マイケル・サブロフでした。
「突然ごめんな、俺は高杉 大介。
明夜さんから連絡をもらってな。無茶しないように見ていてくれってさ。
他の仲間たちももうじき来ると思うぜ」
次いでマイケルも自己紹介をし、セラフィは少し驚きながらも自身とパートナーである界霊を紹介しました。
「アイツらの仲間ってんなら信用するが、気ぃ付けろよ。
ヴィトとかいったか? ヤツ、前とは比べ物になんねぇほどの力をつけてやがる。
それに、中から感じる界霊の数、十や二十じゃ効かねぇぞ。
……ん、なんだ、他に人間の……ガキ……? も同じくらいいやがるな……」
「……やはりな」
界霊ジストレスの言葉に反応を示したのは、名乗ってから沈黙を守っていたマイケルでした。
「実は最近ミカワヤが裏から関与して運営している孤児院から子供が誘拐される事件が多発していてな
やはりお前たちに協力を仰いで正解だったようだ。界霊とやら、お前たちじゃないと対処できない相手なんだろう?」
「もちろん最大限の協力はするがな」そういうとマイケルは“ミカワヤ”の面々へと連絡を始めました。
「あの人、界霊を寄生させる研究をしていると言ってました。嫌な予感がします。
……私のような人を増やしてはいけません。それは……とても悲しいことですから」
セラフィの言葉に、他の三人は頷きました。
□ ■ □ ■ □ ■ □
―――研究所内部
怪しい薬品や機械が並ぶ中で、全身白い服を着た男、ヴィトが椅子深く腰掛けていました。
その顔からはどこか余裕がうかがえます。
「……片足を失ったのは誤算だったが、結果オーライ。
スポーン因子を取り込むことで、俺はもう一つ上の存在に昇華できた。
超火力に再生能力……これであのババアと小娘に報復してやれるぜ……!」
先の戦いで失われた片足は、スポーン因子を取り込んだ影響か、
蛸のような形状になり床をうごめいています。
「……それに、例の研究対象もそろそろ実践テストをしてもいい頃合いだな。
ただの界霊にも飽きてきた頃だし、遊んでやるか……」
ヴィトの目の前には大量のカプセルと、その中で眠る子供たちが横たわっていました。
彼は立ち上がり、近くにあった装置に何かを打ち込みます。
すると、数秒の後、ゆっくりとカプセルのふたが開き、中にいた子供達は目をつぶったまま立ち上がり、
研究所の前、荒野へと裸足で並びました。
子供たちのうなじには、拳大の機械が埋め込まれるようにしてついています。
全身白い服に身を包んだヴィトはその様子を研究所内のカメラから見て満足そうな笑みを浮かべていました。
そして少しだけ映す方向を変えた別のカメラに、セラフィを始めとする特異者たちの姿が映し出されます。
「ようやく来たか、小娘とうざったらしい特異者共。
俺の研究の邪魔をする奴は全員サンプルにしてやるよ……!!」