“灰色の世界”ガイア。
越界聖具「アーカーシャ」は消滅し、ライン帝国皇帝レオンハルト一世の野望は潰えました。
アーカーシャ顕現の影響により発生していたマナの乱れ、およびギアの機能不全も解消。
メトロポリスは特に強い影響があったものの、多少の被害が出る程度で済みました。
そして月日は流れ――
* * *
――メトロポリス第二層第七区、ギアーズ・ギルドメトロポリス第七支部。
「ふぅ……どうにか後始末も終わったな。いやー参ったぜ」
「汽人暴走の被害のあった第三層もほぼ元通りですわね。
ニュー・セントラル・シアターの営業も再開しましたわ」
書類整理を終えた
シャーロット・アドラーと
ジェーン・モースタンはティータイムに入りました。
テーブルを囲う椅子には、
ウィリアム・ヘルシングと
ウルフマンの姿もあります。
「一時は世界の危機だったってのに、すっかり平和なもんだ」
「汽人を触媒に超常の存在を呼び出し、そいつの力でこの世界を、三千界を支配しようと目論んでいた。
そんな荒唐無稽な話、何も知らない民衆は信じないだろ」
テーブルの上には新聞が置かれ、一面ではライン帝国の新たな国家体制について報じられていました。
「レオンハルトがクーデターの際に暗殺されたことで、シュヴァルツ家の血統は途絶えた。
アレクサンダー社の調査で、社が設立に関わった孤児院のある少女がシュヴァルツ家の遠縁にあたる事が発覚。
彼女を皇女とし、パダーニャ王国第四王子を迎え入れて次期皇帝とすることが決定した。
……色々書いてあるが、要するに“救国の英雄”であるアレクサンダー社がライン帝国の主導権を握ったってことだ」
「ウィリアム様も、A級昇格断らなくても良かったのではありませんか?」
「ガラじゃねぇよ。それに、気ままに依頼をこなしてた方が気が楽だ。
で、ウルフマン。連邦と帝国の関係はどんな風に書かれてる?」
「国内の混乱を突き、帝国領に侵攻したモスコヴィア連邦だったが、皇帝レオンハルトの死を知り撤退。
和平が結ばれ、今回の帝国の動きも歓迎している。……記事ではそうなってるな。
汽人会を通じて王国、帝国、連邦間で相互協力も始まっているが……ウィル、連邦の実態はお前の方が詳しいだろ?」
「あっちは汽人会が国の中枢みたいなもんだ。できれば二度と行きたくねぇな」
ウルフマンが新聞を畳み、シャーロットを見ました。
「こういうのは、然るべき連中に任せればいい。
シャロさん、何かいい依頼はないか? 最近、商売の方がいまいちでな。
まったく、クラリスは大活躍だってのに……」
新聞の裏面では、
クラリス・バルサモが
アレクサンダーのメトロポリス支社と専属契約を結んだことが報じられていました。
「なに、俺たちは俺たちのペースで生きればいいさ。食い扶持に困らない程度にな」
「はい。先ほど依頼リストを更新しましたので、お好きな依頼をどうぞ」
「ギアの調整いるなら、特別料金で引き受けてやるぜ。ウィリアムのおっさん」
ウィリアムとウルフマンは掲示板のリストを確認し、それぞれ依頼を受けるのでした。
* * *
――メトロポリス第三層第二区、メトロポリス星導学校。
「やぁやぁ生徒諸君。星霊学の臨時講師を務める
サンジェルマンだ。
私のことは先生だとは思わず、気軽にサンちゃんと呼ぶといい」
また変な先生が来たと生徒たちがざわつく中、
使用人学生として通っている
ノエルは、前と変わらず学生生活を送っていました。
「ふふ、また変わった先生が来たわね」
「わっ、ラブレスさんっ!? 驚かせないで下さいよ」
「それはできない相談ね。私は神出鬼没な女。そしてこの学園の理事長よ。
……ふふっ、まだまだ楽しくなりそうね」
その言葉通り、ノエルが少し目を離すと車椅子の少女の姿はなくなっていました。
「そうですね。“任務”の方も頑張りませんとっ」
* * *
――メトロポリス第一層第九区。
「キョウさんも来たんですの?」
「連れないなぁ、はるるん。せっかくのメグとの休日だよ?
私だって女子トークに花を咲かせたくなる時はあるのだよ」
「追われたり、変態に拉致られたり、変なのに体を使われたりで、なかなか休まりませんでしたからね。
ようやく余計なことを気にせず遊べます」
瑞野 春緒、
キョウ・サワギ、そして
メグの三人が集まり、
市街に繰り出しました。
「さて、どこに行きましょうか?」
戻って来た、メトロポリスのなにげない日常。
特異者の皆さんは、この一日をどう過ごしますか。