正義(good)と悪(evil)が戦い続けるヒーロー世界、
ユーラメリカ。
ワールドホライゾンが11番目に到達した世界の都市デルタシティでは、
異能者「ネオジェネレーション」のevil(イービル)による犯罪が横行し、
3つの異世界の侵略を受けていました。
evilや異世界の侵略に敢然と立ち向かうのが
『ヒーロー連盟(ヒーロー・ソサエティー)』に所属するヒーローたちなのです。
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――デルタシティ、ダウンタウン
商業施設が建ち並ぶ街の外れに、老朽化し、爆破解体を待つ廃ビルがありました。
数日後に爆破解体を控え、ビル中に電気雷管のケーブルが張り巡らされています。
当日は爆破解体をヒーローチャンネルで生放送することもあり、看板アナウンサーの
コトネ・カッシーニが寸暇を惜しんで下見に来ていました。
「この場所からならいい絵が撮れそうですね……ん?」
廃ビルを見上げていたコトネは、本来であれば無人のはずのビルの中に人影を見ました。
「あれは……アイドルヒロインの
ノゾミ・シルベイラ!? 確か、ヒーローの活躍を展示する“ユーラメリカヒーローコンベンション”に参加する予定じゃ……?」
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「この間のヒロイン総選挙、あれなんだよ!!」
ノゾミ(望見)・シルベイラは、サマーイベントの一つに参加しようとしたところ、数名の男によって連れ去られ、廃ビルの中に連れ込まれていました。
彼女はデルタシティでアイドル活動を行っているヒロインです。
笑顔と歌で人々を癒しており、先日民間で行われたヒロイン総選挙で見事8位に入りました。
「俺ら、CD買って、写真集買って、応援したのに……俺ら以外に愛想振りまきやがって!!」
「応援してくださってありがとうございます。皆さんのおかげで8位になることができました。大変嬉しいです。でも、私はヒロインですから、笑顔と歌でevilに傷つく人々を癒すのが……」
「俺ら
“ナパーム・マッドネス”の努力を無駄にするのかよ!」
彼らはノゾミが、彼ら以外に歌や笑顔を向けるのが気に食わないようです。
ノゾミは落ち着いて彼らを説得しますが、いきり立っており、聞く耳を持ちません。
「ヒロインは辞めて、俺らのためだけに歌うって誓えよ!!」
「そんなこと……できません」
「ああん? そんな口利いていいのかよ!?」
「「「ノゾミ先輩……」」」
「!?」
男性数名が、美少女数名を連れてきましてた。
いずれも、ノゾミに憧れてアイドルヒロインを目指しているなりたてのヒロインたちです。
「このビル、もう少しで爆破解体するんだってな。ご丁寧に電気雷管のケーブルが張り巡らしてあったから、俺らが爆薬を仕掛けてやったぜ。返事をしなければビルごと、後輩ごとドカンだな」
「そんな……」
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『……という訳で、大変な事になりました』
「Shit! ヒロインの卵を人質に取るなんて、evilのやりそうな手だワ!」
偶然現場に居合わせていたコトネから連絡を受けた
アイゼン・ハワード市長は、ヒーロー連盟ビル内に居た
輝洲飛影たちを市長室に呼びました。
「ノゾミ・シルベイラを始めとした5名のヒロインが、“ナパーム・マッドネス”というevilグループに捕らえられているワ。全員無事に救出すること、これが今回のミッションヨ!」
「“ナパーム・マッドネス”はアイドルを応援する悪の秘密結社と聞いているわ。構成員は20~30名前後で、ノゾミは彼らの応援でヒロイン総選挙で8位を取ったようね」
「evilに票を入れてもらうなんてズルくない? まぁ、ティアの可愛さに比べればどうってことないけどね! 今度のユーラメリカヒーローコンベンションでも、可愛いティアのコスプレをするヒロインがたくさんいるでしょうし!」
「票そのものに罪は無いからな。evilにも愛されるヒロインなんて凄いじゃないか」
「……それがこの結果だが、彼女はデルタシティの癒しの存在として必要な人材だ」
アイゼンから連絡を受け、
マーヤ・ヤマブキが“ナパーム・マッドネス”についての情報を集めていました。
ヒロイン総選挙で3位だった
ティアナ・ベルベットローズの物言いに、飛影は微苦笑し、
アレクサンドロス・ルートヴィッヒは共闘を承諾していました。
「陽動を仕掛けて“ナパーム・マッドネス”の構成員をうまく分断させつつ、ノゾミを始めとしたヒロインを各個救出していく作戦で行くわ。タイミングと時間に注意してね。“ナパーム・マッドネス”のボスから起爆装置のスイッチを奪うのも忘れないように」
「俺とティアナが陽動を仕掛けるから、アレクサンドロスは本命を頼む」
「えー、ティアは本命じゃないのー!?」
「……承知した」
「救援を呼ぶカラ、Not hurryヨ!」
そしてワールドホライゾンの特異者たちに、アイゼン市長から依頼が来たのでした。