シナリオガイド
沼地に潜む禍神を討伐し、孫娘の平穏を取り戻せ!
シナリオ名:梅影慈旺の任務奇譚 / 担当マスター:茸
神州扶桑国、帝都中心部――。
いつも通り平穏な日常を送る人々の中を、梅の花が風に乗って流れるように進みます。
街の人々に声を掛けられては立ち止まる梅の花――基、梅花柄の羽織を纏う男が彼等に陽気に応えます。
「やあ。最近変わりは無いかい?」
「お蔭さんでな。また近く来たら寄ってくれ。兄ちゃんならいつでも大歓迎だ」
人々との会話と街の景色を眺めながら散策を楽しむ彼は、修祓隊士の梅影 慈旺(うめかげ しおう)という青年でした。
「――おばあちゃん居るかい?」
とある商店に立ち寄った慈旺は店内を突っ切って住居となっている奥の部屋に声を掛けます。
少し待つと、静まり返った家の奥から足音がゆっくり近付いてきました。
彼女の姿を確認するなり慈旺はホッと笑みを浮かべます。
「様子を見に寄ったんだけど、調子はどうだい?」
「お蔭様で今日も生きながらえてるよ。慈旺ちゃんも相変わらず男に磨きが掛かって……」
頬に手を添えうっとり顔の彼女に、慈旺は笑い飛ばします。
「お世辞が上手いな。つい先週も会ったばかりだろう。そんなに直ぐには変わらないさ」
「慈旺ちゃんは自分に無頓着だからねぇ。相変わらずって言ったのは、止まることなく日々男前になり続けているっていう意味でね?」
「はいはい。俺の話はいいから。それより、今日は店閉めてるのかい? お客が居ないようだけど」
途端に彼女の表情が陰ったことを慈旺は見逃しません。
「何か困ってるなら俺に話してみるのはどうだ? 一人より二人で考えた方が好転することもあるからな」
急かさず、無理強いしないことを言葉に込めて、あくまで選択肢の一つとして彼女が打ち明けやすいように促します。
彼女は何かを思案しながら持ってきた座布団に座り、慈旺も店と住居の境となる段差に腰を据えて真剣に向き合います。
また少し待つと、彼女はゆっくりと重い口を開きました。
「……わたしの心配し過ぎかもしれないんだけどねぇ。田舎に嫁いだ孫娘が病にかかってしまって。
ただの風邪だから見舞いはいらないって言っていたんだけど、やっぱり心配で心配で……こっそり様子を見にいこうかと考えていたんだよ」
「おばあちゃんの孫娘……ハルミさんか」
「あら、覚えてくれてたんだねぇ」
幼くして両親を亡くしたハルミさんを祖母である彼女が育ててきました。
そのため何度か話題に孫娘が登場していたため慈旺が覚えていても不思議ではありません。
「心配し過ぎだって笑われるかもしれないけれど……気が気でなくてねぇ……」
「病で伏している家族を心配するのは当然だ。事情は分かった。もし行くようなら俺に声を掛けて欲しい。無理に一人で行こうとしないようにな」
「ええ、ありがとう」
彼女の笑顔を少し取り戻すことに成功した慈旺は別れを告げると、再び賑わう街に流れて行きました。
*****
ハルミの祖母、タキコから六明館学苑に文が届いたのはあれから一週間後のことでした。
手紙の文面には慈旺の名があり、彼に当てたものであることから今回の任務が回ってきました。
「見舞いのつもりがマガカミ案件とは……」
先遣隊の調査からマガカミがいることは間違いないようで、
まだ正体は掴み切れていませんが、手紙に綴られた孫娘の様子から急を要する事態であることは明らかでした。
慈旺は手紙から視線を上げ、闇夜に佇む人物に尋ねます。
「依頼は当然受けるとして、……まさかあなたが手紙を届けてくれるとは思いませんでした」
その理由を自分で理解している慈旺のとぼけた言い回しには、
黒で身を包み闇夜に溶け込んでいる人物――睦美 景が素っ気なく答えます。
「他で修行をしているとはいえ、お前はまだ睦美流の人間。……まあ、他の者から見れば慈旺の行動は不可解極まりないだろうが」
「えー? 俺は至って普通にしてるつもりですけど。玄さんとの手合わせも週二程度だし……」
そう零す慈旺でしたが周りに得体が知れないと思われていても仕方がないと何処か吹っ切っている様子です。
それも理解しているので景は何も言いませんでした。
「しっかり己と向き合えているなら良い。持って生まれた血は変えようがなく、変える必要もないのだから」
景をハッとするように見つめた慈旺は、そっと口元を綻ばせました。
「――ま、どうにかなりますよ。とりあえず今は大切な友人の不安要素をしっかり取り除いて来ることにします」
話を終えると音もなく姿を消した景に、全部片付いたら改めてお礼に伺おうと心に決めた慈旺なのでした。
担当マスターより
こんにちは、または初めまして。
GMの茸です。
数ヶ月振りですが、今回も楽しい物語をお届けできるよう努めて参りますのでよろしくお願い致します。
今回より、梅影慈旺編となります。
手始めに彼のことを少しでも知ってもらえたらなという思いで制作しました。
初心者歓迎です。興味を持たれましたら是非ご参加ください。
NPCについては下の方に記載御座いますのでご確認ください。
*全パート共通*
任務地は郊外にある田畑の広がる田舎。孫娘、ハルミの住む家です。
広い裏庭には池があり、昼間は何の変哲もない池ですが、夜になると視界が霞み異臭の漂う沼のような姿に変貌します。
邪気の濃度が日に日に増し、池の時より広大となり水底にはヘドロが沈殿し、そこからマガカミが這い出てくる寸前まで悪化しています。
修祓隊が到着する頃には沼から出てくると予想されます。
一帯を包む靄や異臭は負の霊力が含まれているため人体に影響を及ぼします。
修祓隊士ならば普通の人間ほどではないため対策をするか早々に片を付けてしまえば問題ない程度です。
*各パート詳細*
【1】沼地のマガカミ討伐 難易度:4
昼間の池の状態で浄化をしてもマガカミ本体を浄化できるわけではないため沼が出現する夜の任務となります。
異臭が漂い始めると徐々に一帯が変化していきます。
靄と異臭に包まれた池が沼地に変貌すると視覚では10倍ほどの広さとなり、
底から水をたっぷり含んだ泥人形のようなマガカミが無数に這い出てきます。
上級者であれば一撃で粉砕可能ですが、【2】の浄化が終わらない限り無数に出てくるので持久戦となります。
本体は残ったヘドロを集約した一固体です。マガカミの最終攻撃となるため力はこれまで蹴散らした泥人形の比ではありません。
本体が倒れれば暫くは泥を成形できず這い出て来ることはありませんが、浄化が終わるまで警戒を怠らないよう努めてください。
【2】沼地の浄化 難易度:3
10倍ほど拡大し、沼地と化した一帯を全て浄化して頂きます。
一度の浄化では時間の経過と共に復活してしまうので、重ねての浄化が効果的となります。
既に沼から這い出て来たマガカミが数体、敷地の外へと出ようとしています。それ等の対処もしながらの作業となるでしょう。
上級者であれば一撃、階級が低くても沼から少し離れたマガカミは多少力が衰えるので数回攻撃を与えれば粉砕可能です。
日の出と共に沼は池に戻ってしまい、マガカミにも逃げられてしまうのでそれまでに浄化をお願いします。
【3】孫娘ハルミの救出 難易度:3
マガカミの影響を受けているハルミは寝たきりでいましたが、
マガカミの力が強まってきた現在、夜中に起き出し裏庭、特に沼周辺を徘徊するようになりました。
彼女を沼地から遠ざけ正気を取り戻すことが任務となります。
夫と二人暮らしで、彼も協力的です。最後にハルミの様子を祖母のタキコに伝えて来たのも夫でした。
池の管理を主にハルミが行っていることからもろに影響を受けたのだと思われます。
家の中にまで異臭が流れ込みつつあり、こちらも浄化が必須とされるでしょう。
まだマガカミが家の中に入ってきている様子はありませんが、裏庭の池と建物の距離を考えると最後まで油断できません。
ここには祖母のタキコも同行し、ハルミを見守っています。
夫とタキコの護衛もしつつハルミの浄化をお願いします。
ここでは梅影 慈旺が登場します。
*****
*主なNPC*
・梅影 慈旺(うめかげ しおう) 見た目は30歳前後
流派:睦美流 皆伝
隠密が得意でありながら普段は派手な梅花の羽織を纏い街を散策するのを趣味としている。
明るい性格で見た目は風雅な男だが、鬼の血を引いており一族唯一先祖返りしその力が発現している。
鬼の力を制御するため、睦美流皆伝の取得を機に紫垣玄の元で稽古をつけてもらっている。
誰にも話していない厄介事を抱えているが、師範の景には気付かれているだろうと推測している。
・沼地のマガカミ討伐 【現在のMC参加人数:5】
・浄化班の負担が増えないよう味方の間をすり抜けて来た敵を漏れなく討伐します。
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・沼地の浄化 【現在のMC参加人数:9】
・家の方に影響が行かないようまだ霧の薄い外堀から浄化を行います。
(マガカミ数体なら浄化しながらでもやれそうです!)
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・孫娘ハルミの救出 【現在のMC参加人数:6】
・まずは早々にハルミの浄化を。マガカミが消えるまで影響を受け続けるとみて結界を張っておきます。
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