シナリオガイド
砂漠の3国を1つにする新路線。その先に待っているのは明るい未来? それとも――
シナリオ名:黄金の軛【Ⅰ】 / 担当マスター:九里原 十三里
■軌道式砂船の新路線開通式
その日、ローランド砂漠地方の小国キーラサルタ王国には多くの人々が集まっていました。
同盟国であるツァンサ王国、チャタリアンサ王国との間に砂船の軌道路線が新設され、その開通式典が行われているのです。
「わが国は500年前の魔王祭当時に作られた砂船の基幹部分を始めとし、希少な遺産を数多く保有してきた。皆も知っての通り、それらは現代技術では復元不可能なものばかりだ」
キーラサルタのターミナル駅であるナータリ駅ではキーラサルタ国王ルブドサルタンが民衆に向かってそう演説します。
「これまではそれらは軍用利用されてきた。しかし今後、我が国ではそれらを平和利用すべく旅客用砂船として転用していく方針とする。では話が長くなってすまなかったな。今日、私が皆に見せたかったのはこれだ!」
大きな布の幕が取り払われると、そこにはピカピカに磨き上げられた立派な砂船がずらりと並んで蒸気を上げていました。
今では新しく作ることができない砂船の基幹部分に現代の最新技術を組み合わせ、快適な砂漠の旅ができるように開発された大型の旅客用砂船です。
その姿は転生者がよく知る蒸気機関車によく似ています。
「これらの車両はツァンサ王国、チャタリアンサ王国との共同で開発したものだ。本日は一番列車にツァンサ王国国王イルークサルタン、チャタリアンサ王国国王ハリナサルタンにもお乗りいただくことになっている。
そして列車は、終点駅のオミーヤ駅へと運行する。運よく『プレミア乗車券』に当選した乗客の皆も、今日は共に列車の旅を楽しもうぞ!」
旅客運行の記念すべき最初の1本目となるこの一番列車は、ナータリ駅からオミーヤ駅まで、3国の王様と抽選で切符を手に入れた乗客を乗せ、チャタリアンサ王国にある途中のシンズーク駅を経由しての特急運航が行われます。
人々の間では3カ国に跨いだこの路線開通はキーラサルタ、ツァンサ、チャタリアンサの3つの国が1つになる兆しではないかという噂が流れていました。
「3つの国はあまりにも小さく貧弱で、これまでは魔物や他国からの侵略の脅威に脅かされてきた。だが、新路線を通じて国が1つになれば発展も望めるはずだ」
「統一されればヴュステラント連合国に加盟する可能性もあるらしいぞ。そうしたら、連合国の砂船路線ともいずれ繋がるんじゃないか?」
「新国王にツァンサ王国のイルークサルタン王の娘リビヤ王女が即位されるというのは本当かな?」
「ああ、あの方はチャタリアンサ王国の女王の孫であり、キーラサルタ王国の国王のひ孫でいらっしゃるからな。あの方なら満場一致で女王に即位できるというわけだ」
3つの国に新しい時代がやってくる――鉄道沿線にはそんな期待感が高まっていました。
しかしその裏で、女王への即位が期待される王女リビヤは1人、胸騒ぎを覚えていました。
「お母様、やっぱり止めるべきだわ。お父様もお婆様もひいお爺様も、今日の列車に乗ってはダメよ。何だかとても嫌な予感がするの」
「何を言ってるの、リビヤ。もう式典は始まってしまったのよ?」
リビヤの母であるツァンサ王妃ネヤは小首をかしげます。
2人は一番列車の発車に続き、別路線の終点であるウェノー駅へ向かう二番列車に乗り込むことになっていました。
「警備の兵士達が大勢乗ってるんだし、大丈夫よ。何も心配要らないわ」
「一般兵士の警備なんて魔物の群れに襲われたら何の役にも立たないじゃない! せめて冒険者の人達に沿線を調査してもらうとか……!」
「仕方ないわねぇ。じゃあ、今からでも来てくれそうな冒険者がいないかギルドに問い合わせてもらうから、貴女はお父様たちのお見送りに行きなさい」
ネヤに促され、リビヤは駅のホームに立ちます。
3人の王たちは赤と銀色に塗られた一番列車の窓から手を伸ばし、リビヤと握手を交わしました。
そしてそれがリビヤにとって3人との最後の別れとなったのです。
■襲撃者達
キーラサルタ王国で式典が行われていたその日、冒険者たちはギルドから依頼され、チャタリアンサ王国を訪れていました。
目的はチャタリアンサ王国にあるトキーオー遺跡の調査です。
遺跡の壁画に書かれた暗号を解読をしていた冒険者たちは、調査が始まってすぐにこの遺跡に「とある場所」への行き先を指し示す魔道具の羅針盤が眠っていることを突き止めました。
しかし突然ギルドにネヤ王妃からの依頼が舞い込んだため、一部の冒険者たちは予定を変更し、二手に分かれて依頼先に向かうことになりました。
「二番列車、出発いたします!」
冒険者たちが駆けつけるのを待って、リビヤは母ネヤと共に青と銀色に塗られた二番列車に乗り込み、ウェノー駅を目指して出発しました。
しかし列車が経由駅である西ニーポリ駅に停車していた時のことです。
突然ホーム上で立て続けに爆発音が響き、列車を見に集まっていた見物人たちから悲鳴が上がりました。
「ネヤ王妃様、リビヤ王女様、テロです。窓から離れてください」
兵士たちがネヤとリビヤの乗る御料車の窓を閉め、周囲を固めます。
隣の車両に控えていた侍女たちも懐刀を手に2人を守ろうとしますが、戦いなれていない侍女たちは恐怖に震えていました。
(きっとテロリストの目的は私ね……やっぱり、イベントなんか中止すべきだったのよ)
リビヤは母や侍女たちと共にじっと息を潜めます。
列車の後部車両の屋根には旗や幟(のぼり)を手にした何らかの思想集団と思しきの者たちが飛び移り、爆発物を手に大声で怒鳴っていました。
旗には拘束具に固定された2頭の牛の頭が描かれ、幟には「統一邪悪」と真っ赤な文字で書かれていました。
「我々は聖なる軛(くびき)の志士である! 平和を騙るキーラサルタ、ツァンサ、チャタリアンサの統一は3国を悪しき思想に貶めんがための魔の陰謀である!」
魔の陰謀から母国を守るためには新たな国の王であるリビヤを殺さなければならない――聖なる軛のテロリストたちはそう叫びます。
そして人々や護衛兵士たちに向かって爆弾を見せびらかしたり、空に向けて銃を撃ったりして威圧するのでした。
そしてほぼ同時刻――
シンズーク駅へと向かおうとしていた3国の王の乗る一番列車は、リビヤを絶望の淵に叩き落すような惨劇に見舞われていました。
「嘘だ……嘘だ……これは夢だ、ああ誰か、そうだと言ってくれ……!!」
最後尾の車両に乗っていた車掌は悪夢のような光景を前に、その場から動けなくなっていました。
先頭の基幹車両は炎に包まれ、脱線して横倒しになっています。
そして3人の王の乗っていた御料車は砂漠に投げ出され、金属光沢のある蛇のように長い体と巨大な4枚の翅(はね)を持つ昆虫型の魔物が何体も巻き付いていました。
鋭い牙で食い破られ、穴だらけになった車体は既にグシャグシャに潰れてしまっていました。
「あれはプロトヘルメスだ! プロトヘルメスの群れが一番列車を襲ったんだ!」
人々は口々に叫びます。
乗客の乗っていた5号車から15号車は無事でしたが、それより前の特別車両は横転・炎上しており、特に先頭の2つの車両は酷い状態でした。
もはや3人の王たち傍にいたお付きの者たち、運転手らが助かることはないでしょう。
「早く逃げろ! 逃げるんだ!! 早くしないと我々も食われるぞ!!」
生き残った人々は成す術もなくただ逃げ出すほかありませんでした。
しかし、御料車の後ろの車両に乗っていたキーラサルタ国王の護衛騎士団長ハロドは、生き残った3国の護衛騎士たちにこの場に留まるよう怒鳴っていました。
「貴様らはそれでも国王の騎士か、この腰抜けどもが! 貴様らの使命を思い出せ!!」
ツァンサ王国、チャタリアンサ王国の護衛騎士団の団長や副長は列車の下敷きになったり、王を助けに行こうとして魔物に殺されたりしていて命を落としていました。
ハロドには生き残った騎士たちをまとめ、彼らを殴り飛ばしてでも為さなければならないことがあったのです。
「貴様ら下っ端にも分かるだろう! これは3人の王が持つ君主の証を狙って奴らが起こしたテロだ! プロトヘルメスは野生の魔物じゃない! 奴らの手先だ!!」
そうハロドが叫ぶと、恐れおののいていた騎士たちがハッと我に返ったような表情になりました。
彼らに対し、ハロドは急ぐよう発破をかけました。
「分かったらさっさと剣を取れ腑抜けども! 一匹たりともプロトヘルメスを逃すな!!」
担当マスターより
今回よりローランドの砂漠地方にあるキーラサルタ、ツァンサ、チャタリアンサという3国に関わるシリーズ「砂の軛」をお送りいたします。
シリーズは【Ⅰ】【Ⅱ】【Ⅲ】の3回でお送りし、今回ご参加いただいた方には僭越ながら次回への招待を送らせていただきます。
【1】テロを阻止する(難易度4)
ネヤ王妃の依頼を受け、チャタリアンサ王国の西ニーポリ駅へ駆けつけた、もしくは二番列車に護衛として乗り込んでいた皆さんのパートです。
主な仕事は二番列車を襲撃した聖なる軛のメンバーによるテロ攻撃の阻止です。
テロリストたちは見物人やリビヤ王女を助けようとする兵士たちを牽制するために銃や爆発物を見せびらかしており、それらが彼らの主な攻撃手段のようです。
【2】ハロドに加勢する(難易度4)
ネヤ王妃の依頼を受け、チャタリアンサ王国のシンズーク駅周辺へ向かっていた皆さんのパートです。
主な仕事はキーラサルタ国王の護衛騎士長ハロドに加勢し、一番列車を襲撃したプロトヘルメスと呼ばれる魔物を倒すこととなります。
プロトヘルメスは国王たちの遺体ごと君主の証を飲み込んでいる可能性があるため、逃がさずに倒しきることが肝心です。
プロトヘルメス:
体長4~6m。金属光沢のある蛇のように長い体と巨大な4枚の翅(はね)を持つ昆虫型の魔物。
集団で大きな獲物を襲うことを好み、相手の体に巻き付いて締め上げ、頭部の突起で穴をあけ頭を体内にねじ込んで弱らせるのが主な攻撃手段。
【3】トキーオー遺跡を調べる(難易度2)
元々の依頼であるチャタリアンサ王国のトキーオー遺跡に残った皆さんのパートです。
(※このパートでの行動は【1】【2】の事件が起きた時間よりも前のものとして扱われます)
トキーオー遺跡は魔王祭時代の砂船の廃路線および廃墟の建物群とされ、壁画に記された暗号によればどこかに「とある場所」への行き先を指し示すという魔道具の羅針盤が眠っているようです。
未発見の遺物やお宝がまだ眠っている可能性があるため、羅針盤を探すほか、引き続き暗号解読などの「遺跡そのもの」に対する調査も必要です。
※ユーザー情報
このパート、実は【1】【2】の事件と無関係ではないかもしれません。
■基本的な状況について
キーラサルタ、ツァンサ、チャタリアンサの3つの小国を跨いだ砂船の軌道路線が新設された。
この3国は近いうちに平和的に統一され、同時にヴュステラント連合国にも加盟するとされている。
新国王には3国の王の血縁である王女リビヤが即位するといわれ、実際に今のリビヤの立場はそれぞれの国の「皇太子」のようなものである。
しかし統一とリビヤ即位を歓迎する声が多い一方で、様々な理由から統一に反対する人々も存在する。
中には過激なテロ行為に出る思想集団も存在し、リビヤ自身も身の危険を感じている様子である。
■軌道式砂船の路線について
チャタリアンサ王国を経由し、ツァンサ王国、キーラサルタ王国の各終点駅までを結ぶ砂船の路線。
使用される客車にはキーラサルタ王国で軍事利用されていた砂船の基幹部を使用しており、外見は転生者達のよく知る蒸気機関車そっくり。
まだ「~~線」や「~~鉄道」といった名前は決められていない(計画段階では仮の名称として「三国間連絡航路」となっている)
主要駅はキーラサルタ王国のナータリ駅、チャタリアンサ王国のシンズーク駅、西ニーポリ駅、ウェノー駅、ツァンサ王国のオミーヤ駅など。
■一番列車、二番列車の構成について
1号車:基幹部分(運転手など乗務員のみが乗車)
2号車から4号車:御料車(3国の国王、ツァンサ王妃ネヤ、王女リビヤおよび護衛や世話係などが乗車)
5号車から15号車:一般客室(プレミア乗車券の当選者が乗車)
■NPC
・リビヤ
年齢:17歳 性別:女性
ツァンサ王国の王女。ツァンサ王国国王イルークサルタンと王妃ネヤの娘。
チャタリアンサ王国国王ハリナサルタンの孫であり、キーラサルタ王国国王ルブドサルタンのひ孫でもある。
3国の国王と血が繋がっている王女であり、3国が統一された際には国王として即位することになっている。
長い黒髪に琥珀色の瞳でいかにも「気の強そうなお嬢様」な容姿をしている。
・ハロド
年齢:40歳 性別:男性
キーラサルタ国王の護衛騎士団長。
ツァンサ王国、チャタリアンサ王国の護衛の者たちと合同で列車の護衛に当たっていたが、魔物の襲撃に遭う。
坊主頭に濃い茶色の瞳、筋肉質でいかにも「いかつい軍人」「鬼軍曹」といった容姿をしている。
・ネヤ
年齢:27歳 性別:女性
ツァンサ王国の王妃。チャタリアンサ王国国王ハリナサルタンの娘。
娘のリビヤの指摘を受け、冒険者ギルドに各路線の護衛依頼を出した。
長い黒髪に緑の瞳でいかにも「いい所の奥様」な容姿をしている。
(死亡)
・キーラサルタ王国国王ルブドサルタン……リビヤの曽祖父(※父方のひいお爺ちゃん)
・チャタリアンサ王国国王ハリナサルタン……リビヤの祖母(※母方のお祖母ちゃん)
・ツァンサ王国国王イルークサルタン……リビヤの父
【組織】
・聖なる軛
拠点:???王国 構成員:???人 リーダーの名前:???
キーラサルタ、ツァンサ、チャタリアンサの統一に反対する思想集団。
軛(くびき)とよばれる家畜用の拘束具に固定された2頭の牛の頭をシンボルマークにしている。
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・テロを阻止する 【現在のMC参加人数:6】
【目的】
聖なる軛の人達を止める
【動機】
大勢の人が巻き込まれそうだから
【行動】
これ以上爆発を起こされると危ないから止めに行くよ!
爆弾を持っている人が一番危ないから、どうにか隙をついて無力化したいな。
武器を投げて気を引いて、その隙にタックルして捕まえられないか試してみるよ!
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・ハロドに加勢する 【現在のMC参加人数:5】
【目的】
プロトヘルメスの討伐
【動機】
護衛騎士たちを死なせたくない
【行動】
君主の証が失われないよう、列車を襲った魔物を退治し、逃亡を阻止します。
長い体に大きな翅、という体の形からして地上で素早く動くのは得意そうに見えません。
電車に巻き付いているうちにまずは翅を攻撃し、飛んで逃げられないようにしましょう。
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・魔王祭時代の遺産を探す 【現在のMC参加人数:4】
【目的】
羅針盤を見つける
【動機】
どこが「とある場所」なのか気になる
【行動】
トキーオー遺跡で羅針盤を見つけて「とある場所」の謎を解くぜ。
壁画の暗号がきっかけでトキーオー遺跡に羅針盤がある、って分かったってことは引き続き暗号解読は必要かもな。
羅針盤がどこを指してるのか、楽しみだぜ!
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