シナリオガイド
妖怪達と共に国を護ろう
シナリオ名:物の怪小国・御影国【最終話】 / 担当マスター:森乃ゴリラ
玉藻は急ぎ、指で作った狐窓で影の方角を見ました。すると影の根元には人の国がありました。輝かしい太陽を遮るようにして、黒々とした影は佇んでいます。そんな影に対して人々は悲鳴を上げ、助けを求めるように右往左往としていました。
すると妖怪達は先程集めていた恐れが少しずつ力が失われていることに気がつきます。
自分たちよりも大きな恐れが生み出されてしまったからです。それらを肯定するようにして巨大な影は徐々に形を膨らませていました。
「アタシたちの力を削ぎたかったのは分かるけども、それよりも面倒な厄介ごとを呼び寄せるだなんて、随分と面倒なことをするもんさねぇ。そんな事したって人間は一銭も儲からないじゃないの」
「それもこれも貴様らが齎した悪事ゆえのもの、後悔するがよい!!」
陰陽師は一矢報いたと至極満足そうに笑い声を轟かせました。
しかし当の玉藻にはまったく心当たりがありません。ぽかんとした表情を浮かべたままです。
そうこうしていると他の長らも集まってきました。そんな彼らに向かい、玉藻は問いかけます。
「……アタシが人間を驚かしたのなんて200年も前のことだけど……五月雨が何かしたのかい?」
玉藻は白娘子の長である五月雨へと尋ねます。
「馬鹿を仰らないで下さい。暇な狐とは違うんですよ、でも……そうですね。人間を魅了するのが悪と言われれば反論はできません。私が美しすぎるために……そんな……私のせいで争いが? ……私のために争わないで!!」
五月雨は美しすぎることしか心当たりがないようです。玉藻はやや呆れながらも狗神憑きの長・冥次へと視線を投げました。
「いや、ここ暫くは塒で飯食ってた覚えしか無いんだが……そもそも狗神憑きなんて人間のところにいく間に餓死しちまうだろ? 国にたらふく飯があるんだから、わざわざ出ようなんて思わねえよ」
常に飢えと暮らしている狗神憑きにとって、遠出というのは難しくもありました。道中の生き物を全て喰らっていけばなんとかなるかもしれませんが、それならば直ぐに誰の仕業が分かってしまいます。
玉藻は「そうよねえ」と呟き、鬼の長である睦月の方を見ました。
「あー? 確かにウチらは暴れ回ることもあるが、大概は国の中だろう? というか最近は祭り仕事で忙しかったからねぇ。毎日祭りが開かれてるんだ、設営やら運営やらで外の国に行く暇もないよ」
鬼の多くは大酒飲みで祭り好き。血の気が多いのも玉に瑕でしたが、ここ最近は祭りのせいで忙しくもしていました。心当たりもないと睦月が言えば、玉藻は人と関わりのありそうな烏天狗の長・疾風へと向き合います。
「人間を帰すときに不手際があったか……? でもわざわざ帰してるんだから、礼を言われるどころか文句を言われるだなんてけったいなこった」
そも、彼らは人間達を帰す立場の妖怪です。何かしでかすようなことはないのだと、やや不満そうな表情を浮かべていました。
残る長はただ一人。玉藻はアマビエの長・群青に問いかけます。
「最後に群青……というかお付きの河童、通訳して」
「………………」
「はい、うちの長は『そも人と関わるのは小さき悪事のみ、それに恐れを抱けば以後は勝手に怖がってくれるものではなかろうか』と言ってます!! あと僕らは水がないと生きていけないので、あんまり国から離れませんね」
玉藻はそれぞれの長に話を聞き、大きな溜め息を拵えました。
聞いた話を纏めれば、誰も人間達を驚かしていないということになります。
「誰もやってないって言ってるけど、人間はなにか勘違いしているんじゃないのかい?」
その言葉に待ったを掛けたのは捕らえられていた陰陽師です。
「馬鹿を言うな、貴様らのせいで我が国は前代未聞の危機に見舞われているんだ!! 旋風に地震、飢饉に大火事、不作や疫病などに悩まされる我らを嘲笑っていたろうに!!」
言われ玉藻は珍しく顔を顰めます。それは他の長達も同じでした。
「……もしかして、自然災害までアタシらのせいにされてるんじゃないの、これ」
玉藻の言う通り、人間らはどうにも数多の災害に悩まされているようでした。
確かに妖怪達の中には自然を操るものもいます。しかしそれはあくまで小さなものですし、人の営みを邪魔立てするような大きなものは御法度とされています。何せ人が減れば妖怪達も力を失ってしまうのですから。
そしてそもそもそれだけ大きな力を扱えるのは、六芒の掟に連ねる者くらいです。そんな彼らがやっていない、覚えもないというのですから……長達は大変困惑しました。
「マズいんじゃねえの? これ」
疾風は呟きます。
人間から悪者扱いされるのは別に構いません。それは恐れを介して信仰に昇華するのですから。
しかしこうして力を削がれてしまった今、厄災という強大な魔力に抗う術はありません。多少なりとも戦えるかも知れませんが、事態は悪くなる一方でした。
「じゃあどうするってのよ、アタシらは認知と信仰によって生かされているだけなんだから」
現れたのは新たなる厄災――恐れの対象です。それもどんどんと膨らんでいる具合ですから……災害によって心身共に疲弊してしまった人間達の恐れが尽きる事はないでしょう。
放っておけば怪達は消え失せ、人間達の国も滅びの一途を辿ります。
沈黙が落ちました。
常日頃楽観的な妖怪達も今となっては神妙な顔つきです。
何せ国が二つも、それもいっぺんに滅ぼうとしているのですから。
「じゃあさ、助けちゃえばいいんじゃないの。ねえ、兄様」
「良い所かっさらって、人間の信仰心を得ればいいんじゃないの。姉様」
「「だって認知と信仰があれば良いでしょ」」
何も恐れに拘る必要はない。双子がそう述べれば、妖怪達は顔を見合わせました。
担当マスターより
シナリオガイドの閲覧、ありがとうございます。
御影国シリーズ、最終話となります。
二話目にご参加下さった方には招待をお出ししておりますので、ご都合が合えば是非ご参加下さい。(空きが出た場合は途中参加してくださって大丈夫です。その場合は「一話目の時点で実は居た」「今来た!!」などお好きな理由で大丈夫です)
○ 過去、小世界ハイラハンシリーズにご参加くださった方向けアイテム
・【翼の鱗】
ブランダーバスで竜と縁を結んだ方は、該当の竜を召喚することが出来ます。
・【小さなスパ茶缶】
アレクシス・ソフォクレスにて魔王パメラに仕えた方は、ほっと一息つける美味しいスパ茶を淹れることができます。
・【抜け落ちたサメの牙】
辺境都市サヴァイブでシャークハンターをした方は『フライングシャーク(調教済み)』を呼び寄せることが出来ます。
〇 特殊な加護、特殊アバター。世界観について
一話目をご覧下さい。種族は変えても大丈夫です。
〇 アクションパート解説
元々人間の国は様々な自然災害によって滅亡の危機に瀕していました。
それらの原因を妖怪だと考えていた陰陽師たちは御影国の水鏡池へと侵入し、厄災を解放してしまいます。
そして強大な力を以て人々に新たなる恐れを植え付け、妖怪達の力を削ぐ事に成功しましたが、それは完全なるお門違い……。
このままではどちらの国も滅んでしまいます。
それを防ぐためには掟に下ってはいるものの稀人であり、独自の理を有している特異者の力が必要です。
恐れを取り除きつつ、新たなる信仰を立ち上げ、厄災を封印する。
というのが最終話で目指すこととなります。
こう書くとちょっと難しく感じてしまうかもしれませんので、下記のアクションパートを参考にしながらどれに参加するか決めて頂ければと思います。
人数については然程重要視していません。パート全部に最低でも一人が居ればOKとします。好きな所で暴れてみましょう!!
【1】人間の国を助ける
捕らえられた陰陽師が語っているとおり、人間の国は『旋風に地震、飢饉に大火事、不作や疫病』によってボロボロです。
こちらのパートではそれらを立て直すのがメインとなります。
対策でも構いませんし、直接手を加えてもOK。
たとえ全て解決に至らないとしても人間は強いものです。少しでも改善されれば恐れは遠のきます。それはつまり、厄災の弱体化へと繋がることになります。
そして妖怪達がそれを行っているということが分かれば、力を削がれた妖怪達にも新たなる信仰が生まれることでしょう。
恐れ以外の信仰――。長年、恐れの象徴として暮らしていた妖怪達にとっては知らぬものでもあります。
特異者であり稀人である貴方達が率先して、彼らに新たなる信仰が生まれるように手伝ってあげて下さい。
・滅びそうな人間の国を助ける
・妖怪達は恐れを齎すものだけではないと知ってもらう
といった感じで動いて貰えるといいかなと思います。
ですがこれ以外にも「これをしてみたらどう?」「こういうのもいいんじゃないだろうか」というのを思いつけばそちらでも構いません。
森乃ゴリラから判定勝ち狙ってみてもぜんぜんおっけー!!
尚、今までの伝手や同種族といった妖怪達から力を借りることもできます。
上手いこと力の削がれた彼らにも役割を持たせてあげたり、人間達と交流させてみたりしても構いません。
共存という路線を狙うのも面白いかもしれませんね。
以下、二つのパートについて
人の勘違い――陰陽師達の行いにより、有象無象の厄介ごとは形となって立ちはだかっています。それらを再度、水鏡池に封じようというのがこちらのアクションパートです。
しかし厄災も黙ってはいません。様々な手を用いて邪魔立てしてきます。それらを掻い潜り、無事に儀式を執り行えるようにしていきましょう。
【2】厄災に立ち向かう
厄災は人々の記憶に新しい『旋風に地震、飢饉に大火事、不作や疫病』という恐れを読み取り、それを用いて周囲の全てを滅ぼそうとしています。そういった自然災害を防ぎながら毅然と立ち向かう姿を人間達に見てもらいましょう。
力のある存在が厄災と渡り合っている所を見れば、人間達にも希望が宿ります。
それは即ち、恐れによる増幅を食い止める手段でもあります。
・災害を打ち消すように立ち回る
・巨大な厄災である影と戦う
この二つが重要となります。
火消しを行いながら立ち回ったり、風の流れを制御してみたり。はたまた巨大な影と戦う……というのがメインになるかと思います。
影の攻撃は上述したとおり自然災害に繋がるものが多いです。上手く対策をしてみたり、今までの伝手や妖怪達と協力して立ち回ってみましょう。
【1】と同じように森乃ゴリラから判定勝ち狙ってみてもぜんぜんおっけーです。他人に迷惑を掛けなければOKってもんですよ。
【3】儀式を手伝う
六芒の長は失われつつある力を振り絞り、御影国の水鏡池に再び厄災を封じられるように準備を行っています。
しかし彼らの力は削がれていますので、魔力のあるものの補助が必要となります。
ですのでこちらでは
・魔力を注ぐこと自体を手伝う
・陰陽師達を説得してもらって手伝う
・長たちを手伝う
この三つがメインとなります。
今までの伝手や妖怪達と協力して立ち回ってみてもよし、【1】と同じように森乃ゴリラから判定勝ち狙ってみてもぜんぜんおっけーです。他人に迷惑を掛けなければOKってもんですよ。
NPC
・睦月(鬼の長)
鬼の女性です。快活な性格をしており、酒が大好き。
活気があればやる気も出るってもんだろ? と、一部鬼に祭りの準備をさせながらも水鏡池で封印の準備をします。
「野郎共、活気をつけるために祭りだ祭り!!」
・冥次(狗神憑きの長)
狗神憑きの男性です。虚ろな目が怖いですが、気の良い兄ちゃんです。
腹を空かせながら、封印のためにおにぎりを両手で抱え、水鏡池で封印の準備をします。
「腹減ったんだが……飯ねえの? なーんでもいいんだけど……」
・玉藻(尾裂き狐の長)
尾裂き狐の女性です。楽しいことが大好き、今回の事態も「面白いじゃない!!」と大変乗り気です。
ここで成果を上げれば掟の中でも尾裂き狐がのし上がれるのじゃないの? と打算的な考えで尾裂き狐たちに様々な指示を出しています。
「金は天下の回り物、アンタらきびきび稼いでらっしゃい」
・五月雨(白娘子の長)
落ち着いた見目をしている女性です。美しすぎる罪を嘆きながらも水鏡池で封印の準備をしています。
「わたくしが美しすぎるから人々が……」
・群青(アマビエの長)
無口なアマビエ、受け答えは全て『瞬きのみ』で行います、が初見では分からないので通訳の河童が常に居ます。
水鏡池の横にある水路に漂いながら、封印の刻を待っています。
「…………(瞬きパチリ)」
「……はい、長は『……我々に出来る事は少ない、稀人の協力を待とう』と言っております!!」
・疾風(烏天狗の長)
玉藻のロクでもない性格に呆れている苦労人。
烏天狗達に指示を出しながら水鏡池で封印の準備をしています。
「配達滞ってて死にそう……でもそんなこと言ってる場合じゃないんだよな」
その他のNPC
・相馬 柊斗、相馬 柚月
互いの事を姉、兄と呼び合うちょっと変わった双子です。
「手伝ったほうがいいのかな、兄様」
「手伝えることはあるのかな、姉様」
と、互いの事を姉様兄様と呼び合いながらも何をしようか考え中です。
細々としたサポートくらいならできますが、戦闘能力は然程ありませんので、そちらだけはご注意下さい。
・陰陽師達
稀人や妖怪達を相手にしたり、厄災を解き放ったせいで彼らはへとへとです。
妖怪の長たちの状況を見て『もしかして自然災害は妖怪達のせいではない?』と小さな迷いも生じています。
上手い具合に説得できれば戦力として扱えることもできるでしょう。
〇 マスターコメント
御影国最終話でーす!!
いつも通り厳しいルールを設けている訳ではありませんのでご安心下さい。
お好きなところで出来そうなことや、やりたいことを試して頂けると嬉しいです。
今まで培った経験、あるいは伝手を使ってなんとかしても良し。アクションパートの気になったところへ飛び込んでみるのも良しです。
皆さまの色々なアクションを楽しみに待っております。
それでは御影国は最終話、最後までお付き合い頂ければ幸いです
・人間の国を助ける 【現在のMC参加人数:6】
滅びそうな人間の国を助けて新たなる信仰を得るぞ
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・厄災に立ち向かう 【現在のMC参加人数:8】
厄災に立ち向かって希望を得るぞ
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・儀式を手伝う 【現在のMC参加人数:6】
再度、水鏡池に封印するために助けるぞ
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