クリエイティブRPG

【アルカナ】運命に抗い、哭く獣

リアクション公開中!

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【アルカナ】運命に抗い、哭く獣
基本情報

マスター:寺岡志乃
ワールド:セフィロト
 
 

料金

MC参加:200ポイント
LC参加:100ポイント
フェロー追加:25ポイント
LC/フェロー最大追加数:2
文字数追加:50ポイント

スケジュール

2021年09月10日公開!

シナリオガイド

審判によるダーリシア国民総崇拝者化計画を阻止せよ!

シナリオ名:【アルカナ】運命に抗い、哭く獣 / 担当マスター:寺岡志乃


 
●大統領官邸

「嘘! ルーくんが!?」

 戻った吸血鬼たちから羅石の訃報を聞いて、審判は青ざめました。
 羅石は数少ない純血の吸血鬼であり従兄弟、審判にとっては弟も同然の存在。そして数百年の長きに渡る怨讐の理解者として、一族を率いる彼女の支えになっていた者の一人でもありました。

「嘘よ! 嘘嘘嘘嘘嘘――――信じるものですか!」

 ふらふらと室内を歩いては手に触れる物をたたき落とし、投げつけ、踏みにじります。本が壁にぶつかる音、花瓶が割れる音やキャビネットのガラスが割れる音など、部屋の外まで響いていたでしょうが、ドアは不思議な力で閉じられていてドアの外の者は誰も中へ入れません。使用人は言うに及ばず、この国の大統領であり彼女の傀儡でもあるマシュー・ヒベニアや部下の吸血鬼や半吸血鬼たちもドアの前でうろうろするだけです。

(やれやれ。せっかく新しい部屋に移ったというのに、だいなしじゃないか)

 癇癪を起こして暴れる審判を眺めて心中でため息をつき、愚者はおもむろにソファから立ち上がりました。

「それだけ暴れれば十分でしょう。いいかげん鎮まったらどうです? ヒステリーを起こすなんてみっともない」
 ――これだから女は。
「なんですってえ!?」
「そんなことよりもっと重大事があるでしょう。
 アルカナを見つけたのに隠していたというのは、ケイオスさまへの裏切り行為ですよ。どう申し開きをするつもりですか」
「……うるっさいわね、ケイオスの腰ぎんちゃくが!! みんながみんな、アンタと同じと思わないで! アイツはそんなこと百も承知で、気にしてなんかないわよっ!!」

 投げつけた花瓶が愚者の頭の横を通り過ぎ、窓を割って外に飛び出しましたが、愚者は表情一つ変えませんでした。

「そうですね。私はあなたと違う。魔人たちに暇つぶしで国を滅ぼされたあなた方の境遇には同情しますが、もう決着はついているのです。女を失い、子孫を残せなくなったあなたたちは滅びるしかない。
 他国を奪い、兵を作り、ナイフートへ復讐したところで無意味。おとなしく終焉を受け入れなさい」

 一瞬で審判が凍りつきます。
 そしてとても本心から言ったとは思えない、侮蔑の視線を審判へ向けて、愚者は退室していきました。



 愚者の退室後、破壊音はますますひどくなりました。
 そうしてついに何も破壊する物がなくなった部屋の中央で泣き崩れている審判を、彼女の弟蔡霞(ツァイシァ)が抱き起こします。

「気が済みましたか、姉上」
「小霞、ルーくんが死んだわ……」
「知っています。報告は俺も受けました」
「この500年で、何十人の同胞が消えたのかしら……。とうとうルーくんまで……」
「まだまだ一族は健在ですよ。羅石は気のいいやつでした。みんな彼の死に傷つき、腹を立てています。傷の痛みも、怒りも。われわれには力をそそぐだけ。
 愚者の言葉は聞きました。彼は間違っている。敗北を認めるにはわれわれの持つ力は強すぎて、終焉を受け入れるにはわれわれの命は長すぎる。アルカナとはいえ、しょせん彼も人間。一族を背負うあなたの哀苦は理解できない。
 さあ、もう泣くのはやめて、立ち上がってください。涙は消して、退屈を嫌う、傍若無人で無慈悲な女王に戻るんです。あなたと志を共にし、忠誠を誓った一族の者に、復讐という生きる糧(かて)を与え続ける強い女王に。
 そうしたなら、あとは号令を発するだけです」

 審判は蔡霞の支え手を解き、自らの足で立ち上がりました。
 ドアに近づき、大きく引き開けた審判はもういつもの自信にあふれた審判で、艶然とした笑みをマシューへと向けます。

「ねえマシュー。アタシのお願い、かなえてくれるわよねぇ。
 アタシ、この国の名前を変えたいの。煌血蔡華帝国にね」

 その言葉を聞いた使用人たちが一斉にざわつきます。
 蔡華――それはかつて東方の地で栄え、数百年前に滅んだ吸血鬼たちの国名です。7日に渡る魔人との壮絶な戦争に敗れ、蔡華国は滅亡し、今では吸血鬼は伝説上の存在として子どもの寝物語に語られるものとなっていました。
 その名に改名したいという以上、無関係とは到底思えません。
 胸中でさまざまな憶測、疑惑を渦巻かせながら人々が見守る中、彼女の崇拝者であるマシューもさすがにこれには即答できずにいました。

「……審判、それはできないよ……」
「なぜ? アタシのお願いは何でもきいてくれるって言ったじゃない? あれは嘘だったの?」
「嘘じゃないとも! しかし国名を変えるのは、わたしの一存では不可能なんだよ」

 大統領は、この国では28の小国がまとまって1つになったことの象徴的存在。大統領権限は大きく、その役割は広範なものではありますが、執政権を持つのは28人のシアナド・エランズであり、国民が主権者である共和制民主国家として、合議・投票による多数決で決めなくてはなりません。

「……ふぅん。つまり?」
「つまりね、エランズの4分の3の賛成と、国民投票による3分の2の賛成票が必要なんだよ。
 わたしは会議の議題として改名を提出することはできるし、国民投票を行わせることもやってみせよう。愛するきみのお願いだからね。きみの願いをかなえるために全力を尽くすよ。だけど……時間をくれないか?」

 28人中8人いる女性のシアナド・エランズが蛇蝎のごとく審判を嫌っていることを知っているマシューは、8人を従わせる方法として脅迫、工作等さまざまな手段を視野に入れていますが、それでもかなり困難でしょう。まして、国民投票で確実な結果を出すためには、どれほどの票操作を必要とするか……。
 それを聞いても、審判の強気の笑みは揺らぎませんでした。

「民の大半がアタシを支持すればいいんでしょう? 簡単よ」

 審判は、国主催のコンサートイベントを開催することをマシューに命じました。
 歌姫である彼女のステージを全てのチャンネル、街頭ディスプレイ、ネット配信と、ありとあらゆる手段で同時配信し、国中へ届けるビッグイベントです。

「この国の男も女も、全員アタシのしもべに変えてやるわ……」


※          ※          ※


 シアナド・エランズの1人で寡婦のイーファ・オライアン(旧姓:バラッカム)は、知人たちを招いてのティータイム中にそのイベントの招待状を受け取りました。
 審判はもともとロマ出身の歌姫であることは彼女も知っていましたし、この国のアルカナである彼女を全国民に紹介する――2年もたって、しかもアルカナのお披露目とは悪趣味な、と思わないでもない――というのは、多少思うところはあっても納得できる開催理由ではあります。
 ただし、それが建前であることも、彼女には透けて見えていました。

「どうします? お姉さま」

 妹のシネイド・キーファーが、紅茶を飲む手を止めて、ひそめた声で訊いてきます。

「興味はない。だが、これはブリアナを連れ出すのに役立ちそうだ。邪魔な走狗どもの大半は女王蜂とともに巣を空けるだろう。忌々しいあの僵尸(チアンシー)使いのガキもそうしてくれたら万々歳だが……わからんな。
 ローナたちにこれを渡せ。誰にも見られるなよ」
「わ、わかりましたわ」

 姉とDNLAの橋渡しをしているシネイドは、イーファが滑らせて寄越した招待状を急いでハンドバッグにしまい込みました。

「でも……、ローナたちから聞いた話では、ブリーは、外へ出るのを嫌がっているそうですわ。お父さまたちのことを自分のせいと思っているみたい……そうではありませんのに。不憫な子」

 シネイドはそっと目尻の涙をハンカチで吸い取りましたが、イーファはふんと鼻を鳴らして彼女の感傷を払いのけるように手を振ります。

「ブリアナがどう思うおうが関係ない。あれが質にとられたままではわれわれが満足に動けん。それを解消するのが先だ」
「お姉さま、いつもそのようなことばかり口にされるから、周囲の者に誤解されるのですよ」
「それがどうした。おまえも物事は常に単純化して、順位をつけろ。見誤らずにすむ。
 大体、ブリアナ本人がわれわれを理解しているとは言い難いのに、なぜこちらがあの子をデリケートに扱ってやる必要がある」
「子どもだからです。まだほんの14歳の、傷つきやすい女の子ですわ」
「では傷つきやすい子ども心をケアする役目はおまえたちに任せよう。オレはオレで、決着をつけるやつがいる」

 話はこれまでと、イーファは席を立ち、庭園を横切って邸内へ戻っていきました。

(ブリアナは心に刻んでおくべきだったのだ。何が起きようが、どうあろうが、そんなことはオレたちの絆には何の関係もないと。
 たとえおまえがケアティックアルカナであろうとも!)


●DNLA拠点『火竜の酒蔵亭』

 シネイドから招待状を受け取ったDNLAは、拠点の1つである『火竜の酒蔵亭』で、コンサート会場の場所と日時とスケジュールが書かれた紙をテーブルに広げて苦悩していました。
 故レオン・バラッカムの長女であるイーファは、DNLAに末妹ブリアナの捜索と確保を条件に活動資金を出資し、情報を流していました。ですから居場所が判明したブリアナの確保に動くのは当然として、しかしそれだけでいいのか、と思います。

「堕落し、国民から心の離れたヒベニア大統領と、彼をたぶらかした毒婦審判。二人そろってカメラの前に出てくるんだよ? 制裁を下す絶好の機会じゃないか! 全国民にやつらの罪状を訴えることができる!
 それに、ローナの気持ちを考えてごらんよ! 姉さんが僵尸なんぞに変えられちまって……。サラだって、何かと情報を提供してくれてたじゃないか。きっと官邸にだって、何かつかめないかと思って行ってくれたに違いないんだよ。それであんな目に……」
「わかってる。そりゃ、私だって同じ気持ちさ! だけど根本的に、人数が足りないのはどうしようもないだろっ」
「『踊る金羊亭』への手入れで、ジョーたちが捕まっちまったのが痛いな……。今から集められるだけ集めても、2つに分けられるほどの数が集まるかどうか」
「くそっ!」

「よかったらおれたちも手を貸そう。少しは失った兵力の穴埋めになるだろう。
 それと、審判のコンサートへの対抗策だが。ちょっとした提案があるんだが、やってみないか?」

 それまで黙って彼らの話を聞いていた松原 ハジメが、壁から身を起こして彼らの輪に加わりました。
 
担当マスターより

▼担当マスター:寺岡志乃

マスターコメント

 こんにちは、またははじめまして。寺岡志乃といいます。
 このシナリオは「【アルカナ】月なき夜に、影は」の続きとなっていますが、今回のガイド内容だけでアクションをかけることが可能です。よろしくお願いいたします。
※こちらのシリーズでは「扉絵にキャラを登場させよう企画」をしています。詳しくは寺岡のマスターページをご覧ください。


【今回の目的】
1.審判と対決する。
2.ブリアナを救出する。


【舞台について】
 ダーリシア共和国の首都オーリグです。
 審判のコンサートは国会議事堂の前庭で大々的に行われます。全ネットワークによる一斉生配信です。その映像は、国中のあらゆる施設、街頭等に前もって設置された巨大モニターや立体映像投射機などで映されます。たとえモニターの前にいなくても、審判の姿と声が入るようにして、全国民に自分の『愛の魔法(ラブマジック)』を届かせて崇拝者に変える、というのが狙いです。


【作戦について】
 DNLAは襲撃を考えていましたが、もともとテロリスト認定されていて国民の印象が悪い上、先日の爆発騒ぎは要人暗殺を企てたDNLAによる仕業と政府が発表、広がっているため、DNLAに対する国民の評価は最悪状態です。
 そのため、ハジメは別のイベントをぶつけることを提案しました。
 ゲリラライブイベントを開催し、人々の関心をそちらに引っ張り、その映像を全国ネットで流すことで企みを無効化しよう、というものです。
 具体的なイベント内容は、実行する皆さんにお任せします。DNLAの人たちやハジメが裏方として協力します。ただ、今回の敵は国です。大きければ大きいほど、目立てば目立つほど、警官や審判信奉者が妨害してくるので、そちらへの対策も必要です。
 なお、コンサート会場の審判とマシューの周囲には、吸血鬼、半吸血鬼たちがいます。


【救出作戦について】
 城の形をした官邸で、ブリアナのいる部屋は前回判明しています。彼女を速やかに救出してください。
 吸血鬼、半吸血鬼たちが居残りをさせられていますが、数は多くありません。
 襲撃を見越して蔡霞がいます。


【NPCについて】
松原ハジメ(19歳)
 特異者。黒髪・黒眼の日本人。長男気質。聡明で、面倒見のいい性格です。冷静沈着。落ち着いているので歳より上に見えます。
 オーダリーアルカナ世界であるため定期的にアルカナを訪れています。
 今回、ゲリラライブイベントのスタッフとして動きます。何かしてほしいことがあればアクションに書いておいてください。

ユン(17歳)
 アーキタイプのとある部族の少女で、協会に登録しているトレジャーハンターです。右腕に「ドリュー」という名前の火蜥蜴のパラサイトが癒着しています。異母兄で行方不明の青年・ツィルを捜してアルカナへ通う日々。
 今回はブリアナ救出で動きます。何かしてほしいことがあればアクションに書いておいてください。

蔡霞(年齢不詳)
 吸血鬼の少年。外見は十代の少年です。審判の弟で僵尸使い。
 DNLAの襲撃を予想して大統領官邸にいます。

審判(年齢不詳)
 吸血鬼の首魁であり、ケアティックアルカナです。色香濃い絶世の美女で、大統領や周囲の男たちを言いなりにさせています。
 普段の言動は軽く、浮わついた印象を与えますが、全ての吸血鬼を従える、賢く強い女性です。
 彼女の用いる全力のラブマジックは大変強力で、男性はその魅了の力に逆らえず、瞬時に崇拝者となります。女性でも、気を抜くと魅了されます。
 国会議事堂前でコンサートをします。

マシュー・ヒベニア(40)
 2年前ダーリシアの大統領になりました。妻子がいますが審判に夢中の彼に愛想を尽かして別居して、ほぼ音信不通状態です。
 普段はいたって普通の男性ですが、審判のことになると理性が飛びます。

僵尸(チアンシー)
 動く死体です。吸血鬼には使える者と使えない者がいて、使える者でも能力の強弱によって出来が変わります。
 例えば蔡霞の僵尸は子供ほどの知能を持ち、言葉を発することもできますが、大半の吸血鬼が操る僵尸は主人の指示がないと動けません。

DNLA(DARISHIA National Liberation Army)
 ダーリシア解放軍を称する民兵の一団で、9割が女性で構成されています。審判たちが吸血鬼であることは知らず、その色香で大統領以下男たちを懐柔して好き勝手にしている国賊と思っています。
 今回はブリアナ救出パートとゲリラライブイベントパート、両方にいます。何かしてほしいことがあればアクションに書いておいてください。

愚者
 ケアティックアルカナです。審判を訪問中。
 和装をしていますが神無木人ではありません。前愚者から奪った神刀天之尾羽張を帯刀しています。大小3つのギアがついた機巧細工の鞘には、何か仕掛けがありそう。
 今回、官邸にいます。

イーファ、シネイド姉妹
 故レオン・バラッカムの長女と次女。どちらも州長に嫁いでいます。イーファは寡婦としてシアナド・エランの地位も継承しています。

ブリアナ・バラッカム
 故レオン・バラッカムの三女。14歳。両親にねだって一緒につれて行ってもらった光国で襲撃に巻き込まれ、両親を失いました。
 彼女をかばって亡くなった両親の死を自分のせいと思っています。


●注意
1.アルカナではホムンクルスやブーステッド、セラエノ、アウトロー、汽人のような、体に一部でも機械部位のあるアバターは機巧人間と認識されます。耳や尾、角など体の一部に人間にはない生体部位のあるアバター、妖、鬼、パラサイトなどは獣人と認識されます。
2.現在アルカナの世界はケアティックという闇属性に傾いています。祓魔師・錬金術師・民兵・聖騎士はオーダリー属性で、スキルの効力は落ちます。逆に、魔人・半吸血鬼・合成人間はケアティック属性なのでスキルは通常通りかそれ以上の効力を持ちます。他世界のスキルは半減します。
 基本的に光属性の攻撃は弱体化し、闇属性は威力強化、それ以外の風や物理等はそのまま使えます。(ただし、ある条件下において光・闇属性の威力が反転する場合があります)
3.オーダリーの守護騎士・オーダーの称号を付けたPCは額に白い盾の紋様が浮かび、行動に幸運値がプラスされたり、能力が少し強化されたりと、若干オーダリーの加護を得られます。ただし、オーダーであることを知られるとマイナスの反応を受ける場合もあります。一長一短です。
4.ソラスとリュクス兄弟は今、オーリグからかなり離れたマルラニーという町にいて、外洋船を探して乗ろうとしています。【その他】パートで彼らにアクションをかけることもできますが(あるいは、ゲリラライブの開催地として指定することはできます)、オーリグでの行動パートとは完全に別パートとなり、関与することはできません。ご了承ください。



それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。

ゲリラライブを開催する 【現在のMC参加人数:2】

5

ブリアナを救出する 【現在のMC参加人数:3】

5

審判に対処する 【現在のMC参加人数:3】

10

その他 【現在のMC参加人数:3】

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