本シナリオは、予約参加20名のシリーズものです。小世界ではありません。
予約参加者が定員に達しなかった場合、抽選参加が行なわれます。
次回以降は参加者全員招待参加となります。
プリシラ公国西部、交易都市セプテット。
買い物客で賑わう通りを抜けた先で、
狼耳の少年ダイアが両手に買った物を抱えながら歩いていました。
時折、転びそうになりながら足を進めていると、後ろから
変態魔族の姉、フィリアが荷物を支えます。
「今日も荷物が多いね~」
「なんだ、フィリアかよ。仕事終わったのか?」
「今日も幸せでした……♪」
変態姉弟は冒険者たちとの邂逅がきっかけで、教会監視のもと、孤児院で働いています。
ダイアは病に伏せていた母親が元気になり、久しぶりの手料理を楽しみにしていました。
「よかったな。フィルは今日休みか?」
「休み! 洞窟でだらだらしてるんじゃないかな」
「ふ~ん」
「ところでダイアくん……今日のパンツは何色かなっ?」
「くろっじゃないからなっ!」
「そっか~。黒か~」
「違うって言ってんだろ!」
反射的に答えてしまい、語気強めに訂正するダイアに対して、フィリアの表情は緩みっぱなしです。
「素直に答えてくれたきみのために、その荷物を持ってしんぜよう」
フィリアはちょっと変わった言い回しをして、ダイアの荷物を半分持ちます。
「家まで持って行けよな」
「もちろん!」
◆ ◆ ◆
ダイア自宅――
「ただいまー」
ドアを開けると、貴族風の魔族が剣を斜めに掲げていました。
その先には胸を貫かれたダイアの母が力なくぶら下がっています。
「母ちゃん……?」
「もう帰ってきたのか」
男魔族の視線がダイアたちを捕らえます。
フィリアはさっとダイアの前に立ちますが、男魔族はダイアの母親を降ろし、剣を引き抜きます。
そして次の瞬間、彼女の心臓を何度も突き刺し始めたのです。
唐突に始まった猟奇的な行動に、二人はただ黙って見ることしかできません。
――やがて、男魔族は満足したのか剣を捨て、ダイアの母親が身につけていたネックレスを奪います。
そのネックレスは黒い石がついた金の指輪に変わり、右薬指に収まりました。
「まずは一つ。……次はお前たちだ」
新たな剣を引き抜き、迫る魔族にフィリアは我に返ります。
「ダイアくん、逃げて!」
そう促すもダイアは動けないでいました。
フィリアは水魔法を放とうと、右腕を伸ばしますが、その腕は瞬時に切り落とされます。
「っあぁぁぁぁ!」
「フィリアッ!」
「次は心臓だな」
ゆっくりと距離を縮める男魔族に、フィリアは腕を押さえながらダイアの耳元で話しかけます。
「ダイアくん、ここは私が時間を稼ぐからフィルを呼んできてほしいの」
「でもっ」
「フィルじゃないと、私の腕治らないの。ねっ、ダイアくんお願い」
「……わかった」
背を向けるダイアに、男魔族は剣を振ろうとしますが、水壁が行く手を阻みます。
「行かせないよ」
「……リイン」
男魔族がそう呼びかけると、隣に白いフードを深く被った人物が現れます。
「子供を殺せ」
「もう魔物で追ってる。それより、ぼくはこっちを二人がかりで倒した方がいいと思うけど」
「……そうだな。さっさとすませよう」
フィリアは拳を握り、二人を見据えました。
一方、ダイアはもつれそうになりながら雑草生い茂る道を走ります。
しかし、その後ろでリインが放った白い蛇の魔物が音もなく迫っていました。