※※本シナリオはMC参加ポイント「200ポイント」のプライベートスペシャルシナリオです。※※
人を怒りの火で焼いてはいけない。
世の果てに連れていかれて世界に還れなくなる。
抜け殻となった灰の者は、還る場所を失い、恨むのだ。
恨みは災いを呼び込み、世界は滅びるだろう。
…※…※…※…
明くる日、家のドアを開けた
ドネの目に飛び込んできたのは灰化した街の人々でした。
塵として風に崩され消されることなく街中を目的も無く彷徨っていたのです。
その人の形をした灰は、文字通りの炎に巻かれた灰者達でした。
それは
光明でも特に恐ろしい災いと呼ばれる存在でした。
なので、当然ですが街中大騒ぎです。
ただ火の手はひとつも上がっていません。
ここに無い炎に彼らは焼かれたのでしょう。
そして、今まさに逃げ惑う人がひとりドネの目の前で一瞬にして灰化してしまいました。
その光景にドネ――世界の崩壊を認めた彼女は憂いに瞼を伏せると、決意に目を開きます。
「ドネ!」
「ドネちゃん!」
一度家の中に引き返し、玄関を飛び出したドネに
スキアーと
ディッルが走ってきました。先日から日常にはない経験して恐怖感が薄まっているのか他の人ほど怯えている様子はありません。
「お茶の道具?」
「お菓子もいっぱい?」
ふたりは至極冷静にドネにそんな指摘をします。
両手いっぱいに荷物を抱える自分を見て目を丸くする少女達にドネは気まずく笑います。
「あの、ね。これからお茶会をしようかと思ってるの」
「お茶会ー?」と、見事にハモッた声にドネはますますと困り顔で笑ったのでした。
「そうよ。喧嘩はできないからお茶に誘うのよ」
この混乱に終止符を打つ為にも、彼女はどうしてもあの小人の老人から奪われた精霊の剣を取り返さねばならなかったのです。
隔絶の塔にて保管されていた剣を元の持ち主に返すべく、目指すのは花咲くあの丘、そこで自分の前に再び姿を現すだろう小人の老人をお茶に誘うのです。
…※…
それは
ダーレ達が帰宅して数時間後の襲来でした。
熱する白煙を引きながら根絶やしの竜と呼ばれたソレは無差別に逃げ惑う人達に向かって炎を吐き散らしていきます。
暗影の空は、いまや火の海で赤く燃えているのでした。
「ダーレ!」
「ダーレ君!」
自分の名前を呼ぶ
ゲレルと
オールに、彼は顔をそちらに向けます。
夜色の空が赤く熱する中、襲い掛かってくる炎をやり過ごし駆け寄ってくる友人達にダーレは避難するように呼びかけますが、どこに隠れればいいのかと問われて、答えに窮します。
「誘導しよう」
自ら″根絶やしの竜″と呼ぶソレの鉤爪にまだ眠れる乙女が握られているのは遠目でも確認できました。
それを見て、ダーレは決意します。
「誘導!」
手伝って欲しいと頼まれてふたりは驚きました。
「できると思う。あれは″俺″を追いかけてくるはずだ」
容赦なく街ひとつを火の海にした気性の荒さです。さぞ恨みは深いだろうとダーレは自分が囮になると名乗り上げました。
なので、生きて丘に辿り着くまで全力でサポートをしてほしいと懇願し、先日からの日常にはない経験により恐怖感がだいぶ薄まっている両者に怪訝な顔をされながらも承諾され、ダーレは安堵しました。
普通ではないあの炎をどう防げばいいか頭を捻るふたりに、無茶をお願いしたとダーレは唇を引き結びます。